臆病なので
自分と他人の境界線はあやふやだ。水性ペンで書いた線に、多めに水を垂らした様な。
目を凝らさないと見えにくいし、見えたところで線と言えるほどクッキリはしていない。
そんな滲んだ黒を絶対に踏まないようにと、黒から余分に間をあけた真っ白な安全地帯を見つけて、そこから動かまいとしている。
それでもいつの間にか、気づかないうちにその黒を踏んでしまう。そうすると相手がすぐそこに居る。黒の上で動いていると、身体が相手に当たりそうになる。直前に引っ込めないといけなくて、それが疲れる。
ずっと真っ白の上で、踊っていたい。その方が楽だ。いつか疲れて体育座りするけど。座っていると寂しくなる。けどいつか慣れてしまう。本当は黒の上で、少しだけ触れ合いたいのに。けど触れるとたまに静電気が起こる。感電なんかして、これ以上痛いのは嫌だから離れる。
滲んだ黒の上で癒されながら傷つくのは怖くて、真っ白の上は独りが辛くて。
俺は臆病なので、真っ白の上で孤独を嘆く。