魔王子復讐譚Schadenfreude~全てを奪った貴様を俺が滅ぼすまで~ 2話
・遡ること数年前
・群衆の罵声の中、馬車の檻の中にて
兵士「おら、着いたぞ」
エリザベート「ついにこの時が……さようなら子供たち、私はあなた達のお父様の元へ逝きます。どうか、強く生きて下さいまし……」
ジーク「母上!!」
リエル「お母様!!」
兵士「早く来い!」
・エリザーベート、兵士にギロチンへ引き立てられる。首枷がはめられた後、観覧席に座り不敵に笑うハインツに目をやる。
ハインツ(クックック、これでようやく邪魔者は消える。この国は私の思うがままだ。この女を殺した後は、小僧と小娘を魔の大陸の魔物共の餌にでもしてやるか)
エリザベート(ああ、ハインツ。あなたにとってはあの人も私も、そして子供達も邪魔者でしかないという事ですか……)
兵士「執行!」
・ギロチンの刃が落ち、首が掲げられると同時に群衆の感性が沸き起こる。
ジーク「……ッ!!」
リエル「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
・暗転
・追放後、魔の大陸__大迷宮「奈落の奥底」にて
ジーク「はぁ……はぁ……はぁ……」
ジーク(何とか魔物の群れから逃げられた、だが国を追放された今、僕達はこれからどうすればいい?)
リエル「うう……もう嫌ですわ……お兄様……、お城に帰りたいですわ……」
ジーク「我慢してくれリエル、僕たちにはもう帰る城がないんだ」
ジーク(何故だ、何で僕達がこんな目に遭わないといけないんだ。僕達はただ、普通に生きてきただけなのに……。父上が突然死んで……気付けば母上が僕達を唆して父上に毒を盛ったという事にされて……。挙句の果てには母上は処刑され、僕達はこの間の大陸に追放されてしまった。敵は誰だ。僕達を嵌めて権力の座に就こうとしたハインツか? いや、アイツだけじゃない。民衆は僕達に罵声や石を投げた。兵士たちは僕達を拷問にかけた。あの国は僕達を見捨てた。つまり、僕……いや、俺達の敵はあのクソみたいな国の全て! 父上と母上を死に追いやり、俺達兄妹をこんな理不尽な目に合わせた奴らは必ず絶対に何があろうとここから生き延びて、そして……)
ジーク「……皆殺しにしてやる!」
リエル「お、お兄様 !?」ビクッ
ジーク「ああ、驚かせてしまってごめんな、大丈夫だリエル。お前は俺が必ず守ってやるからな……」
魔物・牙狼「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
ジーク「チッ、アイツらやっぱり追ってきたか! まさかこんな時に見つかるとかなんてタイミングの悪い!」
ジーク(どうする? ここには武器となるものが見当たらない。だが、奴らへの復讐を成し遂げるまでは……)
ジーク「死んでたまるかぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 」
・突如、魔法陣が現れ、レイピアのような一振りの剣が現れる
ジーク「こ、これは……」
・ジークの脳裏にこの剣に関する情報が記憶される。
・鏖讐斬(クリームヒルト):近接戦闘用の魔剣、軽量且つ切れ味もよく、片手でも扱いが容易。魔力を纏わせ斬撃を飛ばす事も出来る。
リエル「お兄様、その剣は一体……」
ジーク「……どうやらこれを使えって事らしいな。丁度いい、剣術なら父上に散々叩き込まれている! さぁどこからでもかかって来な犬畜生共!!」
牙狼「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
ジーク「はぁっ!!」
ザンッ
牙狼「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
ジーク「くっ、数ばかり多くてキリがねぇな!」
ボス牙狼「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
リエル「きゃあぁあああああああああああああああああああ嗚呼あああああああああああああ!!」
ジーク「なっ!? リ、リエル!!」
ジーク(クソっ、俺とした事が隙を突かれてリエルを危険に晒しちまうなんて! 何とか間に合ってくれ!)
・リエル、つぶった目を見開く。
・ジーク、間一髪で左腕を狼に噛ませてリエルを守る。
リエル「お兄様ぁ!!」
ジーク「ごめんな、少しでもお前を危険に晒してしまって。さてと、俺の妹を襲おうとしてどうなるかわかってんだろうなこの犬畜生がぁ!!」
・ジーク、ボス牙狼の脳天に鏖讐斬(クリームヒルト)を突き刺す。ボス牙狼の死亡により牙狼の群れは引き上げて行く。
ジーク「心配かけてすまなかったな、リエル」
リエル「お、お兄様ぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 怖かったですわぁあああああああああああああああああああ嗚呼あああああああああああああ!!」
ジーク「そんなに泣く事はないだろ全く。涙と鼻水で可愛い顔が台無しじゃないか」
リエル「だってお兄様! 腕が!」
ジーク「安いもんだ、お前を守ることが出来たんだからな…」
・これは、国を追われた兄妹の復讐の物語
そして彼らの復讐劇はまだ、始まったばかり