マンション理論2階 この腕は自由
腹腰は1階、胸は2階。身体を上へと積み上げていくように考えるのがマンション理論です。
腹腰は我慢が楽しく、得意です。2階は腕があり、動き回る楽しさを教えてくれる。それぞれ、特徴が違います。「同じ身体」であっても、性格は違うのだ、とわかります。
世間には性格診断が山ほどありますが、身体から探る性格診断もありそうです。
私の中には心身一如という大前提があります。
多くの人は、清らかな心を武器に健全な肉体を求めますが、私は逆です。
迷う心を追い払うために、身体を徹底的にコントロールする、そんな気持ちで生きています。
私自身の生来の性格は臆病ですが、それは腹腰1階にいる時間が長かったから。
問題の解決方法を腹に力を入れ、腰を下ろし、しっかりと頑張り、何とか生き延びる、という選択をしてきました。
しかし、時代は変わり、腹腰1階の力では生き抜くのが難しくなりました。
自分の中のやりたい事があっても、世間の同調圧力が強く、耐えきれなくなってきているのです。
気持ちの中ではそんなのに心負けるのは身体が弱いからだ、というのもありますが、身体は精神力では何ともならない「限界」を持つものです。
どれだけ踏ん張っても、自動車の衝突では負けてしまいます。この「限界」があるからこそ、それを自覚して、上手く「諦め」、次の世界へと行けるのではないか、と思います。
人は、弱く、負けて、小さくなる運命を持っている、そんな気がしてなりません。
腹腰の呪縛から抜けでた先にあるのは胸の世界。
胸には腕があり、お腹を伸ばせば、胴体から腕へと主役を渡す事が出来ます。
胴体はしっかりとして、「そこにいる」という事を求められますが、腕に求められるのは真逆、どれだけ中でいられるかを求められます。
力仕事をしなくなったせいで、身体の使い方を忘れてしまい、腰痛、肩こり、四十肩、五十肩になる人も増えました。
可動域が減るのはいいんです。大切なのは、動かなくなってきたその瞬間、もうダメだ、老いてしまった、と諦めてしまう事です。
腕の仕組みを自覚したなら、ちょっとぐらい肩の動きが悪くなろうが、まだまだいける、とわかります。
痛みが出て、可動域が狭くなっていくのは、そもそもの「使い方」を知らなかったからだ、とわかります。
これは、腹腰の時も一緒です。もう耐えられない!と思ってしまうのは、腹に力をどう入れていいかわからないから、腰椎それぞれの使い方を知らないからです。
上手くいかない事があるからこそ、研究意欲は出てきます。身体はこちらがどれだけの欲を持っても、ちゃんとそれに応えてくれるほど可能性を持っています。
求めて求めて、ダメなら諦め、次の世界へ。
今、1階から2階へと話を進めていますが、私は、この先に、3階、4階、5階、6階、さらに地下にまで可能性を伸ばしています(笑)。
これまで何十年も身体を探っていますが、本当に楽しい!そして、これを誰かに頼らず、忖度せずに、一人稽古で探れる事を縁ある人に伝わってほしい、と願っています。
さて、お腹を伸ばせば、胸は自然と張られるようになり、腕は背中側へと落ちていきます。
この時、鎖骨にらせんを見つけられたなら、それをさらに加速する事ができます。ただ、鎖骨の意識はなくても、お腹を伸ばすだけでも日常を過ごす程度であれば、十分に楽しめますので、気が向いたなら、試してみてください。
背中に落ちた腕は腕から独立して動きます。
胴体という親から離れ、やっと独り立ちができるのです。
ただ、親離れは簡単ではありません。胴体も子に執着し、子離れをしません。ちょっとずつ、時間をかけて、離れているのも当たり前、としていくしかありません。
胴体から分離した腕の使い方ですが、まずは「肩」、「肘」、「手首」と分けて観察をするのがおすすめです。
次回、肩肘手首について、書きたいと思います。
【不定期稽古のご案内】
「甲野善紀先生の名古屋稽古」
稽古日時:7/21(日) PM1:00~PM3:30
稽古場所:浄泉寺
会場住所:名古屋市緑区鳴海町字上中町9
アクセス:名鉄本線鳴海駅から徒歩5分
参加費:8000円
参加資格はありません。見るだけ、聞くだけでも参加可能です。
服装自由、持ち物自由、受講スタイルも自由だし、入退室も自由です。気楽にご参加いただけます。
申し込みはウェブサイトから。
http://www.karadalab.com/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?