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播磨陰陽師の独り言・第三百三十二話「縁起物のこと」
この世には様々な縁起物があります。たとえば福助さんの人形……多くは陶器で出来ていて、お辞儀した物など様々な形があります。私もいくつかコレクションしています。福助さんがあるだけで縁起の良い感じがします。あのふくよかな顔や表情は、見ているだけで、とても良い気分になります。
福助さんは本名を叶福助と言います。江戸時代の大阪の西成に実在した佐太郎と言う人がモデルになったそうです。
古い本には、
——睦まじう夫婦仲よく見る品は不老富貴に叶う福助。
と書かれていて、福助の謂れとなったそうです。
たくさんの縁起物がある中で、恵比寿さんと大黒さんの顔がついた笊みたいな物をご存じですか? 十日恵比寿に行くと売っているやつです。これは〈福箕〉と呼ばれる縁起物で福を集める物だそうです。元々〈箕〉は殻やゴミをふり分けるための道具です。これで福以外の物をふり分け、福を残すと言う意味になります。
このことは、
——人は最初から幸福で、余計な物をつけるから不幸なのだ。
と考えるそうで、とても日本人らしい考えだと思います。
——人は元々幸福なのに、日々不幸なのは余計なことを考えるからだ。
と考え、余計なことを〈穢れ〉と呼び、時々、祓い清めるのです。この〈穢れ〉とは汚れることではありません。気が枯れるようなことを〈穢れ〉と呼ぶのです。
気が枯れる……とは、死に関わることや、生きることを阻害する物事のことです。これらの要素を避けて、祓い清めることで、生きることを輝かせます。
さて、福箕と一緒に売られている熊手のような物を関西では〈福竹杷〉と呼びます。竹杷は熊手の一種ですが、柄の長い物を〈熊手〉と呼び、柄の短い物を〈竹杷〉と呼びます。その竹杷を〈さらえ〉と読んで、福竹杷となった訳です。
福竹杷は大黒さんなどの顔のついた物が主で、福をかき集めると言う意味があります。大きな熊手で福をかき集めるようにと言うことです。福箕にしても福竹杷にしても、一月の十日恵比寿で売られている縁起物です。
縁起物と言っては何ですが、獅子頭は魔除けのために飾られる物です。獅子舞のあれを小さくした物が一般的です。わが家の玄関にも置いていましたが、今は別なところに置いています。
縁起物と言えば宝船。これは描いた物や船の形をした物など様々あります。
わが家のの場合は、私が描いた宝船の絵があるので、それで済ませています。
時々、色々な場面で、
「縁起物はどこに飾れば良いですか?」
と聞かれます。
縁起物は、神棚に飾ったりしてはいけません。縁起物を飾るのは〈縁起棚〉の上です。
縁起棚と言うのは、縁起物を飾るために決めた場所のことで、神棚よりも少し低いところを選びます。箪笥の上など良いと思います。そこに半紙などを敷いて、その上に乗せてください。物によっては赤い小さな座布団を置いて飾ります。
さて、縁起物と言えばノシ袋。この袋のついた〈ノシ〉と言うのは〈熨斗鮑〉のことです。熨斗鮑は、鮑の肉を薄く剥いで、引き伸ばして、乾かした物のことです。いわゆる〈貝の干物〉です。
昔は、鮑をそのまま伸した食物を、儀式に捧げていました。それが鮑が高価だったこともあり、一部を削って伸した物に変化しました。
やがて、熨斗鮑を紙に包んで水引を付けたものが主流になりました。そして封筒のようなものに付けるようになって生まれたのが〈ノシ袋〉です。
これらのことは、
——水引きや熨斗鮑は、永続の意として祝意を表すために進物に添えるようになった。
と辞書にも書いてありますが……。
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