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明日の空 vol.4

第四章…「それから」

 あの晩の屋上の出来事から、なんだかんだ理由をつけてはほぼ毎日私は通い詰めている。いつ来ても、ぽんずさんはビール片手に出迎えてくれる。屋上ではいつも、私が楽しいこと、悲しいことや気になること、愚痴などを色んな出来事を、ぽんずさんに話して聞いてもらっている。

 それは、他愛もない会話だったりする。

ある日は、「ぽんずさん、聞いて下さいよ。今日定食を食べに行ったんですけどね。物足りなくて追加で単品頼んだら、追加の単品と定食の小鉢の内容が同じで心の中で爆笑しました。おなじじゃん!なら小鉢違うもの頼めばよかったな」といったそんなほんとに他愛もない話。

 ぽんずさんは、私の話に時に怒ったり、一緒に笑ったり、共感して寄り添ってくれる。自分のことのように話を聞いてくれるぽんずさんの存在が私の今の心の拠り所だ。

 ある日、「たみちゃんさ、ほぼ毎日屋上に来てるけど大丈夫なの?まっ!私は嬉しいけどね。」とぽんずさんに聞かれた。
 すかさず私は「家ここから7、8分位のところなんてすよ。ここ、コンビニ近いじゃないですか。買い物したついで寄って帰るのにちょうどいいんですよね。ぽんずさんにも会いたいですし。」と私は言った。
 「たみちゃん、嬉しいこといってくれるねぇ。気になってたんだけど、いつもここのことマンションって言うけど、ここ団地ね。築40年の激渋団地ね。」「すっかり若者は出て行って、割とじじばば多めの団地だよ(笑)。まぁ、私はそのレトロな感じが、好きなんだけどね。」とぽんずさんは言った。
「いやー、いつも思ってるんですけど、アパートとかマンションとか団地とか…正直あまり違い良くわかってなくて。。」と私は言った。
「…ちょっと、ちょっとぉ。便利な時代なんだからネットで調べてごらんよ。団地は同一の敷地内に建ってる共同住宅の集合したのを言うんだよ。ここ、敷地内にいくつもおんなじ建物建ってるでしょ?」とぽんずさんは呆れながら言った。

「なんでも、調べればいいってもんでもないですけどね。。」と私はちょっとふてくされながら言いつつも、たしかに、言われてみれば同じような建物が何棟も少し距離を置いて建っている。
 「なんか、懐かしい感じがするんですよねぇ。この建物の感じ、落ち着くと言うか和むというか。」と私がぽんずさんに伝えると、ぽんずさんは「そうでしょ、そうでしょ、古びた感じ?年季の入った哀愁の漂う佇まいだからね。」と、嬉しそうに話してくれた。
 ぽんずさんは、管理人を継ぐ程この場所が、好きなんだなぁ。会話の端々にここへの強い思いを感じる事が多い気がする。

次号へ続く…

 



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