オイコノミコス
古来から、家庭において男性は外で獲物をとってくる役割で女性が家を守る役割を担っていた。女性が家を離れられなかった理由は、子どもに母乳を与える必要があったからだろう。
この役割分担は姿を変えながら長い間続いていた。父親からは否定者としての父性を、母親からは受容者としての母性を享受しながら育った子どもは、前者から否定を乗り越えて外部へ働きかける原動力を後者からは自己肯定感を享受する。
現代ではほぼ完全に母親が直接授乳しなくても子どもを育てることが出来るようになった。そして、父性と母性の役割も可変的になった。つまり、父親が母性を、母親が父性を担うということも可能になった。
しかし、いくら父親が母性的役割を果たせるようになったからと言っても授乳から与えられる自己肯定感までは代替出来ないのではないか。
母親からの授乳による自己肯定感を享受出来なかった子どもの成長にはその後、どんな心的影響が出るのだろうか。
いずれにせよ、そういった元来の意味でのエコノミー(Οἰκονομικός)の役割が変わり、その環境で育つ子どもにも変容が生じることは間違いないし、新しい環境で育った子どもを既成概念(殆どancien régime)を盾に(変わった子=変な子)というのはれっきとしたgeneration harassmentなんだろう。