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音で表せない感情たち

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難聴を患う少女、立華菫。大人に対し恐怖に近い感情を持ち、閉鎖的になってしまった彼女。そんな彼女の前に現れたのは、柔和で今まで出会ってきたことのないような大人――能見広子であった。…
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#小説

春の芽吹きの名を持つ少女

春の芽吹きの名を持つ少女

「……えっ、と」

 困惑の色が声に載る。正直に話せば、私は今スグここから離れたいけど、目の前にいる子がそれを叶えられそうにはなかった。

「……」

 暗く落とされた瞳には、感情が宿らない。人形かと見間違うくらい整った顔立ちも相まって、言葉では表現できない悪寒のようなものが背筋を這う。
 私――能見広子がここに来たのはつい先ほど。よくわからない手紙のままにやってきたら、ほどなくしてこの子も同じ部

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