品質マネジメントシステムとは何か?初心者目線でのボトムアップの説明

「品質マネジメントシステム」という言葉を初めて見る方のために、簡単なゆるふわ導入をしておきます。QMSの重要な原則のうちのいくつかは、意図的に割愛しています。


直感的な理解

導入

品質マネジメントシステムとは、ISO9000や、業界ごとの法規制により定義されている用語です。簡単に導入するため、まずは「成果物の品質を管理するための会社のしくみ」と了解しておくとよいでしょう。

この仕組みは、主にしごと(プロセス)の組み合わせによって成立っています。この中に含まれる、製品実現プロセス群によって、顧客のニーズは、製品として最終的に納品されます。
QMSの内部には、これのほかに、プロセスを管理するための様々なプロセスが用意されています。

最も基本的なQMSの機能は、ニーズを満たす製品を納めることです。

実際には、会社は様々な事情を考慮しなければならないため、QMSは複雑になることが多いです。内部の事情、外部の事情、管理上の都合に分けて、もう少し踏み込んでご紹介します。

内部のしくみ

プロセスアプローチ

QMSの計画・運用・管理には、「プロセスアプローチ」が適用されます。このアプローチとは会社の機能が「プロセス」の組み合わせであると整理し、それぞれのプロセスに対して適切な権限・リソースの配分と、成果の管理を行う考え方です。

活動を、首尾一環したシステムとして機能する相互に関連するプロセスであると理解し、マネジメントすることによって、矛盾のない予測可能な結果が、より効果的かつ効率的に達成できる。

JIS Q 9000:2015 2.3.4.1

QMSの内部には、複数のプロセスが存在します。それらは順次つながっていて、資源を消費しながら、最終的な製品に向かっています。

個々のプロセスには、インプットとアウトプットが定義されています。言い換えるならば全ての「しごと」には始まりと終わりが定義されています。また、プロセスの実施に当たっては資源が準備されています。資源とはいわゆるヒト、モノ、情報と了解しておくとよいでしょう。例としては、設備、人的資源、購買製品、作業環境、原材料、文書などです。
資源を用意するためのプロセスも、必要に応じて整備されます。例えば、製造工程を設計するプロセスや、要員を訓練するためのプロセスや、設備の管理やメンテナンスに関するプロセスがありえるでしょう。
製品に直接関わるものを製品実現プロセス、そうでないものを支援プロセスなどという場合があります。

プロセスとは「しごと」の単位。インプットとアウトプットは定義されており、必要に応じて資源を用いて(消費して)、実施されます。


プロセスの配置と関連は、会社によってさまざま。

QMSの運営

経営者の関与(リーダーシップ)

経営者の関与(トップマネジメントによるリーダーシップ)は、QMSの重要な要素です。従業員から見れば、経営者は会社運営の責任者ですから、全知全能を期待してしまいがちですが、実際はそうではありません。
最低限必要な経営者の責任として、やや漠然としていますが、ISO規格では次のものが要求されています。

  • 会社の目的と戦略的な方向性にしたがって、QMSの方針を確立し、関連するプロセスにおいて目標を確立し、それに取り組ませる。

  • 法規制や規格へのQMSの適合の重要性を認識させる。

  • 人々の積極的参加の状況を作り出す。

  • 適用される法規制要求事項を理解していることを確実にする。

  • プロセスの実施に必要な資源を配分する。

  • 責任と権限の割り当てを確実にする。また、管理層の役割を支援する。

  • QMSの成果をレビューする。(マネジメントレビューの機会をもつ。)

  • 改善を促進する。

一般に、経営者は実務を担当しない一方で、会社の活動の成果について説明責任を負っています。

システムの管理

システムの運営は、PDCAモデルに従って行うことになります。

  • 計画(Plan) 経営者の方針、目標に従って、必要なシステム及びプロセスが計画(準備)される必要があります。プロセスの配置、関係性は、会社の裁量であることを忘れてはなりません。

  • 実施(Do) プロセスの実施は、最良の方法によります。十分な設備、人員により、統一された手順が実行される必要があるでしょう。

  • 監視測定(Check) プロセスのアウトプットが、計画や目標を満たしているかどうか、判定します。また、内部監査を実施して、当事者以外の目を入れる必要があります。さらに、これらの情報は、マネジメントレビューにおいて経営者の知るところとなります。

  • 改善(Act) プロセスを実施した結果が思わしくなければ、または外部の状況が変われば、適切な判断によって随時改善が行われていくことになります。

上記の取り組みにより、自浄作用をもつ、社外の状況に対応し続ける、堅牢なQMSが存続します。

QMSにはPDCAが適用される。

外部との関係

QMSは世界から孤立しているわけでは無いので、外部との接点(インターフェース)においては、外部との関係を考慮する必要があります。個別事例は多岐にわたると思われますが、代表的な観点をご紹介します。

法規制への適合

法規制への適合は、ビジネス上の最重要事項です。規制のあり方は、国・業界によって様々です。例としては次のようなパターンを挙げられるでしょう。

  1. 製品に対して特定の基準への適合を要求するもの

  2. マネジメントシステム自体に対して基準適合が要求されるもの

  3. 特定の種類の記録の保持が要求されるもの

  4. 規制当局への定期的な報告が要求されるもの

例1 電気用品安全法は、製造業者にその製品を技術上の基準に適合させることを要求しています。
例2 医薬品医療機器等法は製造販売業者のにQMS基準への適合を要求している。

会社はQMSを確立するにあたり、適用される法律が満たされるように、配慮しなければなりません。

顧客との関わり

典型的には、顧客のニーズが、例えば「注文」などの形で、最初のプロセスインプットになるでしょう。多くの場合は「製品」としてのアウトプットは、この顧客に納品されるでしょう。
顧客とのインターフェースは、顧客の都合を考慮して計画する必要があります。つまり、顧客からの注文を、どのようにどの程度受け付けるのか、製品をどのように納品するのかなどについてです。

供給者との関わり

「製品」を作り出すのに、供給者の関与が必要である場合には、供給者との関係を考慮する必要があります。

  • 購入するものは何か

  • その納期はどれほどか

  • 供給者をどのように選定し、管理するか

  • 注文の形式をどうするか、どこに納品させるか

などの観点を考慮する必要があるでしょう。

おもな外部の利害関係者には、顧客、供給者、法規制(当局)が考えられるでしょう


より包括的な理解を求める方に

QMSの要求事項には、今回紹介した以外にも多くの要素が含まれています。包括的な理解を求める方々は、ぜひISO9001:2015(JIS Q 9001:2015として和文が利用可能です)を参照してください。
また、この規格に関する講習が、コンサルテーション会社、認証機関などにより多数開催されています。それなりの費用がかかりますが、お勧めいたします。


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