播磨陰陽師の独り言・第三百六十六話「夜店と大道芸・前編」
祭りなどで夜店めぐりをするのが好きです。最近は少なくなりましたが、大道芸とかもあって楽しかった思い出もあります。コロナでなかなか夜店に行くことも出来なくなって残念な感じがします。
子供の頃は、お盆の平原祭りだけが夜店のすべてでした。これは帯広の祭りです。あの頃、他の地域の祭りは知りませんでした。旅行しても祭りの時期に行くとは限りません。平原祭りにはたくさんの夜店が出て、それはそれは華やかだと思っていました。これは、大人になって他の地域の祭りを見るまでのことですが……。
平原祭りは十勝平野の祭りです。そこにもバナナの叩き売りはありました。大人になってバナナの叩き売りは門司港発祥と知って、何だか懐かしかったです。でも、本家の歌声は、田舎で聞いたバナナの叩き売りの歌声とは違っていたのが残念でした。田舎のは、もう少し平坦な節で、しかも歌詞が省略されていたような感じがします。
子供の頃に行った夜店で印象的だったのは〈糸通し〉です。糸通しと言うのは、縫い針に糸を通すためのグッズです。この小さなグッズを売る夜店は、横長の机にただ白い布を被せただけで、商品は置いていません。机の下に商品を隠しているようでした。売り手は商品説明のデモをしているだけで、手八丁口八丁で言葉巧みに糸通しを使った芸を見せてくれます。手元の小さな糸通しを、大袈裟なアクションで、見応えのある大道芸にして見せてくれるのです。昔はただの夜店ですら、素晴らしい大道芸を見せてくれました。
地球ゴマ売りも面白い夜店のひとつです。地球ゴマとは、金属で、ジャイロの原理を使ったコマです。最近、見なくなりました。製造元は2015年に廃業したそうです。一時期、ブームになっていました。これも机に白い布をかけただけの場所で、やはり商品は机の下に置いていて、コマのデモを見せていました。見ていて面白かったことだけ覚えています。
芸を披露すると言えば、飴細工もそのひとつです。飴を炎で炙りながら、様々な形を作る芸は、見ていてワクワクしました。飴細工は北海道では見たことがありません。大人になってから、大阪の十日恵比寿ではじめて見ました。テレビでは見たことがあったので、
——これが本物の飴細工か……。
と感心したものです。後半へ続く。
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