「機械設計」という世界 その2
建築の世界で施行者とは別に建築士が存在するように、機械の世界でも加工者とは別にその設計を専業とする機械設計技術者が存在します。
前者には「1級建築士」「2級建築士」等の国家資格があり、それらは特定の業務につきこの資格をもっている人間が従事しなければならない「業務独占資格」でもありますが、後者には「機械・プラント製図技能士」「技術士(機械部門)」等の国家資格はあるものの、有資格者でないと携われない独占業務はありません。
しかしながら、メカトロニクスの発展も相俟って、機械の世界でも機械設計技術者には当然のように幅広い知識が要求されているのが現状です。設計ミスが災害事故の原因となりうるという点、建築も機械も同等といえるからです。
建築士にゼネコンほかデベロッパーの設計部門に所属するかたと、施工部門を持たない設計専門会社に所属したり個人で事務所を開業したりするかたがあるように、機械設計技術者にもメーカー、エンジニアリング会社の設計部門に所属するかたと加工部門を持たない設計専業会社等に所属するかたとがいます。
個人事務所のスタイルは近年廃れつつあります。これは意匠設計、構造設計のそれぞれを主業とする建築士と異なり、機械設計技術者は意匠設計のみを主業とする者はいないことがその一因でしょう(工業デザイナーと呼ばれるひとのなかには、みずから図面を引いたり生産現場まで確認・調整にいったりするかたもいらっしゃいます。服飾デザイナーでパターンが引けたり、縫製ができたりするひともいるのと似ています)。設計専門会社等で設計に従事している者は前の記事のとおり全国で約5万人といわれていますが、メーカー、エンジニアリング会社の設計部門に所属する者まで含めると裾野はもっと広いと考えられます。
不良設計による災害事故を未然に防ぎ、プロダクトの品質を担保する必要性があり、また一定数の規模をもった専門家集団であることから、その能力を証明するための試験が望まれます。現在、この世界には主たるところで3つの資格試験があります。
「技能検定(機械・プラント製図)」と「機械設計技術者試験」と「技術士(機械部門)」です。
それぞれについてこれから書いていきます。