播磨陰陽師の独り言・第455話「桃の節句のこと」
三月三日、桃の節句。
古くは三月三日ではなく、三月の巳の日が節句でした。しかし、江戸時代に三日に固定されました。この日を上巳の節句と呼びます。
上巳について広辞苑で引くと、
——五節句のひとつ。陰暦三月初めの巳の日、後に三月三日。主に女児の祝う節句で、雛祭をする。宮中では、この日、曲水の宴を張った。桃の節句。雛の節句。三月節句。重三。
とあり、中の〈曲水の宴〉を引くと、
——古代に朝廷で行われた年中行事のひとつ。三月上巳、後に三日(桃の節句)に、参会者が曲水に臨んで、上流から流される杯が自分の前を過ぎないうちに詩歌を作り杯をとりあげ酒を飲み、次へ流す。おわって別堂で宴を設けて披講した。
とあります。
この日には、古くは桃の酒を飲んでいました。やがてこの桃の酒が白酒に変わるのです。桃の酒は桃の花を浸した酒のことです。俗説では、三月三日にこれを飲めば百病を除くそうです。桃の酒は手に入らないかも知れませんが、白酒で祝いましょう。
さて、桃は人々を苦しみから救ってくれる存在です。古事記の中にイザナギの命が黄泉の国から逃げる時、それを助けたことから、
「人々の憂い苦しむ時、これを助けよ」
と命じられ〈神津実の命〉と言うありがたい名前を与えられました。それからと言うもの、様々に形を変えて、桃太郎のような伝説で語り続けて行くのでした。
桃の節句と言えば雛人形。この不思議な人形には様々な伝説が伴います。
江戸時代の書物『未然記』に、
——未来にあったらバカバカしいこと。
の、ひとつとして、
——雛人形を親が作らず、買って済ますようになる。
と言うものがありました。
他の項目には、
——盆と正月が一緒に来る。
とも書いてありましたが……。
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