脳内夢睡眠

カーテンから差し込んだ、日の光で目が覚めた。クリーム色のカーテンが夕日で茜色に染められていた。目が覚めたときは朝だとおもっていたが、夕方まで眠ってしまっていたみたいだ、日の光で目が覚める…それ以前にこの部屋には朝日なんてさしてこないじゃないか。
 そんなことを考えているあいだこめかみにドリルで穴をあけられているようなような痛みが頭の中を走っている。昨日飲んだ安物もウイスキーの瓶とコップが枕元に転がっている。
 二日酔いか、気がつくとよけい頭が痛い、安物のウイスキーの臭いが鼻の奥に刺激をあたえて体が拒否反応が起こるそして吐き気がする。テーブルの上に置いてある2リットルのお茶のペットボトルをラッパ飲みしていると、携帯電話がなった、知らない番号だった。
 
最近、大学受験生相手の家庭教師のアルバイトをふつかよいで二回ほどすっぽかしてクビになり。大学も二年ほど留年している俺は親にもあきれられ仕送りも減り、今月は必死になりながらアルバイトを探していた。
 先週面接にいった時のアルバイトの合否の電話かもしれない。
「はい」 
「西村さんの携帯電話でしょうか」 
丁寧な口調の似合わない、太い声だった。
「はい、そうですが」
「昨日メールで、アルバイトに応募いただいたのですが、面接の日程なのですが今日いかがですか?」。
 昨日か、酔っていた時にネットで「風俗店勤務、パソコンを使える方日給5万円、男女問わず急募!!」というふざけた広告を見つけたので。俺は情報学部の学生だったので、適当に専門家ですとか書いて名前と住所と電話番号を書き、酔いにまかしてメールを送ってしまったような気がする。
「今日ですか、少し待ってください」と間を延ばすために答えた。
「忙しいですか、昨日いただいたメールのアドレスに住所を、送っておきますので夕方六時までにおこしください。もし忙しいのでしたら後日でもいいのですが。ほかの人に決まってしまった場合は申し訳ございませんが、受付は終了になります」
 俺が「少し待ってください」と言う間もなく男は。「では失礼します」と言って電話を切ってしまった。
 どうしよう、相手に名前、住所、電話番号を知られてしまっている以上今日、面接に行かなかったとしたら、まずい気がする。
 その前に風俗店でパソコン使える方って何だ日給5万円て、俺は男だし体を売るとかでもないだろう。ホモ専門か。いや男女募集て書いてあったはずだ。これがまともな仕事だったとしたら、いったいどういう仕事だ。ホームページを作るとかだろうか。
 それとも風俗店のアプリ開発とかか。俺は全く風俗などに行かないし。アプリ開発なんてまったくわからないが、風俗好きの友達にそんなはなしも聞いた気がする。 それだったらおいしい話ではないか冷蔵庫から缶ビールを出して飲んだ迎え酒というのは二日酔いの特効薬だ。                                                それだったらおいしい話ではないか冷蔵庫から缶ビールを出して飲んだ、迎え酒というのは二日酔いの特効薬だ。                                                そんなことをしているうち時計は、もう五時を指していた。                                                                                  
 このままでは、遅れてしまう。お酒というものは頭のネジを緩めてしまう。実際のリアルな時間も緩めてくれればいいのに。そんな事も言ってはられないし。頭のネジも緩くなった俺はどうしようかなんて悩んでいたこともわすれて面接の準備を始めた。
 アルバイトの面接なのだから私服でいいだろうがいつも着ている服とは違うよそ行きの薄水色のシャツに最近は10月に入り寒くなってきたので、紺色のカーディガン羽織り、下はジーパンでいいだろう。
 久しぶりにいつもとは違う服に着替えたので何となく心がはずんでしまった。

