松雪泰子さんについて考える(99)好きな作品
過去の出演作品のうち、配信あるいはDVD化されているものはほぼ全て観たと思う。
しかし、90年代作品や単発スペシャルドラマ等の多くは観る手段が無く、例えば『白鳥麗子でございます!』(1993年ドラマ版)、『ベストフレンド』(1995年)、『硝子のかけらたち』(1996年)、『勝利の女神』(1996年)、『名探偵 保健室のオバさん』(1997年)などの有名作は未視聴。
いつか何かの機会に運よく再放送されるか、権利関係が解消されて配信が始まるかを、気長に待つつもり。出演者だけでなく主題歌の権利が壁になっていそうなものもあり、難しいかもしれないが。
それは仕方ないとして、これまでに観て感想を書いてきた作品の中で特に気に入ったものを、現時点の考えとしてまとめておきたい。
▼作品の内容も松雪さんの出演シーンも特に気に入った12作品
10作品にしようと思ったものの、選びきれず12作品に。
1位:『ビギナー』(2003年、フジテレビ)
もともと好きな作品だったが、他の出演作品を観た後も変わらず最愛の作品。
2位:『なにさまっ!』(1998年、TBS)
一人二役のような演じ分けが素晴らしかった上、ハートフルでコメディタッチな内容もオーソドックスで良かった。
3位:『救命病棟24時』(2001年、フジテレビ)
香坂たまきのキャラクター性に尽きる。気が強すぎるが憎み切れないツンデレお姉さん。
4位:『きらきらひかる』(1998年、フジテレビ)
レストラン「アイーダ」での4人の軽妙洒脱なグルーヴ感。
5位:『マル秘の密子さん』(2024年、日本テレビ)
御伽噺的・童話的なセットや演出に、サスペンスを掛け合わせた実験作。多彩な表情・声色・衣装が楽しめる役は、見所が多すぎる。
第6位:『初情事まであと1時間「ビフォア」』(2021年、MBS)
煽情的なタイトルはさておき、大九明子監督の文学的な脚本と映像センスに脱帽。会話に出てくる同級生の名前の意味。終盤、車中で微笑する横顔が秀逸。30分ながら濃い。何度でも観れる。
第7位:映画『甘いお酒でうがい』(2020年)
同じく大九監督の文学性が発揮された、静かな佳作。シソンヌじろうさんの原作小説と併せて、含蓄が深い。川嶋佳子が抱える“悲しみ”。ただの「女性の日常を描いた映画」ではない。
第8位:『半分、青い』(2018年、NHK朝ドラ)
ストーリーが少し突飛だが、要所要所の内容に心動かされた。普通の“お母ちゃん”役は貴重。終盤の母娘で流す涙のシーンは名演技。
第9位:『5人のジュンコ』(2015年、WOWOW)
笑顔は皆無でシリアスな演技ばかり続くが、歴代屈指の重低音ボイスに聞き惚れる。仕事が“できる”感がカッコいい。ミステリーとしても面白い。『ビギナー』以来初、ミムラ(美村里江)さんとの共演。
第10位:『砂の器』(2004年、TBS)
原作に負けないよう、出演者もセットもロケも音楽も、かなり予算がかかっていそう。その甲斐あって見応え十分。号泣演技はさすが。
第11位:映画『容疑者Xの献身』(2008年)
堤真一さんとの“競”演が見応えある。原作ファンには賛否両論のようだが、映画だけを観る限り、意外性ある秀作ミステリーだと思う。
第12位:『真夜中の雨』(2002年)
織田裕二さん、長塚京三さん、阿部寛さん、石黒賢さん、渡辺いっけいさんなど豪華キャストのサスペンス。ザテレビジョンのドラマアカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。
ヒット作の映画『フラガール』(2006年)、『Mother』(2010年)も良いが、個人的には上記の作品たちの方が。
大九明子監督の2作品は深い。良くも悪くも、一度観ただけでは咀嚼しきれない。最近放送されたNHKドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(かぞかぞ)は、いつか観る予定。
▼作品自体よりも松雪さんの役が良かった作品
映画『MONDAY』(2000年)
セリフが無いのに強烈な存在感。妖艶な白ドレス姿、蠱惑なダンス。堤真一さんとの初共演?
映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)
メタルを愛するバイオレンスでお下品な社長役。同年『容疑者Xの献身』の儚げなお弁当屋さんとのギャップに瞠目。
『ファースト・キス』(2007年、フジテレビ)
言葉遣いの上品な心臓外科医役は見所が満載。何よりも色気が…。
『平清盛』(2012年、NHK大河ドラマ)
美福門院得子の嫌味・挑発が痛快だった。悪役は少ないため貴重。
『負けて、勝つ~戦後を創った男・吉田茂~』(2012年、NHK)
出番は多くないが見所多数。声の使い分け、目の泳がせ方。着物姿は羞花閉月。脚本は『Mother』の坂元裕二氏。
▼松雪さんの役以上に内容が特に面白かった作品
『邪神の天秤』(2022年、WOWOW)
常に難しい表情をしているため、役柄としては他作品ほどの見所は無いと思ったが、作品自体はスリル満点で、真犯人探しのサスペンスに深い没入感を味わえる。ロケ撮影も見応え十分。
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なお、舞台作品に関しては、生で観劇したものとDVDやCS放送等の映像で視聴した作品とでは比較できないが、『無駄な抵抗』(2023年)は特に素晴らしいと思った。イキウメ前川知大さんの作品は、あまり映像化されていないようで、『ゲゲゲの先生へ』(2018年)などのように観たくてももう観られない作品が有るのはもどかしい。
他にはケラリーノ・サンドロヴィッチさん作の『東京月光魔曲』(2009~2010年)、『世界は笑う』(2022年)が良かった。昭和好きにとっては特に。
劇団☆新感線では、小ネタやおフザケを排した『吉原御免状』(2005年)の一択。19年経った今年、2024/10/25からゲキ×シネで上映される。
『吉原御免状』以外の新感線に関しては、ウケ狙いシーンが個人的にどうしても面白く感じられないため、松雪さんが出ていない作品も2~3作品ほど会場で鑑賞したことがあるが、あまり好きになれない。ド派手なセット、手の込んだ衣装、生バンド等はすごい(観客を楽しませようとする気概が立派)と思うが。
岩松了さんの作品は、私には難解。岩松さんは役者として好き。