黒き闇の檻

  あら、ようやくお目覚めになられまして?
(ガシャンガシャン)
  こらこら、暴れないで下さいまし。
(バシッ)
  きゃっ、もう。何をするのですか!
(「いい加減にしろこのストーカー女! お前は一体誰なんだ!? それに、ここは何処だ!? あとこの手錠を外せ!!」)
  まぁ、酷いですわ……。
  貴方の妻であるこのわたくしをストーカー女と呼ぶ  だなんて……お仕置きが必要ですわね?
(ビリビリビリッ)

  あらあらごめんなさい。
  お仕置きとしてスタンガンを使わせて頂きましたわ。
  ですがまた気絶されても困りますので、威力は先程よりも抑えております故、どうかご容赦くださいまし。
(「……早くこの手錠を外せ」)
  まあまあ、そう焦らずに。
  さて、お仕置きのついでに貴方の質問に答えてさしあげましょう。
  わたくしの名前は檻原 黒羽、貴方の妻となる女ですわ。
  それと、ここはわたくしの部屋。
  そしてその手錠ですが、外す訳がないでしょう?
  万が一にでも貴方に逃げられては、困りますもの。

(「チッ、ダメか……、ん? この大量の写真は一体……?」)
  あぁ、この貼ってある写真達ですか?
  凄いでしょう?
  壁から天井までぎっしり貴方の写真が貼り付けられていますのよ?
  しかも、全部1年以上かけて撮った隠し撮りですわ!
(「なっ……」)
  ほら、見て下さいまし!
  授業中に居眠りしてる所でしたり、部活で頑張ってる所でしたり、友達とゲーセンで遊んでいるところでしたり……どれもこれもベストショットですわぁ。
(「い……一体何故こんなことを……」)
  わかりませんか?
  全く、貴方は本当に鈍いですわね。
  貴方を心より愛しているからに決まっているではありませんの。
  それ以外に理由があるとでも?
(「だ、誰か助けてくれぇ!!」)
  どうしましたの?
  そんなに大声出しても、無駄ですわよ?
  何せこの部屋は防音になっておりますので……。
  例え外に漏れたとしても、こんな夜遅くでは誰も気づいてくれないでしょうし、残念ですわね。

  もう、満足しましたか? 
  あらあら、せっかくの貴方の素敵な声が枯れておいでですわ。
  はい、まずはお水をお飲み下さいませ。
  大丈夫ですわ。
  毒なんて入れてませんもの、安心してお飲み下さいまし。
  それにしても素敵でしたわよ、貴方の叫び声 。
  涙目になって助けも来ないのに必死に叫んで、本当に愛おしくて仕方ありませんわ……ハァ…ハァ…ハァ……。
(「おのれ! こんな事をしても、長くは続かんぞ!」)
  ご心配なく、貴方のスマホからお母様に
「部活の合宿で、1ヶ月ぐらい帰れないかも」
ってメールしておきましたので、安心して下さいまし。                                                                                  (「そ……そんな……。」)
  ほら、この絶望に満ちた顔!
  その顔がとても愛おしくて仕方ありませんのよ!
  これは是非、写真に収めなくては……ハァ…ハァ…ハァ……。
(パシャ パシャ)
  フヒヒヒヒ……これでまた、わたくしのコレクションが増えましたわ!
(「何故こんな事を……」)
  さっきも言ったじゃありませんか、貴方を心より愛しているからだと。
(「違う! 何故お前が俺に異常な感情を向ける様になったのかを聞いているんだ!!」)
  まぁ酷いですわ……、わたくしの深い愛を異常な感情と宣うだなんて!
  また、お仕置きですわよ!
(ビリビリビリッ)

  ふぅ、貴方も懲りませんわね。
  まぁ良いでしょう。
  貴方を深く愛する理由……きっかけは単刀直入に言えば、一目惚れですわね。
  一目貴方を見たその時から、わたくしは貴方を四六時中観察する様になって、次第に貴方への愛が強まっていったのですわ。
  貴方のその優しそうで端正な顔、潤んでて綺麗な瞳、一見細く見えるけど意外とがっしりとした身体、そして困っている人を放っておけない不器用ながらも優しいその性格……。
  あぁ、貴方の全てが愛おしいですわ……。
  ですが、こんな貴方のことでしょうから、いつ何時  卑しい雌豚達が貴方に近寄ろうとするかわかったものではありませんわ。
  その事を考えると、毎日気が気ではなくなって、夜も眠れません!
  ではどうすれば良いのか?
  答えはそう、他の雌豚共に取られる前にわたくしのものにすれば良いのですわ!
  後は、簡単です。
  部活帰りの貴方を背後からスタンガンで気絶させて わたくしの部屋に連れて行くだけですわ。
  貴方が目覚めたらここに居たのも、そういう理由ですわね。
  お分かり頂けましたか?
  では、わたくしはご飯を作ってきますので、良い子で待っていて下さいね?
  ですが、決して逃げてはなりませんわよ。 貴方が、逃げた暁には……


  ドウナルカ、ワカッテオリマスワヨネ?


  まぁ、手錠に足枷までされていますので、万に一つもそんなことは起こらないでしょうけど。
  何をお召し上がりになりたいですか?
  貴方の好きな料理なら何でも作って差し上げますわよ?
(「……」)
  あらそう、答えて下さりませんのね。
  それでは適当に作ってきますので暫しお待ち下さいませ。
  あっ、そうですわ!

チュッ

  フヒヒッ、貴方はもう、これで永遠にわたくしの物ですわ……。

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