青春の色を塗りかえる。#114
「学校を舞台にした文化祭で、青春を思い出そう。」
なんて言葉を、今参加させてもらっているコミュニティの、コルクラボで、耳にした。
「忘れたの?」
って、一言目に、聞き返したかった。
自分の存在を忘れさせるような黒い制服も、昼休みに楽しそうに笑っている生徒を窓から眺めるだけの校庭も、給食時間になるとグループごとに引き剥がされる机も、小さな水槽に閉じ込めるように区切られた教室も、名前を知りたくはない、どこかのクラスの誰かがいじめられている噂を聞くトイレも。
「そのすべてを、ほんとに、忘れたの?」
って、聞き返したかった。
「青春」の色がきれいなのは、青春にはもう後戻りできなくなった大人たちだけで、そんな大人たちが、過去を忘れ去った脳内を再現した青春ドラマが、何度も何度も、同じストーリーのままテレビに移されているのを見ては、絶対にこうはならないと、中学生の頃固く誓って、そのまま、高校を辞めた。
それから15年以上が過ぎて、30歳を超えた今、人生ではじめて、コルクラボの文化祭に参加することになった。
「忘れたの?」の疑問が消えることはないけれど、仕事でもなく、毎日毎日、楽しそうに、時々ちょっとつらそうに、文化祭の準備をすすめる仲間たちの様子を、横目でちょくちょくうかがいながら、自分も、少しだけ参加させてもらうことになった。
読んでくれた方、ありがとうございます。学校も、文化祭も知らない人も、青春の色が、少しだけくすんでにごっている人も、良かったら、遊びにきてね。ちょっとだけ、青春の色が、塗りかわってくれるはず。