天誅だけじゃない。忍者ステルスゲーム。忍道。荒神。
忍者ステルスゲームといえば、まっさきに思い出すのが「天誅」それは良い。でも天誅だけじゃなんだよ…
天誅シリーズ
だけじゃないといいつつも、もちろん天誅は忍者ステルス業界の開祖と言って良いだろう。
だがその事情は結構ややこしく、商品名としてはあくまで同じ”天誅”なのだが、実は開発が何度が変わってる。
アクワイア開発 1998
小生として思い入れがあるのはもちろん初代をはじめとしたPS1専用シリーズ群である。
シリーズの特徴である「忍殺」は、未発覚状態&立って密着した状態で発動する。
未発覚であっても、離れてるとただの斬りになってしまうが、倒せはする。忍殺モーション中は逃走ができないので、非忍殺で倒すのもアリ。
特に画期的なのが、任務作成であろう。 16x16のセルの上に地形やオブジェクトにより高低差のあるマップの作成可能だった。数字を聞く限り狭そうに思うかもしれないが、気配を利用してプレイヤーを迷わせる方法論が確立しており、実に攻略しがいのある”任務”が多かった。それを集めたのが百選である。
移動操作は前後左右&旋回であった。個人的には操縦桿操作と呼んでる。PS1は、3Dアクションゲームの黎明期でもあるため、このての操作は大量にあった。バイオハザードも中期までそうだった。
K2開発 2003…
名義はフロムソフトウエア。あのフロムソフトウエアだ。 開発はK2。
ハードがPS2/XBOXになって、操作が前後左右の直接移動に変わり、非常に小気味良い操作が可能になった。”天誅 紅”や”天誅 三”、XBOX専用の”天誅 千乱”がこれに当たる。
マップは全体的に広大になり、攻略時間がかかるようになる。しかしその代わりに?任務作成機能は無かった。
例外的に、2006年のPSP版、忍大全には任務作成機能があったが、非常に複雑なものだった。
https://www.4gamer.net/games/070/G007033/
天誅4 2008
名義がフロムのままだが、開発がアクワイアに戻った。しかし、よくも悪くも最後のシリーズとなった。
ハードがwii縛りというのもあったと思うが、全体的にQTE主体のデザインとなっており、歴代プレイヤーとしてはなかなか衝撃的なアレンジであった。
主人公が画面いっぱいに表示されており、前方視界のみ。さらに操作が操縦桿に戻っていた。
しかし、モンハンの如くエリアに区切られてる上に、意図的にデザインされた「攻略ルート」が存在する。 丁寧に進めばクリアはできるため、初心者に寄せてきたとも言える。
隠れらるギミックが格段に増えて、その状況からの”忍殺”バリエーションがかなり増えた。これは直近のアクワイア製作の忍道からのバックポートとも考えられる。
反面、屋根に登る等の必須テクニックは使用不可になった。そもそも屋根は行動可能範囲ではない。鍵が掛かってて通れない箇所もあり、どっちかというとバイオハザードをやってる気分かもしれない。
攻略バリエーションに乏しく、上級プレイヤー離れを起こした可能性がある。
しかも、主人公が大幅に弱体化&敵の大幅強化があいまっており、「アクションゲーム」させる気はどうやらなさそうだ。
遠距離で発覚すると、なんと敵雑魚が刀を投げてくる。力丸が刀をたまたま持っていればよし。持ってなければなんと即死する。 いや東忍流とは….
