【音楽レビュー】最高地点に行ったアルバム PORALIS GO STREET / airezias
全国流通が始まったこちらのアルバムをご紹介。
・ストーリー性を感じるアルバム。外国のループするタイプの絵本を読んでいる気分になる。それもとびきり厚くて古くて、曇った色ばかり使われている絵が中心の。
・歌が"楽器"としてキチンと機能して鳴っており、無駄がない。
・演奏する方は、キメや構成を覚えるのが大変そうだがそれ以外は絶対弾くのが楽しい。弾きがいがありそう。
・メロディがガツガツしておらず、CMなど人の生活空間を邪魔せずに作る音だ。
1.H
壮大で重厚なコーラスワークのみで織りなす曲。
美しいのに恐ろしさを感じる。
異世界へ突き落とされている最中の様だ。
2.SLINGER LAND
※個別レビューあり
『H』を経て、土の匂いで目を覚ましたら森にいた、という感覚になる。
3.それ
エレキとアコギのフレーズ、忙しないドラム。しかし曲全体のペースを支配しているのはベースなのかと考えが錯綜する。
森を抜けたかと思いきや、誰かに追われる様な焦燥感のある曲。
4.BUSINESS
電子音的な効果音の取り入れ方がスマートだ。
それは電池が切れそうな音だったり、サイレンの音だったり。
喧騒から出来ている都市、道行く人は無表情。そんな中にあるクラブで平静を保とうとしつつ踊り狂ってしまうイメージの曲。
5.ほへと囃子
アルバムで1番柔らかい表現をしている歌詞。子供向けコンテンツの中に使われそうな曲。
外国のマーケットと日本の祭の出店を足して割る2した場所で、浮き足立って迷子になりながらスキップしているイメージ。
たまに出てくる不穏で深みのある音が(低いコーラス、弦楽器の歪ませ方)Airezias らしい。
6.ハニーマスタード
平易なリズムなミディアムテンポの曲。ゴリっとしたベースと、割れかけたボーカルの音、サビの低音コーラスがクールさを底上げしている。ギターソロの美しさが際立つ。
ライブの開演時間より遅れて行ったらやっていそうなイメージ。
7.蠅と乳房
1番クセのある歌い方をしている曲。ミディアムテンポ。サビと"サビ以外"のスライドの感じ方が同じ奏法なのにまるで違う。サビのスライドはストリングスを彷彿させる。
8.アミソリア跡地
儚げな歌声と優しい楽器達の音に、雨音。静かに外にいるかのよう。
癒されているのに、曲の後半は「ここにずっといてはいけない」
と言っているかのように、楽器達の音は歪み緊張感を出してくる。
冷たい岩肌のある洞窟の先にある、遠い昔あった文明に思いを馳せているようだった。
9.どんなひとでも
1曲目『H』と似たようなコーラスワークが中心の曲。
違うのはピアノが入っていること。美しいのに、
「どんなひとでも燃えれば同じ」と、背筋が凍ることを言う。
異世界に来た時と同じ方法で、元の世界に戻っていくようだ。
10.N
アルバムの中で一番明るいインストの曲。
憑き物が取れ、心身軽くなって走り出したくなった。
こんなに丁寧に作りこまれたアルバムは、バンドにとって最高地点に行っただろう。
そして、きっとこれからも最高地点を更新し続けて面白いものを魅せてくれると聴き手は絶対楽しみにする。
関連記事