 住所は確かここの最寄りの駅から二駅だったはずだ。
 家から駅までが8分くらいなので5時半にはつくであろう。
 外に出るとモノレールが夕日を背に走っていった。夕日を背にするとモノレールという近未来を、連想させる乗り物でさえ、なんとなく懐かしさを覚える。
 見とれてしまっていたそんな事よりも急がなければならない。
 スーパーの前を通ると夕食のお惣菜やお弁当を買いにきた主婦や学生、いろいろな年代の人間がごった返している。 
 駅につき切符を買い、改札を通ると目的の電車はもう着いていたので急いで電車に乗り込む。この時間の電車にはあまりの乗らないので知らないがいつもより空いている気がする。
 電車からみえる住宅街は夕日に照らされて、黄金色に輝いている。
 あの人どんな仕事している人だろうと考えたり景色を見たりしているとあっという間に着いてしまった。
 駅に着き改札を出て時計をみると5時半ちょうどだった。読みが当たった。今日はなんとなくついている気がするのも、来る前に飲んだ缶ビールのせいだろう。
 住所を見ても駅までしかわからなかったので、家で住所をスマホにメモしていた。駅前の交番の前にたっていた警官に訪ねると。
「そこの細い道をまっすぐ行くと、見えてくる大きなマンションだよ」と爽やかに答えてくれた。思い返すと警官に風俗の場所を聴くなんて少し変な話だ。だがマンションということは、事務所なのかな。だがネット広告には、風俗店勤務と書いてあった気がする。
 面接は事務所でやるのかな。たった一杯の缶ビールで頭のネジが緩んだ俺の頭ではどうでもいいことだ。
 それよりも簡単に見つかりそうで良かった。という考えが勝っていた。
 コンビニに寄ってタバコを買って、駅前で喫煙所探し、一服してから行くことにした。
 夕日も沈みかかって街が、夜の空気に包み込まれようとしている。
 駅からでてきたサラリーマンや大学生の集団は居酒屋へと消えていく、改めて見ると居酒屋はあるものの、風俗店なんてある街には思えない。
 間違えてないよな?とスマホのメモをみる。間違えてはないはずだ、警官にも訪ねているのだから間違えているはずがない。
 とりあえず行ってみようと、タバコを消して。警官の教えてくれた細い道へと、足を進めた。細い道を進んでいくと大きな、この街には不釣り合いな高級マンションがあった。
 マンションが建っているのはいいとして。こんな高級マンションが風俗店または風俗店の事務所とも思えない。
 だが住所に書いてあるマンション名とまったく同じものだった。

                               
一気に酔いが冷めて動揺してしまっている。スマホを開き時間を見ると5時46分だった、ここまで着いたんだ。お金もないし。とりあえず少し歩き、タバコに火をつけた。
 おちつけ俺と、自分で自分に言いきかした。タバコを吸うとすこし落ち着いた。高級マンションまで戻り。「もうどうにでもなれ」と心の中で叫び、部屋番号を押してインターホンのボタンを押した。
「はい」
 電話で聞いた太い声だった。
「面接にきた、西村です」
 声が裏返ってしまっていた。
「来ていただいたんですか西村さん。今あけますね、部屋は606号室です。エレベーターで二階に上がって来てください。ノックしていただければ開けますので」
 対応が丁寧だし親切じゃないか。少し安心した。
 ほっとしていると、自動ドアが開いた、こんな高級マンションにくるのは、初めてだったので自動ドアが開いてびっくりしてしまっている。
 入るとエレベータがありボタンを押すとすぐに、開いた6階のボタンを押す、上昇していることがわからないほど、静かだ。二階に着きエレベーターからでると床は何か白いつるつるとした大理石かなにか高そうな石材で出来ていた。こんな所に住む人間はどんな人なんだろう。
 右側に少し歩くと606号室がすぐ見つかった。ドアはお洒落な木材で出来ていて。うちのぼろアパートの重い鉄のドアとは比べ物にならない値段だろう。 
 インターホンはあったが、ノックしてと言われたので。ノックをすると入り口で待ち構えていたのか。すぐにドアが開いた。
「お待ちしてました、西村さん」と言い。中からスーツを着たスキンヘッドの口髭をはやした、中年の大柄の男が出てきた。
 何か言葉を返す間もなく「どうぞ」といわれ中に入れられた。
「ギリギリな時間に来てしまい、申し訳ありません」と言うと。
「六時までに、というのはあくまでで目安ですので」と優しく、答えてくれ、広い部屋に通された。
 部屋にはクリーム色の高そうなソファーが二つとガラスで出来たテーブルが置いてあった。ソファーに座ることを勧められ。手前側のソファーに腰をかけた。
「紅茶とコーヒーどちらがいいですか」ときかれて。
「おかまいなく」と答えた。
 アルバイトの面接でお茶が出るなんて聞いたことがない、なんなんだこの男の対応はアルバイトに面接に来た人間に対する態度ではないだろう。
 考えていると、男が向かいのソファーに座り、面接が始まった。
「西村さんは、パソコンの専門家です。と書いてありましたが、そういう学校にかよっているんですか」と聞いてきた。
「はい、大学でプログラミングなどの勉強をしています」
「そうですか、どこの学校ですか」
 唐突だな、だがそんなものか。だが俺は、留年はしているものの一応国立だし、大学名を答えると。
                                     
