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思い込みが強すぎると・・・
日が暮れるのが早くなり、すっかり暗くなった夕方5時半ごろ、インターホンのチャイムが鳴る。
夫が応対していたが、だんだんと語気が荒くなる。
のぞき込むと知らない年配の女性が、ご自分の猫が我が家にいるはずだ、というようなことをおっしゃっている。
「とにかく出てきて猫の写真を見てください」と言う。
夫が切れ気味に出て行こうとするのをなだめ、私が対応することにした。
そう、夫は気が短いのだ。
きっと怒鳴りつけちゃうに違いない。
家の前にいたのは、杖をついた年配の女性。
「どうなさいました?」
と聞くと、彼女が話し出したのはこんな内容。
1週間前に飼っていた猫がいなくなった。
あちこち探しているが見つからない。
エサをちゃんと食べているか心配でならない。
友人がお宅に(我が家のこと)自分の猫がいるのを見たと言って知らせてくれた。
私の猫かどうか確かめたい。
大切に飼ってくれるならそれでもかまわない。
と矢継ぎ早に話した後、おもむろにスマホの写真を見せて、
「この猫です」
最初はただ猫がいなくなって探している人だと思ったが、どうやら完全にその猫をうちで飼っていると思い込んでいる。
いやいや、ちょっと待ってください。
そもそもうちでは猫は飼っていません。
確かに野良猫たちは庭に来て粗相をして帰っていくけど、この上なく迷惑に思っているし、エサもあげることはない。
猫たちは勝手に入ってきては、適当にうろうろしてまたどこかに行ってしまう。
夫などは見かけると威嚇して追い払っている。
私も犬や猫が苦手。
見る分にはかわいいと思うので写真を撮ったりはするが、近づけないし触れない。
その写真を見ても、うちに来ている猫なのかどうか、区別がつかない。
と、いうようなことを、できるだけゆっくり話したのだけれども、
「グレーの猫なんです!」と写真をさらに拡大して目の前に突きつける。
「ちゃんとエサをあげていてくれれば安心なんです。そのまま飼ってくださってもかまわないんです。」
だから、うちにはいません、と何度言ってもらちが明かない。
本当に困った!
そういえば、うちの裏手のアパートの駐車場で、猫にエサをあげている人がいて、ときどき猫がうちのフェンスの上を通って裏に行ってるのを思い出した。
仕方がないので、女性を門から中に入れて、フェンスとアパートを指さして
「あの後ろに見えるアパートで、猫にエサをあげている人がいて、このフェンスの上を猫が通っていくことがよくあります。
お友達はそれを見たのかもしれません。
アパートの前の駐車場には何匹も猫がいて、夜中も騒いでますから、その中にいるかもしれませんが、私にはどれがどれだかわかりません。
一度そのエサをあげてる方に聞いてみたらいかがですか?
何度も言いますが、私は猫に触れないし、息子が喘息なので動物を飼うことはありません。」
と言ったら、やっと落ち着いた。
では、あちらで聞いてみます。
お忙しい時間にすみませんでした。
と女性は杖をつきながら、歩いて行った。
すっかり体が冷え切った、と思ったら30分もたっている。
また来ちゃったらどうしよう、と思っていたけど、その後はもう来なかったので一安心。
思い込みが強すぎると、話が全くかみ合わない。
かみ合わなさ過ぎて、だんだん怖くなってきたほどだ。
寒空の中毎日探しているのはお気の毒だけど、知らないものは知らないのだ。
以前に猫ボランティアの人が突然やって来て、子猫がいるはずだから中に入れてくれ、と言われた時もホントに困った。
両目の幅まっすぐしか見えてないって恐ろしい。
自分もそうならないように気を付けなきゃ、と改めて強く思ったできごとだった。