憧れのコーンスープ
入院22日目にしてようやく退院した。
これまで何度か入院を経験したが、
こんなに長かったのは初めて。
水が飲めない、
ご飯が食べられない地獄(?)
を経験する。
16日間の絶食は、
修行僧になった気分だった。
食事再開前に、
栄養剤(クリミール)を飲んでみましょうと、
1日に2本だけ、
初日は ミルクティー味とコーンスープ味が付いてきた。
食事時間に合わせ飲んだ。
とろみのある小さなパックの中身は
すぐ無くなった(泣)
そして
待ちに待った 食事再開の重湯は、
お粥の上澄みを薄くした味もない汁なのに、
何故か喉に滲みた。
ゆっくり、噛むように飲んだ。
何も具もない
鰹と昆布の出汁でとった薄味の味噌汁の上澄みも
からっからの胃に滲みた。
そしてコーンスープ。
コーンスープは、自分の作る
豆乳コーンスープが絶品だと、自惚れていたが、
それは生涯 今まで飲んだコーンスープの中で
一番のコーンスープだった。
多分給食用のコーンスープに違いない。
だけど、
それは
生涯二度と味わうことのない
コーンスープだったのだ。
旨い、旨すぎる‥。
ただ、栄養剤(クリミール)がそこに付いてきて、
それもまた コーンスープ味(笑)
どれだけコーンスープを推すのかわからないが、
栄養士のセンスをそこに感じた。
翌朝、バナナが出たと喜んでいたら、
そこにもバナナ味の栄養剤が付いていた(笑)
どうなっているのか?
次は三分粥🥣
五分粥‥
というように、徐々に固形物を入れて
胃腸を慣らしていく。
幸いなことに、胃腸は驚きはしなかった。
食いしん坊にとって、
絶食は辛すぎた。
手術後、入浴許可が出たら
夜寝れるように、毎日入浴をした。
ある程度歩けるようになったから、
地下のコインランドリーに出かけて、
2日に1回洗濯もした。
(それは 洗濯→乾燥機に移す→乾燥 の作業
エレベーターで、3往復もしないとなのだ!)
絶食中
水分摂取のみ許可されていた時、
2階の売店で水や固形物のないジュースを買ってい
た。
病棟に戻る時、
コーヒーの自販機の前を通る。
私はカフェ中ではないので、
コーヒーより、
その中のコーンスープがやたらと気になっていた。
そして、
いつか食事を許可されたら、
飲んでみたいと思っていた。
食事がだんだん固形物になってきた。
二度とコーンスープは出ることがなかった。
退院日の前日、
あの憧れのコーンスープを是非飲んでみようと
自販機のところへ出かけた。
自販機から出たカップは
非常に熱く
素手で持ち帰るのが恐ろしく大変だった。
だが、
それにも耐えて病室に持ち帰った。
そして猫舌には熱すぎた。
そーっと飲んでみたが、
あの食事再開のコーンスープの感動とは
違っていた。
あの味は
二度と味わうことのない味なのかもしれない。
と思った。
なんのはなしですか?