人間観察が好きだ。
アンパンマンの胴体を握るより、顔を握った方が持ちやすいのだろうか。顔が潰れ、首から下がぶらんぶらんしている。女の子なりの「大切な扱い」を、アンパンマンはきっちり受け止めていた。
https://note.com/karasu_toragara/n/ne521f98ea108
きっとどこに行くにも連れて歩く、大事なアンパンマンの人形の顔を握りしめて歩く小さな女の子が、印象に残った。人間観察が好きな知人に話すと、「将来が楽しみ」と、くしゃっと微笑んでくれた。
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5歳の私は、年下のきょうだいが不思議で仕方なかった。私は、絵本や図鑑は痛めないように大事に扱う子だった。躾けられたというより、気がついたらそうしていた。
対して、年下のきょうだいは、見るだけでは物足りないらしく、鉛筆で落書きをする個性だ。「ぼくがちいさなころは、うちの親、もっときびしかったのに、変だなあ」と、5歳児なりに、首を傾げていた。
時が流れ、私が小学一年生になった頃のこと。私が帰宅して居間に入ると、絨毯一面に鉛筆で巨大なアートが生み出されていた。親は疲れて呆れて途方に暮れている。当時2,3歳の年下のきょうだいは、「何か?」と、キョトンとしていた。
個性が違えば育て方も違うと、当時は分からなかったが、懐かしい思い出だ。
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お話しに熱中すると、少し声が大きくなることがある。よく通る声質の方もいる。聞くとはなしに、耳に飛び込んでくる会話が、心に残ることもある。
金曜日の夕方、駅前の出来事だ。リクルートスーツ姿の、新社会人の女子二人が、お互いの近況や、彼女たちが目新しく感じるらしい福利厚生のことなど、立ち話をしていた。
立ち話が盛り上がってるなあと意識しつつ、彼女たちとは別方向へ向かった。だから、細かな流れは聞こえないし、聞くつもりもない。それでも、仕事がらみの話が終わり、彼氏の話にシフトしたことは、なんとなく分かった。そして、よく通る声で、この一言が周囲に轟いた。
「寂しいなら、お前が会いに来い」
「えっ?」と、彼女たちの方を見た通行人が、私の視界の範囲だけでも、2人いた。
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詳しいことはわからないけれど、そのまま変わらずに歩んで欲しいと思わされる、大物を、時々見かける。人間観察が好きだ。