毎日痴漢にあった小学6年生の話

私が最初に日本という国に絶望したのは、今から約40年前・小学校6年生のときだった。毎日電車に乗るたびに痴漢にあったのだ。しかも、毎回違う人に。ということは、満員電車で小学生のまわりを取り囲む大人5、6人に1人が小学生のお尻を触る計算になる。そりゃ、この国に絶望もするよ。

その頃、古くなった家を建て替えるために、小学校6年生の秋から冬の3カ月間だけ、親戚の家に家族で居候した。親戚の家は電車で10駅くらい離れたところにあったので、初めて電車通学をすることになったのだ。

40年前の小学生は今の小学生みたいにオシャレじゃない。

遅刻ギリギリまで寝ているから、顔もろくに洗わないし、髪も寝ぐせだらけでヤマンバのようにバサバサぼーぼー。服も何日も同じジャンパーを着てるから、袖口は薄汚れている。

そんな小学生だったから、まさか!痴漢にあうなんて夢にも思っていなかった。

しかも、毎日!

最初はお尻のあたりがモゾモゾして、人の手が動いていると気がつくのに時間がかかった。

「え?もしや痴漢ってヤツ???は?私、コ汚い小学生ですよ?まさか??」

痴漢というのは、きれいなお姉さんがあうものだと思っていたので、最初は心底ビックリした。小学生の可愛くないでっかいパンツに包まれたお尻やナニを一生懸命触ったり揉んだりしてくるスーツを着たオジサンの顔をマジマジと見た。

オジサンは、真剣な顔で、ハアハアいって揉んでくる。

私は、「この人も人の親なんだろうに。私くらいの子どもや、もっと大きいコもいるかもしれない。奥さんもいるだろう。会社に行けば、いばっているかもしれない・・・」と思うと、あきれ果て、大人と社会に心底がっかりした。

大の大人が、小学生のケツ触って何が楽しいんだろう・・・?

しかし、痴漢はこの日だけではなかった。

電車通学初日から最終日までの3カ月間、毎日毎日痴漢に遭い続けたのだ。同じオジサンではない。時間をかえ、乗る電車をかえ、車両をかえ。それでもずっと痴漢にあった。どんだけの数の痴漢野郎がいるんだろう!

小学生に対して。

「この国は近い未来に終わるな。」

そう確信した。

一番絶望した日のことを覚えている。

ある日、モゾモゾする手の先を見ると、・・・中学生か高校生のスポーツマン的なお兄さんだったのだ。

「まさか、、、あんたまで???少年とか青年っていうのは爽やかで心がキレイなんじゃなの!!!???」

私はこの日が一番ショックだった。中高生はまだ自分と同じ「穢れのない子ども」の域で、同類で、仲間だと信じていたのだ。むしろ、痴漢のオッサンから守ってくれるような存在だと思っていた。

小6の私は、日本人のロリコン人口は、社会が把握している数を相当数に上回ると確信した。

日本は腐ってる。父親の顔をしていても、会社でエライ人の顔をしていても、爽やかスポーツマンの学生でも、裏の顔ではクズなんだ。

でも、この人たちの妻や親や彼女は、この裏の顔を知らない。

世の中ってコワイ、気持ち悪い。

すべての夢が壊れた。

痴漢に遭って、小6女子は「怖い、恥ずかしい」とか思わなかった。

ただひたすらに軽蔑し、むかついた。そして社会に絶望した。そして、電車を降りれば、毎日すぐ忘れた。学校で楽しいことがたくさんあったから。ゴキブリのことをいつまでも頭に残していられないし。そんな価値もないし。


そして時は過ぎて、高校生になり、再び電車通学をするときがきた。

高校生になったんだから、小学生の時より痴漢に遭うんじゃないかと警戒したが、なんと3年間で2、3回しか遭わなかった。きっと高校生では触るもの怖いんだろうな。抵抗されたり、騒がれたりするから。非力な小学生だから、痴漢に毎日あったのだと理解した。

そして痴漢どもの予想通り、私は親に言えなかった。親が心配したり、悲しんだり、怒ったりするのが困るから。子どもってそういう心の動きをする。

これは今から40年前の話だ。今はもっとひどいんじゃないかと思う。

くれぐれも親御さんは気をつけてあげて欲しいと思う。