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派遣と寸志

業務の終わり際、上司から寸志が手渡された。

派遣の私は、本来ボーナスが支給されない。ただ、先日大きな山場をチームで乗り越えたので、そのお礼ということだった。

本来なら、喜ぶべきことだ。私だって嬉しくなかったわけではない。

しかしどう対応してよいのか分からず。両手で封筒を受け取りながら、ぎこちない笑顔で「ありがとうございます」と消え入りそうな声で言うのが精一杯だった。

「ああ。上司は渡したことを後悔しているだろうな」と思った。こんな感謝の気持ちが微塵も感じられない派遣にお金を渡して。

派遣から正社員に登用された別の子は、封筒を渡された瞬間「え!?いいんですか!?まさか頂けると思えていなかったので、とっても嬉しいです!!」と花の咲いたような笑顔でお礼を言っていた。それを聞いた上司も満足そうだった。

そう。上司が求めているのはああいう反応だ。頭の中には台詞が出ていたのに、どうして私は口からそれが出せないのだろう。


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