しめる
20220307
鶏をしめた。
卵を産んでもらうように飼っていた鶏が4羽いた。
そのうちから、寒さと鶏間のいじめとで弱ってきていた子を1羽選び、さよならを告げる。
妻が抱き抱えて、僕が足をビニール紐で縛る。それを逆さに吊るす。
その辺に転がっていた端材の角材で頭を殴る。
一度ではうまくできず、何度か叩いて気絶する。
動かなくなってから頸動脈を、使い古して切れなくなった包丁で、妻が裂こうとする。
も、涙と鼻水止まらず、交代する。
僕の方にも多少思うところあるような気もしつつ、特別抵抗もないまま、包丁を押しつける。スパッと切れないもんだから、ノコギリみたいに使う。
そのうちに、血が滴る。
傷が浅かったみたいで時折暴れる。
包丁をいれなおして、動かなくなる。
血抜き。
天気は驚くほどに晴れている。青。
吊るした柱の下に石があって、受け皿のバケツに血が納まらない。まわりのコンクリートに散る。
ホースで水を撒きながらデッキブラシでこする。
たいした苦労もなく血は落ち、庭に流れていく。あっという間にいつも通りの縁側になった。
僕は鶏の様子をしばらくみて、屋内に戻る。
妻はボロボロと泣きながら、ノートに何かを書いている。
一段落したあたりで、次の工程の準備をする。
と、妻は電話。仕事。なんやかんや動揺は落ち着く。
僕の方は涙なんかがやってくる気配はない。
20分ほど経って、鶏をお湯に浸ける。すでに足が冷たい。
羽は手で引っ張るとぷちぷち抜ける。
そのまま首と足を切り落とす。
ガスコンロに火をつけ産毛を焼く。
スーパーでよく見かける丸鶏がまな板に並ぶ。
あっけない。
YouTubeの動画をお手本にしながら、皮を裂き、肉を削ぎながら、解体していく。
ここまでくると、日々の料理と大差ない。
もも肉/むね肉/鶏皮/ササミ/手羽元/手羽先/レバー/ハツ/砂肝/ぼんじり/鶏ガラをバットとお皿に取る。
飼っていた鶏が一羽、肉になった。
ロシアがウクライナにミサイルを撃ったと、Twitterでみた。