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松雪泰子さんについて考える(64)映画『ホタルノヒカリ』

松雪さん出演シーンの充実度:6点(/10点)
作品の面白さ:6点(/10点)
公開年:2012年
視聴方法:U-NEXT

※ネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。

ドラマ版は2010年の放送当時少し観ていた気がするが、記憶が曖昧。

「干物女」という、家でジャージ姿でダラダラ過ごす女性像をテーマにした作品。

映画版の舞台はイタリア。「干物女」こと雨宮蛍(綾瀬はるか)と、その上司かつ結婚相手の高野誠一(藤木直人)が、新婚旅行として同地を訪れる。

映画版にだけ登場するキャラクターとして、莉央(松雪泰子)とその弟の優(手越祐也)が出てくる。

莉央はイタリアに住む干物女という位置づけ。ジャージ姿で、髪はボサボサで、言葉遣いが荒い。

言葉遣いが荒いといえば、映画『デトロイト・メタル・シティ』の社長役だが、完全になりきっているように見えたあの役と違って、今回の場合、役そのものに捉えどころがない気がして、しっくり来ていない感じがした。干物女であることと、言葉遣いが荒くなることの必然性・因果関係は? 

それはさておき、特筆すべきは、上記4人がレストランのテラス席で会食するシーン。

莉央(松雪)は、自身が干物女であることを糊塗するために黒ワンピースに着替え、髪を整えた出で立ちで登場し、弟(手越)に誠一(藤木)を婚約者と偽って紹介する。干物女の姿よりこちらの方が断然しっくりくる。イタリアの街並みと併せて、一幅の画になる。

このシーンの中で、誠一に口裏を合わさせるよう無言の圧力をかける瞬間がある。遠い目というか、目を細めるというか。この独特の表情は、まさに『ビギナー』最終回のそれ。

『ビギナー』(2003年)最終回では、二つのシーンで、森乃望(松雪泰子)と桐原勇平(堤真一)が互いにこの遠い目を向ける。ユーモラスで印象的な表情なので一度観たら記憶に残るが、まさか『ビギナー』以外で見られるとは。

しかし、『ホタルノヒカリ』の脚本が、『ビギナー』と同じ水橋文美江さんと知って納得した。きっと、ト書きがそうなっているのだろう。他の水橋作品でも同じような演出があれば間違いないと思うが、どうだろう。

個人的にはこの一連のシーンを観られただけでもよかった。

映画後半ではイタリア各地を蛍(綾瀬)と莉央(松雪)が巡るシーンが出てくるなど映像的見所はあるし、菅野祐悟さんの劇伴はいつもどおり冴えわたっていて、水橋さんらしい心温まる会話劇には、ほろりとくる。

なお、同じ2012年、大河ドラマ『平清盛』でも藤木直人さんと共演している。かつては、『なにさまっ!』(1998年)でも。

*このシリーズの記事一覧はこちら*

*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

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