雑感(02)夏の終わり
森山直太朗さんの「夏の終わり」を聴く。
まだ梅雨すら訪れていないが、今日のように夏っぽい暑さの日に聴くと、詩情が増幅する。この曲はリリース当時から好きで、季節は関係なく、思い出したときに聴くのが習慣になっている。
歌ネット:https://www.uta-net.com/song/17486/
晩夏のうら寂しい雰囲気を感じさせるサビの部分が有名だが、“貴方”とは誰か。
この歌は、歌詞から引用した枕詞として「焼け落ちた夏の恋唄」と呼ばれる。「焼け落ちた」は婉曲的な表現だが、ようは戦争によって不帰の客となった“貴方”に向けた歌である。したがって、反戦歌といえる。
反戦歌だが、直接的な表現は使われていない。ただ、“貴方”を失った悲しみが重ねて吐露される。
これらの部分も印象的だが、“貴方”との想い出を滲ませるAメロの出だしが特に情緒豊かで、2人の睦まじい後ろ姿が目に浮かぶようである。
森山直太朗さんが歌う曲は歌詞がちゃんと「詩」になっている気がして、好きな歌がいくつかある。本人作詞だけでなく、御徒町凧さんが作詞提供した曲も含めて。
正直、生粋のファンというわけでもないが、それでも、2019年のツアー「人間の森」の東京・NHKホール公演には足を運んだ。「夏の終わり」ほか、目当ての曲が沢山聴けて満足した。「どこもかしこも駐車場」は、ふざけた名曲。
とにもかくにも、「夏の終わり」は正統派の名曲だと思う。将来世代の人たちにも歌い継いで、聴き継いでいってほしい。
扇風機の風が、柔らかく吹き抜ける夕べである。