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時を止める秋の風
だれかが時間をくれた
こんなに愛しい時間をくれた
愛しくて愛しくて
手離したくなくて
もっと時間をくれませんか
どうかこのまま
時を止めてくれませんか
天に向かって願った
太陽は言った
朝が来なくともいいですか
少し考えて
それは困りますと答えた
月は言った
夜が来なくともいいですか
また少し考えて
それは困りますと答えた
やや俯いて やや憂いて
足元の落ち葉を踏んだ
その時だれかの声がした
私でよければ止めましょうか
それは秋に吹く風の声
枯葉が枝からくるくると
地面に落ちる事なく舞い上がり
時に逆らうかのように
宙に浮かんで回り続けた
私たちはしばし
風の止めた時の中にいた
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やすきち