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今までの秋を一度にとらえられそうな

「ことしはじめて、金木犀の香りがした」
これをもっと間接的にすてきに表現したいのに、ぴたりと合う言葉がずっと見つけられないでいる。通り過ぎたあとに、はっと足を止めて振り返るあのかんじ。今までのその瞬間が幾層にも重なって、いっぺんに捉えられそうになるような。

結局いいかんじの言葉は見つからず適当なタイトルに。とにかく、今日は私にとっての「きんもくせいの日」だった。

さいきん中古物件ばかり探していて、なんだかあっという間の木曜日だ。Youtube見るか、物件を探すかの日々。秋は現実逃避ぎみになる気がする。あーひたすら誰とも会わずにオンラインで仕事が舞い込んでくればな、なんて塞ぎ込んだモードになっていた。

今日は、頼まれていたものを納品するため、大倉山で友人と待ち合わせていた。ブックカフェeleverでちょうど行きたかった写真展がやっていたので、そこへ。新しく入ったスタッフの方と会えた。私のつくったキャラクターをアイコンにしてくれてる人。

たまに行くそのカフェは、いつもと雰囲気がガラリと変わっていた。空間めいっぱい、写真家の飯田利教さんが見てきた世界になってた。風景の切り取り方やレイアウトがとても好きだった。

配色が好きだな、と思ったら愛用マグカップにそっくりだった。

個展のことでつまづいているこの頃だったので、自由に空間を使った展示にいい刺激を受けたな。ありがたいことにブックカフェのオーナーが繋いでくれ、主催者の方から依頼をいただいているので(それもありこの展示が見たかった)、より身が入る思い。

待ち合わせしてた友人に頼まれていたものを渡し、よろこんでくれてほっとした。一緒に写真を見たり、お茶を飲みながらおうち探しのアドバイスをもらったりして、あっという間の一時間半。暮らしについての話ってたのしい。

知り合いにはなるだけ会って納品するようにしてる。交通費とか、カフェ代とか考えたら送っちゃったほうが楽なのかもしれない。でもそうじゃない。このほうがずっと奥行きがあって、まわりまわって自分のためになるんだ。人と人が会う以上のことなんて、この世にない。それを億劫がっていた時期だったけど、スイッチが切り替わったかんじがする。

オンラインでお仕事させてもらった人も、いつか近くを訪れたら会いたいし、そのサービスを利用したいなって頭の中でメモしてる。まわりのこと、ぜんぶ信頼している人に頼めるようになったらいい。家探しをしていても、知り合いの内装業者さんに内覧を一緒に行ってもらったり、庭の植栽はこの人、と決めている人がいたり。だんだんとそこへ近づいているのを感じていて、それだけでこの仕事をはじめてよかった、と思う。


友人と別れ、今週末に終わってしまう展示を見に行く。「白、黒、モノクローム展」。駅名と地図は事前に調べておいた。上野毛、というくらいだから桜木町のほうかと思ったらどうも違って東京にあるらしい。

チャージ機の上にある路線図をぼーっと眺めて、「上野毛」を探す。あったあった、自由が丘で大井町線のりかえ。パスモにギリギリ足りるくらいの運賃をチャージして電車にのる。駅の路線図を見て行き方を調べる人って、はたしてどれくらいいるのだろうか。

五島さん(えらい人みたい)のコレクションから「白、黒、モノクローム」をキーワードに水墨画や陶器がセレクトされていた。写真NGなのがよかった。最近の展示はOKなのも多いけど、他の人のシャッター音が気になってしまうし、片っ端からバシャバシャ撮っている人を見ると勝手にものがなしい気持ちになってしまうから。

いろんな展示に行って毎回思っている気がするけど、私は余白があってシンプルなデザインを好もしく思う。シンプルにつくる、ってほんとうに難しい。潔さ、客観的にうつくしさをはかる目線がないとつくれない。何に置いてもそうだけど、基本的に人間は手を加えたがるのだから。

カシワの木の幹

五島美術館。はじめて行ったけれど、庭園がよかった。じっくり歩いたら30分は季節の木々や池なんかを楽しめそう(古墳もあった!)。大きな金木犀があって、またなつかしい匂いの風にふんわり包まれる。ととのえられた庭って、すごく気持ちがいいな。やっぱり新居には絶対に庭がほしい。


おまけ。ブックカフェに集まってきた、私作のステッカー達。こんなに増えると思ってなくて可笑しい。そしてひとところに置かれるなんて想定してないので、とてもカラフル。それはそれでいいのかな。そのときどきでつくっているのに、みんなから見たら「かりそめさんの絵」って分かるようなのが不思議で、うれしくもある。

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