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「近々両用の処方」適切な提案タイミングとは?

世間一般で知られている遠近両用は、累進世代には欠かせないものとなり、みなさんも処方することが多いと思います。


しかし、遠近両用にも設計上限界があります。


たとえば、遠方から中間、近方と度数が強く変わるたびに左右の視野が狭くなると言う設計です。


これは低加入の1.75くらいまでなら左右の視野もそこそこに保てるので、パソコンなどの中間視野も見ることができます。


しかし、60代後半くらいから「パソコンが見えにくい」という主訴に対して「加入度数を上げるだけ」というアプローチはとてもナンセンス。


もちろん度数的にはピントが合う場所もあるでしょうが、視野が狭くなることや、度数の移り変わりが、なだらかではないことが多いので、「見えるけれどもなんか疲れる」といった眼鏡が出来上がります。


そこで提案するのが「中近両用」や「近々両用」です。


遠近、中近、近々両用の設計がどのように違うかは、別動画で詳しく解説していますので、そちらも合わせてごらんください。


今回は「近々両用の提案タイミング」ということなので、おおまかなタイミングを2つ紹介します。


まず一つ目、

遠近両用から中近も使いこなし、それでもデスクワークを快適にしたい60歳以上の方。


こちらは段階を踏んで、レンズの設計を理解している方が多いので、「歩けなくなることを説明する」「逆加入が2.0を超える距離まで見たい」という方がいたら「それは中近で対応してくださいと説明する」くらいですね。


近々両用も遠近、中近と同じく、加入が2.0を超えると左右の歪みが増え、近々の良いところが潰れてしまいますので、よほど希望されない限りは逆加入1.50でとどめておく方が無難です。


ちなみに一般的な近々両用の逆加入は-1.00 -1.50 -2.00が主流です。


二つ目、

遠近両用や中近両用を使ってこず、単焦点の「近用」だけを使ってきたが、パソコンと手元が1つの眼鏡で見えなくなってきた60歳以上の方。


単焦点に慣れていた方に、遠近や中近は視野が狭く感じてしまうことから、

いきなり近々両用をおススメする方が無難です。


なぜなら、その方は今まで単焦点を使いこなしていたので「近くを見ること以外」は眼鏡を外して行動してきたからです。


そんな方に、遠近や中近を処方しても「使いにくい」と言われるのがオチです。


ここで大切なのは、

手元をどこまで近づけてみるのか?

顔を上げたときに、どこまで離れた距離を見たいのか?

です。


近々両用の処方手順は、まず「どこまで近くを眼鏡で見るのか?」を決め、そこから逆加入と呼ばれるマイナスレンズで距離を測ります。


明視域の計算が素早くできる方は計算して逆加入の度数を考えても良いですが、僕は暗算が苦手なので簡単な方法を使います。


やり方は「手元の距離を見る度数」が決まったら、仮枠に-1.00か、-1.50のレンズを入れてどちらが望む見え方に近いですか?と聞くだけです。


どちらかの逆加入が決まり、近々両用のテストレンズがあれば最終確認で見てもらい、「目線の動かし方」「左右の歪み」を説明すればOKです。


あとはその方のリアクション次第になりますが、便利そうならそのまま近々で作成。


累進レンズが無理そうなら苦肉の策ですが、手元と離れた距離の中間に単焦点の度数を設定し、あとは本人の残った調整力を使って少し前後に動いてもらうくらいしかありません。


弱度から中度の近視度数(-3.0くらい)なら最悪手元は裸眼で見てもらい、パソコンなど「見たいものを優先にした度数距離設定した単焦点」なども提案の1つですね。



近々両用は処方頻度としては少ないかもしれませんが、先ほどの条件が当てはまる方にはかなり有効な提案です。



ピント調整しずらい設計の眼鏡で長時間対象物を見ることで眼精疲労の原因にもなりますので、あなたの引き出しの1つとしてあたまの隅に入れておくと

いざという時に、「あ、このパターンいけるんじゃない?」と思いつくことができます。


もちろん選ぶのはお客さんですが、狭い選択肢からむりやり選ばされるのと、本当の主訴に届けた提案とでは満足度が変わりますよね?


ぜひ、次の測定から試してみてください。

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