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「もっと自信を持って打席に」立つにはどうすればいいか?

こんにちは。カラガラ(kara_gara)です。

突然ですが皆さんは、「もしも自分がプロ野球のコーチだったら」という妄想をしたことはありませんか?
私としましては、「トップが浅い」「始動が遅すぎる」などと指導する妄想をしながら野球中継を見ています。

そんな私ですので、当然ファンである中日コーチ陣の発言も逐一チェックしているわけですが、先日こんな記事を読みました。

この記事の中にはパウエル打撃コーチの発言が記載されています。

アロンゾ・パウエル打撃コーチ(56)は「塁に出なければ点は入らないから、まずはヒットを打つこと。特にチャンスの時。シーズンはまだ始まったばかりで長い。選手一人一人がもっと自信を持って打席に入ってもらいたい」と野手陣に奮起を促した。
中日スポーツ・東京中日スポーツより引用

この発言で気になったことがあります。それは

どうすれば自信を持って打席に入れるの?

ということです。

上記の記事では「野手陣に奮起を促した」と書かれていますが、奮起を促しただけで打てるなら打率4割どころか10割だって可能なはずですし、いつまでたっても試合が終わらないはずですから、ルールで「奮起を促すこと」は禁止されるはずです。

そこで今回は、架空の選手(A選手)を用意しました。このA選手は自信を持って打席に立てていない設定で、私ことカラガラは打撃コーチという設定です(書いてて何言ってるか分からなくなってきた)。

打席内で自信が持てないA選手に対して、カラガラ打撃コーチはどんなアドバイスをするのでしょうか?


A選手のプロフィール設定

A選手はこんな選手です。皆さんだったらどんなアドバイスを送りますか?

A選手(21歳) 右投左打 内野手登録だが外野も守れる 元投手で強肩
・今年がプロ3年目で初めて開幕スタメンに選ばれた
・2軍では1年目から出場機会を与えられていたが、
1軍の打席には立った経験は少ない。
・高校生野手としてドラフト1位で4球団が競合し、中日が指名権を獲得した。本人は「自分はそんな価値ある選手ではない」と思っているので、いつか皆に失望されるのではないかと不安に感じている
・トップに入った際に体をひねり過ぎてしまうため、バットを最短距離で出すことができず、プロの速球をはじき返すことができない
・試合前の練習から、打ち返した全ての打球が鋭くないと納得がいかない
・チャンスで打席が回ってくると、「もしゲッツーでも打ったらどうしよう…」と考えてしまう気弱な自分を情けないと思っている
・趣味は読書

価値観:信頼 義務 
勤勉 熟達

では以下に、私だったらこうアドバイスをするという例を上げていきます。


自信を手に入れるための4つのアドバイス

もしも私が打撃コーチだったら、以下の手順でA選手にアドバイスします。

1.自信を失っている原因を探る
2.マインドフルネスについて学ぶ

3.選手の価値観を確認する
4.目標を定める

1.打席内で自信を失っている原因はなにか?

まずはA選手が打席内で自信を失っている原因を明らかにした方がいいでしょう。A選手の場合は自信が持てない理由にこんなことが考えられます。

①そもそも1軍で打席に立った経験が少ない
②自分の能力を卑下している
③バッティングの技術が未熟である
④練習から完璧を追い求めすぎている
⑤恐れや不安は感じてはいけないものだと思い込んでいる

順番に見ていきましょう。

①そもそも1軍で打席に立った経験が少ない
A選手はプロ3年目で、2軍の打席には多く立っているものの、1軍の打席にはあまり多く立てていませんでした。そんな経験が不足している状態では、最初のうちはどんな選手でも自信を持って打席に立つことはできないわけです。

そこで大切なのは、経験の少なさからくる恐れを認め、自分の価値観にあった行動をすることです。

②自分の能力を卑下している
A選手は自分のことを「ドラフトで競合するような価値ある選手ではない」と考えています。そしていつか皆に失望されるかもしれないと不安も感じています。

こういった「自分は無能なのにそれをごまかして皆を騙しているのだ…」という心理状態のことをインポスターシンドロームと言います。このインポスターシンドロームになってしまうと自分の能力を信用できないので、自信を持つことはできません。

インポスターシンドロームを改善するためには、セルフアクセプタンスを鍛え、今の自分を受け入れていくことが重要です。

③バッティングの技術が未熟である
A選手はプロの速球をはじき返すことができません。それは、トップに入る際に体をひねり過ぎてしまうことが原因です(ここでは簡易的にこの例えを用いていますが、他にも色々な要因はあるでしょう)。

