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播磨陰陽師の独り言・第三百七十二話「乱入システム〈前編〉」

 昭和の終わり頃だったかな? ゲームセンターに風営法が適応されました。それまで思ってもみなかった、
——ゲームセンターが風俗になった日。
 が、やって来たのです。
 それまでは二十四時間営業だったゲームセンターも、半分くらいしか営業出来なくなりました。それに伴いゲーム機一台あたりの売上げも半減します。
 当時、開発していたのは業務用ゲーム機です。業務用と言うのは、ゲームセンターに売って日銭ひぜにを稼ぐゲームのことです。あくまでも業務用ですので個人には売りません。ゲームセンターの業務に使われるゲームの販売価格は一ト月分の売り上げで減価償却可能な設定にしなければなりません。つまり、一ヶ月のゲーム機の売り上げで元が取れる必要があるのです。
 一日平均100プレイ。これ以下のゲームだと、そもそも買われることはありません。百円玉で100プレイ。一日一万円以上の稼ぎがなければ、ゲームセンターには入らないのです。
 ゲームは所有面積あたりの稼ぎが一番多い商売です。わずかテーブル一台分のスペースで、月に30万円前後の稼ぎをもたらします。それには一日100プレイの目標をクリアしなければなりません。その筈が、国の方針のおかげで、突然、半減しました。今までの基準は二十四時間で100プレイでした。それが十二時間で100プレイにしなければならなくなったのです。
 さぁ、たいへん。
 これまでの倍の効率でお金を稼ぐ必要が生じました。
 そこで私は思いました。
——ふたり同時プレイにして、途中参加も可能で、しかもプレイヤー同士が殺し合うことが出来るようにしたら、巻き込まれてクラッシュする人が出て、倍の売り上げになるのでは?
 かなり短絡的な考え方でしたが、
——次に開発するゲームはこの仕様で行こう。
 と思ったのです。
 まず、ふたり同時プレイは難しくありませんでした。単にふたつのプレイヤーを表示して処理するだけです。
 次の乱入ですが、こちらは少し厄介でした。
 基本的に業務用ゲーム機には〈割り込み信号処理〉と呼ばれるプログラムが入っています。後編に続く。

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