1967年春のオースター
いろいろやることが山積みなのに、図書館に寄って見つけてきたオースターの一冊。手にとってざっと目を通していたら、ふと表紙の裏に目が釘付けになった。そこには販売時に巻かれていた帯の一部が貼り付けられていた。
一九六七年の春、私は彼と初めて握手した
そしてこの小説は、ここから始まる。オースターが47年生まれなので、ちょうど彼自身が二十歳の頃の設定ということか。自伝的フィクションが多い作家なので、似たような設定のものも数冊読んだけれど、この始まり方は気に入った。なぜなら、私が生まれたのが正にその頃だから。
三十代までに、多くのイベントで雨を降らせてきた私は、自他共に認める完璧な雨男だった。そんなある日、押入れを整理していると、手のひらに乗るほどの小さな桐の箱が出てきた。蓋を空けて中を確認すると、そこには干からびた臍の緒が薄い紙に包まれて入っていて、裏蓋には私の生年月日と午後二時出生と明記されていた。
後日ネットで過去の天気情報をチェックしてみると、その日その時間帯の大阪は意外や意外、なんと快晴。そう私は日差しのさす麗らかな春の昼下がりに生まれたのだった。雨男が雨降りの日に生まれるとは限らないとはいえ、この事実は僅かながら私の心を軽くした。
そういえばテスラは雷雨の夜に生まれたという話だが。
ということで、この年末年始は一九六七年の春に想いを馳せながら過ごそうとおもう。けっして現実逃避などではなく。