怪しい世界の住人〈天狗〉第五話「様々な天狗」
【天狗の種類について】
天狗には、色々な種類があります。多くの場合、それらは混乱して、すべて同じ〈天狗〉と言う言葉で呼ばれるため、見分けることが難しくなります。
主な天狗は以下のものです。
① 僧正天狗
② 大天狗
③ 小天狗
④ カラス天狗
⑤ 木の葉天狗
⑥ その他の天狗
それでは、これらの天狗について、ひとつひとつ解説することとします。
① 僧正天狗
これは、仏法の天狗のことです。仏法を修行する者が落ちる天狗の世界だそうです。主に天台宗が宣伝用に作り上げた天狗のようです。
昔の絵には興福寺や東大寺など、有名な七大寺院の僧侶が堕落した姿が〈僧正天狗〉の風刺画として描かれていたようです。
『平家物語』には、
――人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、犬にて犬ならず、足手は人、頭は犬、左右に羽根が生え飛び歩くもの。
と書いてあります。つまり、人のようで、人ではなく、また、鳥のようにも見えるが鳥でもない。犬かと思うが犬とも違い、手足は人のようで、頭はまるで犬のような姿であり、体の左右に羽根のような物が生えていて、飛ぶように歩いていると言う意味です。
鎌倉時代の書物には、天台の僧に戦いを挑んでは無残に敗退する天狗の物語が伝えられるようになりました。
僧正天狗の種類として、天狗として世にあだをなし、業尽きて後、再び人身を得ようとする〈波旬〉と呼ばれる天狗と、自尊心と驕慢を縁として集う〈魔縁〉と呼ばれる天狗が知られるようになりした。
また、有名なところでは愛宕山の〈太郎坊天狗〉とか、日光山の〈東光坊天狗〉も僧正天狗のひとつです。日本全国四十八霊山に棲むと言われる僧正天狗は、すべて天台宗の宣伝用に作り上げられたものだそうです。
② 大天狗
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