動物病院
うちの犬と猫
動物病院は 苦手で苦手で
「病院には喜んで行くんですよ」
「先生や看護師さんが大好きで」
そんな子達が羨ましくて仕方ない
だけどね
私も病院は苦手
特に犬や猫たちの病院は苦手
話せないこの子たちの
代弁をしないとならないから
この子達に起きてる何かを
症状や状態や痛みや痒みや
いや まずそんな事より
どこがいつもと違うのか
それを頭の中で入念に整理する
動物病院は総合病院
先生はひとり
病状が内科でも外科でも
耳鼻科でも眼科でも
どんな病気かの診断がくだる
慌てないで 焦らないで
自分に言い聞かせる
不安と心配がどんどん加速する
猫はニャーニャー鳴き続けるし
犬はハアハアと荒い息が止まらない
私の説明で上手く伝えられるだろうか
病院に着くまでに何回も何回も
繰り返し練習する
的確に 正直に
肝心な事をしっかり
余計な話をなるべく省いて
緊張を抑えて
何でもない顔して待合室に座る
名前を呼ばれたら
深呼吸、深呼吸
爪をたてキャリーバックにしがみつく猫
診察台から落ちそうになる犬
足の裏の肉球が濡れて
緊張の汗が止まらない
「もう大丈夫、大丈夫だからね」
私の説明に先生は首を捻りながら
顔と体を診てはあちこちに触れる
検査はどう？注射はする？
「これはね…」先生が説明してくれる
あゝ問題はないようだ
思ったより軽症
先生と看護師さんにお礼を言って
そそくさと診察室を出る
薬を貰ってもうひと安心
「すぐによくなるからね」
不安も緊張も吹っ飛んで
帰り道には鼻歌になる
猫の鳴き声は合いの手に
犬は嬉しそうな息遣いで笑う
ほらね やっぱり病院は苦手だ
だって帰り道の心がこんなに軽い
「さぁうちに帰ろう
みんなが待ってるよ」
やすきち