当然ながら、技術やスキルが未熟な場合は、自信を持って打席に立つことはできません。なのでA選手は打撃フォーム改良などに取り組む必要があるでしょう。

こういった技術練習はプロ野球でも積極的に行われているので、「何を当たり前のことを言っているんだ」と思う方もいるかもしれません。
しかし技術練習には終わりがありません。技術を磨き、それを使い、結果を評価し、改良のために練習する…この繰り返しです。

練習を継続すれば上手くなることぐらい誰でも分かっていますが、実際に継続できる人は少ないです。

こういった練習を継続するためには、自らの価値観を明らかにし、短期・中期・長期で目標を立てていく必要があります。

④練習から完璧を追い求めすぎている
A選手は練習から鋭い打球を追い求めています。詰まった当たりでは納得できません。これはつまるところ、「鋭くない打球はミスショットだ」と思っているということです。いわゆる完璧主義に近い考え方ですね。

この考え方をしていると、失敗が増えます。そして失敗をすると、誰でも自分の能力を疑ってしまうものです。完璧な打球以外全てに価値がないのなら、野球はこんなに面白いスポーツではないのに…。

まずはこの完璧主義の思考から逃れ、「自分の価値感にしたがって行動する」という真の成功を目指して行動していく必要があります。

⑤恐れや不安は感じてはいけないものだと思い込んでいる
A選手は、恐れや不安といったネガティブな感情を感じることはよくないことだと思っています。

しかし、恐れや不安といった感情自体には良いも悪いもありません。
恐れは弱さの表れではありません。能力も下げません。ですから恐れがA選手の足を引っ張ることもありません。正常な人間の自然な反応です。

ですからA選手の場合、ネガティブな感情に対する関わり方を変えていくのがいいと考えられます。

2.マインドフルネスについて学ぶ

A選手が自信を持てない理由は以下の5つ。

①そもそも1軍で打席に立った経験が少ない
②自分の能力を卑下している
③バッティングの技術が未熟である
④練習から完璧を追い求めすぎている
⑤恐れや不安は感じてはいけないものだと思い込んでいる

このうち②④⑤の要因は、A選手の考え方から来ている要因です。野球の才能は関係ありません。

つまり、考え方を変えれば改善できる要因ということですね。

そしてこの考え方、自分の思考との関わり方のテクニックとして重要になってくるのが、マインドフルネスのテクニックです。
マインドフルネスさえできていれば、自信の問題は解決したと言ってもいいでしょう。実際にマインドフルネスで運動のパフォーマンスが上がるなんて研究もあります。

ざっくり言ってしまえば、マインドフルネスとは「いまこの瞬間から心をそらさない状態」のことです。

マインドフルネスのテクニックとして代表的なのは以下の2つのテクニックです。

(1)嫌な思考と自分を切り離す
(2)嫌な感情を認識し、やり過ごす

(1)嫌な思考と自分を切り離す
例えばA選手は、自分の能力を卑下しています。自分の能力を皆が過大評価しているので、いつか失望されるのではないかという思考が頭をよぎっています。

そしてこんな思考に囚われていては、打席の中で自信を持つことはできません。

「そんなこと言っても、事実なんだからしょうがないです」なんてA選手は言うかもしれません。
しかし、事実か事実じゃないかはどうでもよくて、大事なのは、「その思考の通りに行動したら、自分の人生にメリットがあるかどうか」です。

なのでそういった心の声からと自分の切り離し、打席内での自分の行動に集中することが大切です。「恐れや不安は悪いもの」といった思い込みからも逃れることで、無駄に落ち込むことなく打席に入ることができます。

私ならA選手に「…と思った法」などの手軽な脱フュージョンのテクニックを教え、役に立たない思考に行動を支配されないよう、日常生活から練習するよう指導します。


(2)嫌な感情を認識し、やり過ごす
A選手のいいところは「恐れや不安を感じていることに気づいている」ことです。嫌な気分から抜け出すコツは「感情に名前をつけてあげる」ことなんて話もありますし。

