
怪しい世界の住人〈龍神〉第九話「陰陽道での龍神」
その理由として、国立歴史民俗博物館・名誉教授の新谷尚紀氏が、著書『伊勢神宮と出雲大社(講談社選書メチエ)』の中で色々と述べていますので、その内容を掲載します。
——毎年、西方からの荒れる海流に乗って寄り来る霊妙な龍蛇を迎えて祭り、出雲の王はその自然的霊威力を自らの霊肉に受け取り、その祭祀王としても文化的霊威力を更新しつづけていた祭祀王であったと考えられるのである。それに比べて、倭の五王以来、大和の王権に欠けていたのは、その呪術性であり宗教性であり根源的な祭祀王としての霊威力と言う属性であった。
つまり、
「大和の王は、強大なエネルギーを持つ出雲の王と、出雲の龍蛇神の霊威力を取り込みたかったからではないか?」
と言うことですね。
龍蛇神は龍蛇神講と呼ばれる人々が守っています。『龍蛇神講のおすすめ』と言うパンフレットの中に、
——水に住む”龍”の信仰からは火難、水難の守護神と仰ぎ、地に住む蛇の信仰からは、土地の禍事、災事を除かれる大地主神とあがめ、この二つの信仰が融合し一体となって、各々の家庭の開運、繁栄をお導きいただく〈縁結びの神〉〈福を授ける神〉として慕われていらっしゃいます。
と書いてあります。この出雲の龍蛇神の信仰は、大国主の大神の信仰と共伴に全国に広がりました。火災・水害から家を守る神。あるいは、豊作・豊漁をもたらす神。そして開運の神とされています。
この龍蛇神が関西に流れて商売繁盛の神〈みーさん〉として信仰されています。関西では龍蛇神と呼ばれることは稀です。本来の龍蛇神は黒い蛇神ですが、関西の〈みーさん〉は白蛇信仰とも結び付いてしまったので白蛇なのです。
住吉大社では、毎月の祭礼の市で、昔は本物の白蛇を肩にかけてくれました。私も何度か、これを見たことがあります。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?