ここでうまれた花
「なにもこんな所に咲かなくても」
ついそう思いたくなる花がある
ここじゃなくもう少しずれていたら
向こうの花は見るからに栄養も豊富で
ここと違って草も生い茂ってる
こんな片隅にぽつんと
大雨が降ったらどうするの
傷ついたらどうするの
ひ弱な体をくねらせて
精一杯の力で顔を出したら
たまたまここから明るい光が見えたから
太陽に向けてゆっくり葉を広げたの
ただそうしただけ
ただそうしたいだけ
この花はこの場所で生きる
そしてここで生涯を過ごす
そっと袋にシャベルを仕舞い込み
すくと立ち上がって草原を戻り歩いた
花も草も倒れてはまた立ち上がる
後ろを振り返り先程の花を見た
倒れてもきっと立ち上がれる
どんな場所に生まれても
やすきち