からくり

出版業界の隅のほうで細々と働く。主に読んだ本、観た映画の備忘録。当面の目標は医学書院の「シリーズ ケアをひらく」を全巻読了すること。

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最近の記事

1980年代生まれ、チェーンストア育ちが読む『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』

『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(谷頭和希・著/集英社新書)を読んだ。 永らく当たり前のように語られてきた「チェーンストアが地域共同体を壊す」という趣旨の批判的言説に対して、「ドン・キホーテ」というチェーンストアを例にとって真っ向から反論し、ドンキ及びチェーンストアはむしろ新しい共同体とゆるやかな連帯感を生み出すのではないか…と主張する都市社会論。 著者は1997年生まれのライターで、早稲田大学で宮沢章夫に師事し、東浩紀が設立したゲンロンが主宰する批評講座で佐々木敦に学

    • 映画『余命10年』を観て涙を流したことに特別な意味はないけれど

      いわゆる「難病もの映画」を好んで観る人の頭の中は、いったいどうなっているのだろうか。ただ単純に落涙によるデトックスがしたい人もいるだろうし、なかには他人の不幸を見ることで自分の人生に何かしらの優越感を覚える人もいるかもしれない。 いずれにせよ、自分は難病もの映画が好きではない。難病もの映画のなかに『火火』(監督:高橋伴明、礒野雅宏/2004)のような傑作があることは理解している。『私の中のあなた』(監督:ニック・カサベテス/2009)だって、どうせ自分は泣かされるだろうと思い

      • 従兄の死はあらかじめ決まっていたのかーー死をめぐるいくつかの作品と記憶

        従兄が亡くなった。 彼は四国のとある町に生まれ、生涯を同じ土地で過ごした。東京に生まれ育った私は夏休みや正月になるとその町を訪れ、短いときで1週間、長いと1ヵ月ほどその町で過ごした。 従兄はもう長い間、アルコール中毒と認知症を抱えていた。両親は亡くなり、実弟も東京で家族を持っていたため、彼は親が遺した自宅で一人で暮らしていた。何年も前に仕事ができなくなり、ここ数年は調子が良ければ自分で病院に通い、それができないときは自治体の職員が自宅を訪れて彼の様子を見る、という生活だっ

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