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私のフルート人生(8)

新たな目標

話は前後しますが、ちょうどアメリカ行きの準備をしていた頃のこと、ひょんな事からとあるポピュラー・バンドの活動に参加させてもらうようになりました。最初は興味本位だったのですが、あまりにも楽しくてすっかりハマってしまいます。 もともと私は過激なロックやヘヴィーメタルを好んで聴いていて、我ながら真面目にクラシック音楽を吹いているのが不思議なくらいでしたから、ポピュラー音楽を演奏する事への抵抗感はあまりありませんでした。

このバンドで私は初めて即興、所謂「アドリブ」に取り組むことになります。やろうとすればする程、即興の世界は広く、深いのでした。しかしクラシックの世界で行き詰まった自分にとっては、遠すぎて先が見えない程の目標ができた事は歓迎すべき事です。「クラシック」という固定観念を捨ててしまうと、自分とフルートには、限りない可能性が拡がっていました。

そんなカルチャーショックを受けた事から、私の音楽観はがらりと変わってしまいました。カルテット・ペピモンの新しいサウンドのイメージがうまれてきたのも、ここからでした。そしてペピモンを通じて、また沢山の新たな出会いに恵まれて、一つまた一つと、成長させて頂いている様に思います。


紆余曲折を経て、やっと自分らしいフルートとの関係に辿り着いた私ですが、今もって「私はフルートが好きで、好きで・・」という風にフルートを愛しているとは言えないのです。気がつけば人生の半分以上の年月をフルートと共に歩んできたというのに。

このたび、こんな風に自分のフルート人生を回想してみたのはどうしてなのかというと、実は「もうフルートはいいや」という思いがあったからなのです。やりたい事はみんなやって満足しましたし、ずっと前へ前へと進み続けてきて、正直疲れた部分もありました。子供が産まれ、今までとは全く違った人生が始まりました。それがこうしてつくづく思い返してみると、フルートがあっての自分であり、人生でしかありえないのだ、とどこかで悟ってしまったのです。

私にとってフルートとは、生涯のパートナーなのかもしれません。これまで、フルートを通じて自分に向き合い、大きな修行をさせてもらいました。どれだけ多くの喜び、苦しみ、感動と出会いを私に運んできてくれた事でしょう。これからもきっと、好むと好まざるとに関わらず、フルートから離れることができずに、色々な事を学んでいくのでしょう。

◆気づいたこと「フルートがあっての私。フルートがあっての私の人生。」

第1部 完

“#想像していなかった未来”

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