アニメ「ポケットモンスター」への思いを綴る

 アニメ「ポケットモンスター」において、長年主人公を務めてきた「サトシとその相棒のピカチュウ」が、ついに主人公としてその世界を見せていくことから卒業する。僕としては、「そうか……」という感じで、悲しいとか辛いとかは感じていない。むしろ、充実感のある物語を読み終えたような、少しの寂しさと満足感を味わうような感じであった。

 生まれて物心ついた時から、「ポケモン」はずっとそばにいた気がする。ゲームボーイを起動して、ポケモンタワーでゆうれいと出会い、金銀では始めて色違いを捕まえ、ニンテンドー64で接続してテレビ画面に写していた。アドバンスの頃にポケモンのゲームからは一時期離れてしまったけれど、その思い出はポケットの中からずっと顔を出していたのかもしれない。アニメの方はベストウィッシュの頃にちょっと離れていたけれど、リザードンが再登場した時に、レポートを読み込んで物語を再開するように復帰した。そしてXYもサン・ムーンも、そして新無印も、ずっと好きで見ていた。サトシとセレナの関係にドギマギしたり、ニャビーの成長に涙したり、そしてサトシの優勝を喜んだり……。でもどこかで「バトルものである以上、バランスを取ることが難しくなったのではないか」と思うことも少なくなかった。

 サトシのバトルスタイルは、「ダイアモンド・パール」の時点で既に完成している。実力もかなり高くなっていて、どこかで調整しないと「ゲームとして考えるバランス」とかなり離れてしまう。かなりの実力となってしまったが物語を終えさせる覚悟が無かった頃は、ダークライなどのポケモンで無理やりサトシを負けさせるような感じになったり、実力をある程度リセットさせたり、後一歩のところで準優勝だったりと多少煮えきれないところはあった。
 けれど、「サン・ムーン」の頃にリーグチャンピオンにさせたことで、「きちんと終わらせる覚悟」が既に決まっていたのかもしれない。これ以上行き着く先は、「世界トップのトレーナー」、そして「ポケモンマスター」だからこそ。
 新無印において、無敗のダンテに勝利して「世界トップのトレーナー(チャンピオン)」となったからこそ、残された道筋は「ポケモンマスターとは」ということになる。そして、年が明けた2023年から、最終章となる「ポケモンマスター編」が始まる。

 バトルものだからこそ、頂点を取ってしまえばその先は無い。けれど、「ポケットモンスター」はポケモンバトルが全てではない。ポケモンと一緒に過ごし、成長し、時には離れることもあるけれど、どこかでまたふと顔を出すかもしれない。
 競うバトルもあるけれど、ラペン博士がポケモンと人に絆を見出し、オーキド博士がポケモンを研究し「ポケモンと出会う楽しさ」を見つけ、ウツギ博士がポケモンのタマゴによって「育てることの楽しさ」を広め、オダマキ博士によって「ポケモンと一緒に冒険する楽しさ」を見出し、ナナカマド博士が「ポケモンの進化と強さ」を見せることでバトルをより深くし、アララギ博士たちが「人とポケモンの関係」を見直した。プラターヌ博士はポケモンの強さを見出すのと同時に「キズナ」を大切にし、ククイ博士は「この世界で一緒に暮らすポケモンという存在を大切にしたい気持ち」を育み、マグノリア博士とソニア博士で「ポケモンたちと一緒に未来をつなぐ」ことの大切さを示した。
 ポケモンたちで競技や競争をしたり、一緒に過ごすことでポケモンたちの心を取り戻したり、写真に収めたり、ポケモンになって友だちになったり、ポケモンコンテストで魅力を引き出したり、一緒に映画を撮影したり、秘密基地を作ったり、カフェをお手伝いしてもらったり、カレーやサンドイッチを一緒に食べたり……。そこにあるのはポケモンは「一緒にバトルするだけではない大切な存在」であり、バトルだけが全てではないということだ。タマザラシが好きで「ゼンリョク」を出す方もいるし、ポケモンがいるからこそ「がんばる姿」になれる人もいる。
 そんな、大人も子どもも男の子でも女の子でも、ポケットの中にいつだってあるファンタジーの中で「怒ったり泣いたり笑ったり」と色々なことを共有していく。そこには「勝ち負けよりも大事な何かがきっとあるはず」だからこそ

 改めて考えると、「ポケモンマスター」は純粋にバトルが強いだけのトレーナーではないと思う。人とポケモンを繋ぎ、大切な存在として一緒に過ごしていくような関係にしていくような存在なのかもしれない。きっとみんなが、誰しもがポケモンマスターになれる可能性がある。ポケモンと人を結びつけて、一緒に過ごして、大切な存在として一緒にいる。
 ポケモンバトルだけにフォーカスされるのではなく、一緒に過ごし、大切な存在として理解する。それが、新無印で伝えたかったことなのかなと個人的には思う。

 サトシとその相棒のピカチュウにフォーカスした物語は後わずか。彼らのつけた道が未来を創り、この2人で駆け抜けた虹は今でも輝いている。「さよならは悲しいイベントじゃない」からこそ、大地をふみしめてどこまでも行ってほしい。

 だからこそ、本当にアニポケに出会えてよかったし、「両手一杯のありがとう」を、スタッフや声優、携わった全ての方に送りたい。151に留まらない、まだまだたくさんある喜びや夢、思い出、それらに出会わせてくださったみんなのあたたかさをちゃんと持って過ごしていきたい。

 新シリーズには不安の1つや2つ、3つはあるけれど、見たことない、やったことないを恐れないでチャレンジしてほしい。失敗したっていいし、はじめましてはいつだってはじめてだから、躊躇うことなんてない。そういうことを伝えてくださったからこそ、「大丈夫、大丈夫」だと信じている。


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