怪しい世界の住人〈天狗〉第十話「神仙のこと」〈最終回〉
神仙には五種類あります。一番下の階級が〈仙獣〉と呼ばれる獣の階級です。そのすぐ上の階級が〈仙人〉で、さらにその上が〈神獣〉、その上は〈神人〉と呼ばれ、さらにその上の階級がいわゆる〈神〉と呼ばれる階級です。
神仙を上から順にまとめると、
❶ 神
❷ 神人
❸ 神獣
❹ 仙人
❺ 仙獣
となります。
❶ 神
神には、最初から〈神〉であったものと、人やその他の存在が修行して神になる場合と、そして、祀りあげられたため〈神〉となってしまう霊とがあります。本来の〈神道〉とは、人が神になるための道のことです。宗教ではありません。神道や陰陽道の技法の中には、霊を祀りあげて〈神〉にする技法があります。
この時、霊と取り引きします。それは、
——神として祀りあげるから、人の世界を守ってください。
と言う取り引きです。世界と言っても、祀りあげた地域の狭い範囲のみを〈世界〉と定義しています。人の側から取り引きを破ると、祟り神に変異します。
人が修行して〈神〉になる場合は、神の世界の仕事をします。人を守るとか、救うと言ったことはしません。また、最初からの〈神〉も、人を守ったり救ったりはしません。ただ、神が他の〈神〉を造る時、人を守る役割を与えることはあります。しかし、救いの神が生まれたり、造られたりすることは、滅多にありません。元々、わが国の民は幸福な民なのです。どこかで苦しんで、神に救いを求めることなどなかったのです。
キリスト教の〈救済神〉と言うのは、人が罰として働かされている苦しみから、救うための存在です。最初から苦しみのない世界では、救うとか救わないとかはありません。
❷ 神人
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