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IQが160の人工知能は商業化できない

AGI(Artificial general intelligence)の日本語訳はすっかり「汎用人工知能」が定着しましたが、スゴく違和感があります。英語の順番どおりなら人工汎用知能なのに、なぜか順番が入れ替わっている。AGIは定義が曖昧で、プロのAI驚き屋は、人知を超越したほうをいうし、AIの専門家は、都市いっこぶんの電気を使わずに学習できる、乳幼児が言葉や五感に対して持っている最小の原理から知性を育める、といったところがAGIだと思います。いずれにしてもAGIは明確な定義がなく、使う人の立場によって大きくブレていますが、チャットボット型のユーザーインターフェイスのままでも、人間と会話しているのとまったく同じように動作するならAGIの初期段階と言ってもいいでしょう。現時点の生成AIは数学が苦手ですが、数学の問題を解ける(論理的思考)ようになると、IQ換算で160くらいまではあっという間にたどり着くと思います。

さて、IQが20離れていると会話が成り立たないという俗説があります。英語圏だと「IQが30違うと」と言われる場合もありますが、誰の研究なのかどこにも出典がないので確認のしようがありません。しかし、クラスで一番頭のよい出木杉君のIQが120、ジャイアンのIQが90だとすると、確かに両者の会話は成り立たなそうです。根拠はないけれど、感覚的に何となく合っていそう、というのがこの俗説の根拠なのでしょう。

ここでふたつの話を混ぜ合わせます。IQは100が平均で70〜130までの人が全体の95%を占めます。もしIQが160のAGIが出来ると、約99%の人間と話がかみ合わないAIです。孤独なAIです。ほぼすべての人と会話が成立しないAIはビジネスになりませんから、AGIの開発は130くらいで打ち止めになるはずです。

人間のIQは160が測定上限ですが、機械に限界はありません。もしIQ600のAIを開発したら、どうビジネスにすればよいでしょうか。自分なら、20ずつIQの低いAIを開発します。IQ600のAIのご託宣は、IQ580のAIが解釈する。580は560がというふうに段階的に「結局どういうことなのか」を繰り返すことで、IQ70の人にもIQ600のAIが考えたことが理解できるようになります。「パーソナルアシスタント」とは、自分よりIQが20高いAIのことになるんでしょう。「え、お前のパーソナルアシスタントのIQ110? 低くぅ 俺160」みたいなマウンティングをする未来が見えました。