サボテンの落書き

2024年11月24日 21:56

朝からひどく暑い。そんな中、長い長い階段を登る散歩。タオルミーナのメインストリートの右側に抜けると階段になっている道があり、そこをひたすら登っていくと岩壁がくり抜かれてできた教会があるのだそうだ。

昨日の散歩中から何度も見かけた、若い夫婦とその赤ちゃん、に出会う。タオルミーナは小さな街なので見るべきところは決まっているし、メイン通りが一つしか無いので、さっき見た人をまた見る、みたいなことが度々起こる。男性は、勇ましいカゴ、みたいなので赤ちゃんを背負っている。日本ではあまり見かけない形の、でかでかとしてリンゴの収穫とかができそうな形のカゴ。抱っこ紐、ではなくてこういうのが欧州では一般的なのかな？　東京でも時々外国人観光客が背負っているのを見かける気がする。せっかくなので、と階段のところで家族写真を撮ってあげる。男性のカメラがFUJIFILMだったので、FUJI仲間だ！と嬉しくなった。

すっかり山登りの様相、という感じの階段。どこでどう立ち止まっても広く海が見渡せて素晴らしく気持ちが良いんだけど、それにしても暑い。崖には明らかに野生、という風貌のサボテンが沢山生えていて、驚いたのはサボテンが落書きだらけだということ。観光地の建物に落書きされているのは見かけるけれども、サボテンに書き付けるとは。一体誰が始めたんだろう。落書きはペンと言うより何か引っ掻き傷みたいな形で書かれていて、サボテンが痛々しく見えてあんまり良くないな、と思った。

へえへえ言いながら教会まで登りきる。しかし開く前に着いてしまったようで肝心の教会に入れない。足止めをくらった様子の数組の観光客の中に、日本人のご夫婦がいた。ローマぶりの聞き馴染みある言葉に、お、となる。リタイア後のご旅行で、パレルモ、アグリジェント、などシチリアの名所をぐるぐるっと回ってきて間もなく旅の終わりだという。ちょうど逆回りという感じの旅程。結局、シチリア島のなかで出会った日本人はこのお二人だけだった。

教会が開くのを待つ間、タオルミーナの街をさらに上から眺められるという街を下から眺めたり（向かうまでの道が細すぎて車で行くのも大変らしい）、レストランの残飯をもらいに来たらしい猫を撮ったりして過ごす。

20分ほど待つとようやく教会が開いて安心する。一体何時開門なのよという感じではあるが、そういうのがやんわりしている旅先なのだ。中は確かに祭壇？と言うのか？が斜めの岩壁になっていて、変わったつくりだなーと思った。引き続き教会にどう感慨を覚えるべきかは分からない。でもとりあえず目標地点を目に収めるというのが大事。観光ってそういうことだったりするし、100%で受け取れなかったものをいちいち反省してたって仕方がない。

でもやっぱり教会よりもはるかに強く記憶に残る青い青い海を見下ろして、階段をひたすら下りて再び街へ。青の濃さに国の違いを感じるけど果たしてこれって本当にそうなのだろうか？　不思議。

観光地って本当に良いものだよね、が詰まったタオルミーナの街をそろそろ去る時間。観光地という言葉をポジティブに使うことって案外少ない。「観光地値段」「観光地観光地している」などの言葉に代表されるように、「ホンモノとしての地元」に対して劣った存在として表現されがちな「観光地」という言葉だけど、タオルミーナは観光地という言葉を改めてキラキラさせてくれる街だと思った。いいんですよ、観光地って！リゾートって！

バスに乗り込んでカターニャ空港へ。この日は日曜日で、ガイドブックで読んで皆休んでいるものだと知ってはいたものの、本当に街中が死んだように静かで驚く。この中を歩くとしたらちょっと怖いかも知れない。

カターニャ空港から飛行機に乗る予定はなくて、レンタカーを借りるために行った。カウンターの場所がなかなか分からず、治安が悪いと言われているカターニャの空港で明らかな観光客然としてうろうろするのは結構どきどきだった。

レンタカーを借りる雑然とした列で長らく待たされ、保険まわりの話でごちゃつき、それなりに大変な手続きだったものの無事レンタカーを手に入れた。ここからはシチリア島をめぐるドライブ旅。この島は四国くらいの大きさだそうで、大きな街どうしはだいたい車で3時間くらい。内陸の街には車がないと行けないので、満喫するには車が一番！というイタリアンシェフの勧めに従った形です。

さて、一泊だけするカターニャ郊外のアグリツーリズモへ。農家を本業とする家が宿を提供する民宿、みたいなのがアグリツーリズモ。

たいへん広大な敷地の入り口にある門に到着し、入っていくと、何やら結婚式？の二次会？みたいな雰囲気で人々が集まっているのが見える。なんというかそのアットホームなお祝いと酔い、な雰囲気に迷い込んだアジア人としての自分があまりに「招かれざる客」感があって非常に居心地が悪く、そうはいってもお金を払って予約してるんだから何とかしないと、とフロント的なところへ。宿主らしい女性に声を掛けるとどうしたの？今夜は予約入ってないと思うけど。見ての通り貸切で結婚式をやってるからね、見てわかるでしょ。みたいな対応をされ、いやいやだってBooking.comお支払済なのよ勘弁してよ！　と恐ろしくなる。確認を重ねてもらって、ああ確かに予約は入ってたわ……と理解していただき一安心。でも見ての通り貸切だから、夕ご飯は用意できないのごめんね、とのこと。アグリツーリズモのご飯を楽しみにしていたからちょっとがっかりしたけれども、とりあえず離れみたいな部屋、快適そうな一棟貸し、をちゃんと借りられたのでまあ良いとする。

この宿の敷地には小さな子猫が三匹いた。ちょっとしたミスで私は三十分ほど部屋から閉め出されていたのだけれども、外にいると三匹がひたすらに追いかけあっていたずらしあっているのが見えて、子猫ってこんなに遊ぶんだ！　と見ていて飽きない。離れの扉を開けようとすると、ごはんがもらえると思っているのか？　三匹とも一斉に駆け込もうと扉に飛びついてくる。可愛いんだけど勝手に中にいれるわけにもいかないので、ちょっと困った。