しかもチャンバラがQTE扱いになった。攻撃ターンと防御ターンが決まっており、敵の斬撃プレビューに対して、防御ではwiiリモコンを斬撃と直角に受ければ防御はできる。しかしその角度がかなりシビアであった。刀の耐久値が減っていき、0になると折られる。
正直、「なんでこんなになっちゃったの…」という印象は否めない。
ただしやり込んでる人はおり、タイムアタックの動画を見ると、「ああ、確かにこれ天誅だわ」という感想を得る。
いきなりみても解らないと思うが、画面が赤くなるのは「敵から見えてますよ」という演出でもある。しかし厳密にはまだ発覚はしておらず、戦闘体制でもないので、忍殺は可能。よく気づいたなこれ。
でも言われてみれば忍道でさんざん似たようなことやってたわ。
忍道シリーズ 2005
天誅のオリジナル開発のアクワイア社が、天誅の版権を失って作った新しい忍者ステルス。それが忍道。
評判はかなり良い。いまいち知名度がなさそうなのが本当に勿体無い。例えばアマゾンレビューはこの通り。小生は全面的に首肯する。
アクション面では、長時間ダッシュが可能で、しかもスタミナ消費がほぼない。ダッシュジャンプからの血祀殺法により実にスピーディーな攻略が可能だった。 視界に入ってなくても発動する。
血祀発動が確定すると、ある程度地形やら障害物やらを無視してQTEが始まるので面白い絵面になるが、実際にやってみればそんなことは全く気にならなくなる。
壁走り&かなり色々なところに捕まることができた。
さらに”ステルス”という概念を極限まで突き詰めており、「大きな隙ができて、防御できない状態」「見失った状態」「気絶させた状態」も当てはまる。言うなればチャンバラが始まっても逆転要素があるのだ。
例えばこの動画の通り。 ※主人公のアバター変更を使ってる動画なので混乱注意。
誰にも頼まれていないが一応解説しておこう。
一人目:井戸は奈落扱いなので、落下すると即死。
二人目:コンボによって気絶。
三人目:転倒からの扉の陰で見失ってる。
四人目:転倒からの障子の陰で見失ってる。
五/六人目: 壁走りからのジャンプ攻撃で気絶。
七人目:灯籠の激突で気絶。
八人目:チャンバラ。ダッシュ攻撃はガードブレイクになるが、しゃがみガードするとガードキャンセル気味にロール回避ができて裏を取れる。
非常に色々な倒し方があるのがお分かりいただけたと思う。
任務作成
PS2版の初代”戒”では例によって任務作成があったが、PS1天誅より格段に複雑な作成が可能になった。しかも32x32と格段に広いマップだ。
拠点の荒屋にはしょっちゅう敵対勢力が襲ってくる。これを”裏庭”とよばれる謎空間で迎撃することになるのだが、この裏庭の地形カスタマイズが可能なのだ。コンセプト上は、任務作成のチュートリアルだったと思われる。
敵味方問わず自由に配置できる上(仕様可能には条件はあるが)に、各キャラクターの挙動は本編の通りなため、さまざまな”実験”が行われている。例えば、熊と武士を大量に配置して戦わせてみる。こういうインディーズゲームが一時期Vチューバーで流行ったことがあるが、2005年にすでに似た様なことは可能だったのだ。
【アクワイア】忍道戒コロシアム -熊との死闘-①コメント付き - YouTube
さらに、プレイヤーの作成した任務を全国公募してまとめて発売したのが”匠”である。
この動画も凄まじい技術で攻略してるので参考になるのかどうか。
忍道 匠 修羅之塔 (全十階+極SP)【shinobido TAKUMI】 - YouTube
PSP ”焔” 2006
キャラクタ類は”戒”から引き継いでるが、ストーリーはオリジナル。シナリオ上は一応続編。
スゴロク風のワールドマップから、各任務を攻略していくスタイル。
全体的に、”匠”で任務作成したかのような、カクカクした地形が特徴。
血祀のモーションも大幅に削減されてる。が、発動自体は従来通りにできる。
PS2”戒”の作成任務をUSB接続で転送できるらしいが、やったことはない。
ダウンロード版でいまだに入手は可能。
続編…?
wikipediaによれば、遠藤氏が次のような発言をしてるとある。文脈からして天誅4製作中の時期での話だと思われるが。
一応リンク先を確認してみよう。サイトは落ちてるようなのでwebarchive.orgで。
PSVITA “散華” 2012
ナンバリング2は、PSVITAのローンチタイトルでもあった。当然小生も買った。
PSV 忍道2 散華 任務紹介ムービー「全滅」篇 - YouTube
飛行ギミックが増えたり、攻略バリエーションはかなり増えたが、代わりに任務作成が無い。
まあどんなマップを作ろうが飛ばれたらぶち壊しなので仕方のない気もする。
日本国産の忍者ステルスはこれで最後、いや最期となる。
ARAGAMIシリーズ 2016
かくして日本で忍者ステルスが尽きて久しいが、シノビの心はスペインで息づいていた。しらんけど。
スペイン人学生グループの東洋風の世界観の忍者ステルス。steam育ちのインディーズ銘柄だが、PS4版、Nintendo Switch版が出てる。
劇中のボイスは謎言語でしかも短い単語に聞こえる。 セミボイスと解釈するべきか。 各国語対応は完全に字幕に割り切ってる。実にインディーズらしいといえる。
