怖い話のウラ話・第5話「心霊と言う言葉」
四谷怪談現象、怖いお話しですねぇ。この現象について語る前に、大きな疑問について考えておきたいと思います。
それは、
「よく聞く心霊現象って、そもそも、なんやねン?」
と言う事柄についてです。
そして、
「なんで、心霊って言うンや?」
と言う疑問についても考えておこうと思います。
少し昔、と言っても明治の頃のお話しです。その頃、心霊科学と呼ばれる研究がありました。何でも世界の文明国はこぞって研究を行っていたようです。わが国も西欧諸国に追いつけ追い越せと盛んに心霊科学を研究していました。
心霊科学は、オカルト的な物事について当時の最先端の科学で研究していたそうです。しかし、何分、明治から昭和初期の時代のことであります。今と比べると、ずいぶんと非科学的な研究が行われていました。
中には詐欺師まがいの自称霊媒師に騙されて、死後の世界の真実と称するヨタ話を大真面目に研究する学者さんまでもいたそうです。もちろん、すべてが詐欺まがいだとは申しませんが、研究費目当てのひどい山師もいたものです。
詐欺師が見栄えばかりを良く見せることを、〈山師の玄関〉と申します。純粋な動機で心霊研究を行う学者さんたちには、本物と偽物の見分けがつかないのです。彼らは海千山千の狡猾な山師の雰囲気と見栄えに、簡単に騙されてしまったのでした。
さて、心霊、心霊と申しましても、化物やら幽霊のお話しについては、当時、民俗学者さんたちの担当でした。民俗学は、伝説や地方の古い風習を研究しています。
一方、心霊科学は、心霊写真と念写や、降霊術、超能力や催眠術と言った分野を研究していました。昔は何と催眠術も心霊現象と考えられていたそうです。その頃の催眠術は、五円玉に糸を通してブラブラさせ、
「あなたは眠くなーる。あなたは眠くなーる」
とか、やっていました。
催眠術は、今では立派な精神医学の手法のひとつと考えられていて、けしてオカルト的なマヤカシの類ではありません。ここで使われる心霊と言う言葉は、明治くらいから使われはじめた言葉のようです。
小説家の国木田独歩の『牛肉と馬鈴薯』と言う作品の中で、
「如何にも不思議なることを痛感して自然に発したる心霊の叫びである」
と言う一説を見つけました。
この時は、精神のことを〈心霊〉と表現していたようです。
しかし、
「これなんかが、一番古い方の資料やないのかなァ?」
と思います。
江戸時代の文章の中で、心霊と言う言葉に出会ったことはありませんが、この続きはまた次回。お楽しみに。
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