では恐れや不安を感じた時にどうすればいいのかと言われれば、私はA選手にRAIN法をオススメします。

大切なのは、自分の感情に気づき、それを認め、そのとき自分の体の感覚を感じ、嫌な感情に囚われないことです。

例えば打席に立って恐怖を感じたとしたら、その感情が起きた時の自分の体の感覚を観察しましょう。このとき「恐怖を感じるなんて恥ずかしい」と心が言えば、その思考から脱フュージョンしましょう。そして打席内で集中すべきことに全集中する。これがマインドフルネスのテクニックを使った自信を持って打席に立つ方法です。

3.A選手の価値観を確認する

3つ目のステップとして、A選手の価値観を確認しておく必要があります。

なぜ価値観が重要かと言うと、自信を持って打席に立つには”練習”をする必要があるからです。それは野球のスキルの練習ももちろんですが、上記で述べたマインドフルネスのテクニックも日々練習しなければ身につきません。

と言っても選手も人間です。やる気のある日もあれば無い日もあります。健康的な生活をすれば痩せることは誰でも知っているのに、実現できている人が少ないからダイエットグッズは売れるわけです。

そこで私たちを正しい行動に導いてくれるのが「価値観」です。
価値観があるから必ずしも価値観に沿った行動ができるわけではありません。しかし、自分の価値観を知り、積極的に追い求める人とそうでない人では、自信に差が出ることは誰しもが納得するでしょう。

価値観を確認するにはパーソナルバリューテストが便利です。

例えばA選手の価値感は以下のものでした。

価値観:信頼 義務 勤勉 熟達

A選手がもし自信満々になったらなりたい選手は、「打撃技術を常に磨き、チームの主軸として頼れるバッター」といった感じでしょうか。

そんなA選手には、これらの価値感を使った目標を立てる必要があります。
逆に、A選手の価値感から外れた目標を設定してしまうと、A選手の成長を妨げてしまう恐れがあります。

例えば打撃コーチから、「ハングリー精神を持って他の選手を蹴落とすつもりでやれ」なんて言われても、それはA選手の価値感ではなく、コーチの価値感なわけです。そんな目標を決められてもA選手は当然やる気がでません。集中して練習に取り組めなくなり、選手としての成長がもたつくでしょう。

私が打撃コーチなら、A選手の価値観を明らかにしたうえで、一緒に短期・中期・長期の目標を立てていきます。

4.目標を定める

価値観を確認したところで、最後は目標を立てていきます。

私ならA選手にこんな目標設定をすると思います。

価値観  :信頼 義務 勤勉 熟達
将来像  :打撃技術を常に磨き、チームの主軸として頼れるバッター

短期の目標:鏡を見ながら、体を捻り過ぎてしまう打撃フォームを修正する
中期の目標:自分よりも打撃技術があるバッターと積極的にコミュニケーションをとり、意見交換をする
長期の目標:毎試合自分なりの打撃ノートをつけ、うまくいっていることや改善点を3か月ごとにまとめ、打撃コーチと話し合う

短期目標は数日~数週間、中期目標は数週間~数か月、長期目標は数か月~数年を目安に、できるだけ具体的な目標をA選手とともに立てていきます。

打撃練習や試合中には嫌な思考や感情が出てくることもあるでしょう。しかし、それは人として当然のことなので、マインドフルネスのテクニックで受容し、今この瞬間の練習・打席に集中しましょう。そうすることによって、A選手の成長も早まるはずです。

価値観と矛盾した行動をすればするほど、選手は自分に自信が持てなくなっていくはず。自分の価値観にあった目標を達成していくことで、練習にも身が入り、自信を持って打席に立つことができるのです。


まとめ

カラガラ打撃コーチがA選手に、「自信を持って打席に立つ」ためにアドバイスするなら、

・「自信を持って打席に立てないのは、役に立たない思考や感情に振り回されているから」と教える
・マインドフルネスのテクニックを練習し、打席内で集中できるようになろう
・野球とマインドフルネス、両方とも持続して練習しよう
・持続して練習するために、自分の価値観を明らかにしてみよう

といったアドバイスをするかなというお話でした。

近年ではメンタルトレーニングの重要性もスポーツの話題で聞くようになりましたが、一方では「この選手はメンタルが強い」などのように、一種の才能のような扱いをされている場面も多々見かけます。

私がコーチなら、プロとしてスカウトされている選手たちにはある程度のスキルがすでに備わっているはずなので、マインドフルネスなどのテクニックの練習時間を他球団より多くとるかなと、このnoteを書いていて思いました。

「もっとマインドフルネスについて知りたい」という方は、『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる』という本が分かりやすかったのでオススメです。というかこのnoteはこの本を読んで思いつきました。どうぞよしなに。


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