シリーズの特徴は、シャドウリープだろう。特定条件を満たすと、視界正面の特定のオブジェクトに瞬間移動できる。移動の瞬間は文字通り煙と化すので視認はできない。目の前を横切っても無事。
天誅の鉤縄とも似て非なる。一方、掴まれるオブジェクトは意外に少ないので慣れが必要。ただ大抵これみよがしに鳥居が置いてあったりする。
ただ昨今、忍者ステルスの新作はこれぐらいなので、このジャンルが好きならお勧めはできる。
ARAGAMI
いろいろ書こうと思ったが細かいビューがあったのでお任せすることにした。
全体的に、やや高低差のあるマップが多い。ただこのゲームにはジャンプが無く高所から降りるのにもシャドウリープを使う必要があるので、落下死とかはない。
敵の近くにシャドウリープを行うと、自動的に”暗殺”する。全体的にやや天誅4寄りな印象。
ステージデザインの意匠は、屋外では、鳥居やら狐の像やらが林立する、シュールな印象。ありがちな「勘違い和風」を体現してる。しかしそれはそれで小生嫌いではない。
後半には、城への潜入が増えてくるが、全体的に西洋の意匠が見られる。あれっ?和風じゃなかったの?と面食らった。
敵雑魚との立ち合いに、基本チャンバラはない。密着すればプレイヤーからは”暗殺”がかならず決まる。しかし発覚すると雑魚的はまずなんと飛び道具を撃ってくるので、近づくにもコツが要る。「発覚しないほうがいいよ」というレベルデザインと言える。
クリアした後もステージセレクトして再挑戦が可能。そのUIはソシャゲのような画面占有率が高いデザイン。
ARAGAMI 2
steamのレビュー等で「天誅のような」という形容が多かったのが本稿を書くきっかけだったりする。
ステージセレクトは、”村”の入り口の”地図”から選択するのだが、右アナログでカーソルを動かすので、タッチパネルはまったく使わない。しかも結構当たり判定が小さい…… いや使おうよ…
木造の家屋が増えてるのでかなり和風に寄せてる。しかも中に入れる。全体傾向としては高低差のあるマップが多い。 山岳や市街地も客観的に突飛なところはなく、リアル寄りな印象を受ける。 開発元もだいぶフィールド設計が熟れてきたなという印象。
ステージクリアすると評価点の他に、クリア実績マーク的なものが付く。
発覚しなかった。(本人を見られてなければ可)
誰も殺さない。
全殺。(ステージに点在する敵を探し回るのが面倒)
クラッシックモードでクリア
幾つか両立できないものがあるので、数回挑戦する必要がある。
2の追加要素として、”暗殺”の他に”気絶”が増えた。体術で引き倒し頭に何か”陰”的なものを注入して昏倒させる。これの何が良いかというと、まず”無殺”狙いの時は必須なのだが。 敵が倒れてるやつに気づいても警戒状態があがらない。 味方が気づくと近寄って起こし、しばらく哨戒したのち持ち場に戻る。
これが死体発覚だと、いきなり最高警戒まであがり、高難度だと仲間を呼び寄せる。しかも侵入者をもとめて数分間全力で走り回る。これが”無発覚”を狙ってる時は本当に怖い。深入りすると割と事故る。
一方、クリア評価として、どうやら極力倒さないほうが評価が高いことに後から気づいた。 あくまでやり込み要素としては全殺があるが、ステージによっては50人とか居るのでかなりシンドイし頑張っても1回発覚しただけでAしか取れない場合も多々。
一方、殺数が少ないと何回か本人発覚しててもSが取れたりする。忍者ステルスとしてはかなり潔癖な部類かもしれない。
今回はジャンプがあり、高所からは自分から攻撃に飛び降りる必要がある。
落下中に”暗殺”が確定すると、体制無関係にかならず発動する。位置関係はだいぶ端折っていて、敵の頭の上に着地してそのまま”暗殺”モーションが始まったりもする。かなりシュール。
と言いたいところだが、コマンドを受け付けて”暗殺”SEが入っても、引っかかった地形を捕まえてしまう場合が多々ある。とても困る。
また高すぎるところから着地では、結構なダメージと1秒近い硬直がある。敵に届かず”暗殺”失敗どころか、その着地の音で大発覚して硬直してる間に、振り向いた敵雑魚にザクザク斬られる。故に落下”暗殺”に失敗するとかなりのリスクなので、割と気が抜けないゲームに仕上がってる。
2段ジャンプか、空中ダッシュで落下速度を消せるので必須テクニック。5階建ぐらいから落ちると即死する。
システム上はチャンバラができるようになったため、発覚しても戦闘で粘れはするが、ガードでスタミナを消費して、0になると無防備で食らうので、チャンバラシステムとしては正直難度が高い部類だと思ってる。さっさと高いところに逃げて仕切り直したほうがいい。3階建てぐらいの高低差で視界はほぼ切れる。当然”無発覚”は諦めるしかないが。
チャンバラの小技として、腰ぐらいの板を飛び越える時は無防備なので、板を跨いで戦うと割と攻防をかなりサボれる。初心者向き。
何語だかわからんが(多分謎言語)ボーカル入り(?)、村BGMは鎮魂歌といった風情。意味は解らないが個人的にはとても好き。
スタジオ閉鎖
全く何の因果か、昨年小生が本稿を書いた直後に、なんと開発元のプロジェクト閉鎖が決まってしまった。
もう何作があるのだが
疲れたので一旦公開しちゃうことにする。