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少しばかりの色づきを、あなたに向けて

料理は好きだがお菓子作りは嫌いだ、 そう豪語する女がいたらまずそいつは大雑把な性格だとみて間違いない。 男性諸君、あれは全くの別物なのだ。 お菓子作りは、計りのメモリとにらめっこできる女性のみに与えられる趣味であって、 決して米一合すらも目分量で炊いてしまえる女のすることではない。 だから私はお菓子を作らない。 つまりは御用達クックパッドの検索欄に 「チョコレート 簡単」 「チョコ菓子 オーブンなし」 などというワードは残るはずがなかったのだ。 いや、私の意地とし

    • ミルクスキン

      「子供は、男の子女の子の順がいい」 それが彼のくちぐせだった。 「いいね、お兄ちゃんっこになるよ、きっと」 そういって私は、彼の腕のなかで微笑むのが 癖だったし、決まりきった返事だった。 午前3時、 私の仕事終わり。 家に帰って彼とまどろむ 肌と肌がふれ合う感覚は 生まれたての赤ん坊を 抱き締める気分にさせた。 抱き締めたことはないけれど。 どことなく、 そんな気分にひたっていたのだ。 肌の弱かった彼は必ずお風呂上がりに ボディクリームを塗っていて その香り

      • 環状線外回り

        あたしは少しあたまのいい振りをして ガタンゴトン 電車に揺られる。 いつもいじっている ゴテゴテのスマートフォンはバックに沈めて 小さな文字の並ぶ文庫本を手に あえてカバーもかけてない 太宰治の「人間失格」。 ね、いかにも文学少女って感じでしょう。 環状線外回り ぎりぎり滑り込んだバカな高校に行くために 毎日3駅、 外回りにガタンゴトン。 あたしが降りる一駅前の停車駅 そこでは左のドアが開きます。 だからあたしは決まって右のドアの横 空いてれば座るし 空いて

        • よくばり

          あぁ、まるで玩具屋のこどもだ。 ショートケーキにチーズケーキ、 チョコレートケーキにフルーツタルト ぎっしりとならんだ好物を食い入るように 彼女は見つめている。 ケーキ屋のショーケースの前。 しゃがみ込んでかれこれ5分。 僕はその彼女の少し丸まった背中を見ながら 奮発して新調したという 白いワンピースが汚れてないだろうか、 そんなことを考えていた。 「あぁ、やっぱ王道ショートケーキ いやでもチョコレートクラシックも捨てがたい うーん、タルトってなんでこんなに…」

          打ち上げ花火、どこからみよう。

          シャッターの多くなった地元の商店街。 自転車をおすおばちゃんと、立ち話をするエプロン姿の女性。犬の散歩のおじいちゃんに、ただ通過する学ランの少年。 夕方になればほとんど人通りがなくなるはずのその道は、今日はなんだか違っていた。 赤、白、黄色、 水色、そして黒、 色とりどりの浴衣をまとった人々が、 押さないようにでもふれ合う距離で、 ある人は恋人と手を繋ぎ、ある人は友人とかき氷を食べながら、列をなして歩いていた。 「そっか、今日は花火大会だね。」 あたしはそっと隣を歩

          打ち上げ花火、どこからみよう。