品質マネジメントシステム審査員のおしごと
はじめに
皆様は品質マネジメントシステム(QMS)の認証登録審査を経験したことはありますでしょうか? ISO9001などの認証を取得している会社では、およそ1年に1回、「外部監査」などのイベントがあり、「スーツの人」が来て色々と調査しているのをご存知ではないでしょうか。
彼らは「認証登録機関」の審査員であり、中立な立場からの「第三者監査」を仕事にしています。ここでは、私の経験をもとに、審査員のおしごとをご紹介したいと思います。
品質マネジメントシステムと認証登録機関
品質マネジメントシステムは、「品質を確立して維持するための会社のしくみ」といった意味合いです。ある会社や団体の中の、品質に関する機能を維持するしくみを、品質マネジメントシステムとよんでいます。
認証登録機関は、利害関係のない立場でこのマネジメントシステムを評価して、認証登録をする会社、団体です。登録証は公開されますので、遠く離れた会社や、たくさんある仕入先の信用をある程度確保できるのが、認証登録のメリットです。認証を受ける会社は、認証登録機関に料金を支払って、およそ年に1度の「審査」を受けて、認証登録を受けることになります。
審査員のおしごとの流れ
審査員とプロジェクト(案件)の関わりは、計画→準備→実施→報告、フォローアップで構成されます。以下、具体的な手順は認証機関によって異なりますが、私の経験から記載していきます。
審査の計画
このフェーズでは、まず顧客の生業と認証登録を希望する内容から、3年間の審査の時間割を作成していきます。顧客の担当者と連絡を取り、品質マニュアル、組織図、製品の情報などを評価しながら、毎年必ず審査する部分と、そうでない部分を分け、さらにインタビューの順番を決めていきます。
審査の日数は、世界共通の認定基準により決められます。審査員は、この日数をすべて使って、どのトピックを、どの順番に、何時間聴取するかを決めます。また、大きな顧客ですと、複数人の審査員で訪問することがありますので、それぞれの審査員に時間割を割り当てていきます。
会社のWebサイトやインターネット上の情報も、このフェーズで確認します。もしリコールや行政処分などの兆しがあれば、このトピックに割り当てる時間を増やします。
一つのトピックに複数の部署が関係しているのが普通ですので、計画が出来上がったら、顧客に関係者の招集を依頼し、都合の悪い部分を細かく調節します。
審査の準備
計画が定まったら、審査の準備をします。現地までの移動と宿泊の手配、昼食の入手方法、審査チームのブリーフィングなどを行います。
審査の実施
いよいよ審査当日です。時間に少しの余裕を持って顧客を訪問します。初回会議が終わったら、インタビューが始まります。聞いたお話、見た文書・記録、現場の観察は、逐一ノートをとっていきます。ノートはPCに打ち込んだり、紙に記録したり、スマートデバイスを使います。
(この後の作業を考えるとPCが一番望ましいのですが、クリーンルームや作業現場にはPCが持ち込みにくいことも多いです。)
審査報告書は、審査中に仕上げていきます。最終会議で結論をお伝えして、異論がなければ、審査への協力にお礼を申し上げて、審査終了となります。もしも不適合が見つかっていれば、その内容と是正処置の方向性について意見交換をしておきます。
審査の報告、フォローアップ
審査報告書を顧客に提出します。もし不適合が発見されていれば、是正処置計画書を顧客から受け取り、内容を評価して、不十分な点があれば変更をしてもらいます。これらの仕事が終われば、社内のレビュー部門に審査書類を引き継ぎ、認証書を発行してもよいか、審査してもらいます。ここまでのフローで、良い仕事ができていれば、つつがなく認証書が発行されます。
認証機関の内部資料には、注視を要するプロセスや、組織構造、ホテルの情報などを含めておき、次年以降の審査がスムーズに計画できるようにしておきます。
認証機関との関わりが、長くなるに従って、審査も少しずつスムーズになっていきます。
生活スタイル
審査員は、上で紹介したプロジェクトを複数同時に担当して、出張と書類仕事を行っていきます。また、審査の合間に教育訓練を受けたり、経費の精算をしたり・・・という雑務もあります。フルタイム勤務の審査員なら、月に10日、年に120日ほどの実地審査を行うと思いますので、勤務日の半分くらいは出張、ということになります。
おわりに
今回は品質マネジメントシステムの審査員のおしごとをご紹介いたしました。もし興味を持たれた方は、各認証機関の採用情報をチェックしてみてください。求人によっては、ISOを読んだことがなくても応募できる場合があります。
今後は、審査員が何を考えているのか、何を知っているのか、何を知らないのかなどなどについて書いていきたいと思いますので、興味を持たれた方はぜひフォローをお願い致します!
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