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秋の由無し事

これを読んでいるあなたは

いま季節のどの辺りに居ますか

現在わたしは秋の只中に居て

律儀にそれを書こうとしているところです

木々の葉はすっかり色づいて

カサ、カサ、サー、サー、

風に擦れて音をたてています


じりじりと暑かった夏が

つい先程終わりを告げたせいで

なまあたたかい風が吹きつけて来ても

もう誰も張り合いもなくなって

すっかり気の抜けた顔で

こないだ見た空いっぱいの花火の事なんか

思い出したりしています


あなたはいまどの辺りを歩いていますか

せっかくなのでこれから

人混みの中を探してみようと思います


目の前を大勢の背中が流れていく

その中のひとつを選んで

すーっと近寄って肩をトントン

こっそり覗き込んでみました


手に持った画面に映るのは

勿論、私の頁

ではありませんでした

慌てて

「あ、すみません

人違いでした」


なんてね

やっぱりこんな無謀な事はやめておきます


だってこれを読んでいるあなたは

もう少し先を歩いているのでしょう

親指でサクサクとスクロールしながら

たまたまわたしのタイトルに指が止まり

ふと目を落として読んでくれたんですよね

そうしてここまで読んで来て

いま、季節のどの辺りかを

考えたりしてくれてるんですよね


ここは今は秋が始まったばかりですが

きっと冬を超えて 春も過ぎて

それからまた蒸し暑い夏がやって来て

ドーン、ドーン、と空に

あの花火の音が響いていたりするんですよね

そんなぐるぐる回る季節の中の

どこでこれを読んでくれるのかって

ただその事だけを想いながら

これを書いてみただけなんです

秋ってついこんな事を

考えてみたくなる季節なんです

「カール」2021.10

やすきち

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