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プロレスラー

プロレスラー「Rさん」初めて本人を生で観たのは、34年前、群馬の試合会場だった。
当時、まだ大学生だった筆者はリング下から、立ち見で試合を観させてもらった。空手部主将をしており、それなりの嗜みはあったものの、プロの試合と言う物を生で観たのはこれが3回目くらいだったと思う。
リング上でライトを浴び、決めポーズを取る、2つ年上のプロ選手。輝いて見えた。すでに団体内で中堅と言う位置付けだった。片やたった2才違いたが、アルバイトの年収はわずか数十万円の苦学生。自分がいかほどの物かもわからず不安を抱えて生きていた。今だから言えるけど、そんな気持ちにならなくても良いのだが、何となく情けない気持ちで一杯だった。
眩しかった。輝いていた。
ところが、まさかの34年後、偶然にも再会の機会は訪れる。久しぶりに行った地元のスーパー銭湯。洗い場を探したが、混んでいて、空いていたのは一席のみ。隣は明らかに堅気ではない金髪ロン毛のおじいさん。どうりで誰も座りたがらない訳だ。しかし物怖じしない俺は、隣に座った。そして、その時気付いた。「Rさん」だ。金髪のロン毛。さすがにそんな人は多くはいない。彼の地元だから、ここにいてもおかしくはない。
身長は決して大きくないし、周囲の人も、派手で、ちょっと,ヤバい小太りのガテン系のおじいさんくらいにしか思わないだろう。
ただ、長年の怪我の影響か、立ち上がるのもきびしいらしく、ゆっくり立ち上がり、歩く姿もよぼよぼ、もちろん湯船に入る階段なんてそろりそろり。見ているだけで痛々しい。当時からしたら、変わり果てた姿だ。
試合は一瞬だが、その後の人生は、その時、思っているより長い。プロスポーツ、特にエンタメ系のきびしさを見た。健康でいられた事に感謝します。

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