「すごいですね、そこの大学でPC関係の勉強をしているのなら。この仕事は、簡単ですよ。もう決まりですね、じゃあ仕事の説明にかかりますね」
「え、ちょっと待ってください。そんなに簡単に決まるんですか。その前に、私はどんな仕事内容か全くわからないですし」
「ですから、いまから仕事内容を説明しますね。内容をきいてから、嫌でしたらお断りしていただいて結構ですよ」
 そういう事ならいいか、びっくりしてしまった。いきなり決まってしまったので。危ない仕事なら仕事内容を教えてから。帰してくれるなんてないよな。断ってもいいと言っているのだし、日給5 万だし。
「これ名刺です、ではこちらの部屋に来てもらっていいですか」
 名刺には、会社名も住所も書いておらず、名前だけ「赤津 鉄則」と名前だけが書いてあった。
 言われるままついて行くとまた違う部屋に移された。
「ここは、お客さんに使ってもらう部屋なんですけどね。まずは、見てください」
 部屋の中には、日焼けサロンにある様な機械の様なベットに無数にケーブルがつながれていて、そのケーブルは病院にあるようなカーテンで仕切られ隣の部屋へと、蛇が這うかのように延びていた。
 風俗店だよな、ベットはいいとして。このケーブルはいったいなんなのだろう。俺がだまっていると、赤津という男はが笑みの表情を浮かべながら言った。
「最初、こんなの物を見せられても何がなんだか訳がわかりませんよね」
「はぁ」と軽く相づちをうった。
 赤津という男はカーテンを開けた。隣の部屋には黒いタンスのようなものにケーブルが繋がれていて隣には。業務用の机の上にパソコンのモニターが4つ置いてあった。
「ここで何をするんですか」疑心暗鬼になった俺はつい聞いてしまった。
「ここはね、信じてもらえないかもしれないですけど、お客さんにいい夢をみてもらう場所なんですよ。お客さんの見たい夢をみてもらう。この機械によって見る事が出来るんです。この機械の操作を西村さんにしてもらいたいんです。」
「はぁ」なにを言っているんだ、そんな機械きいたこともない、だまそうとしているのか。そんな機械が本当にあったら大きなニュースになっているじゃないか。俺をだましてなにになるんだ。
「信じられないですよね、信じなくてもいいんですよ。ただ説明する仕事内容をこなしていただくだけいいんです」
「いや、信じてない訳ではないんですけど。唐突すぎて、作業といっても私なんかに出来るんですか。プログラムの勉強といってもそういった詳しい知識は全くないので」
「大丈夫ですよ、データを入れるだけになっていますので。基本的には西村さんぐらいの知識でしたらとても簡単な作業ですよ。これから、この機械のメンテナンスやってくれてる人が来ますから。そのひとに作業内容の詳しい説明は受けてくださいね。もう来ると思うので。さっきの部屋で待っていてください。ではこちらに」面接を受けた部屋に移され、ソファーに腰を掛けた。
 本当に夢を見させる機械なんてあるのだろう、あの機械が本物だとして。                                   
 そんな機械をどこから手に入れたのだろうか。勤務時間はどのくらいの長さなのだろう、俺は本当にそれだけの業務内容で日給5 万円という大金がもらえるのだろうか。そんな考えが頭のなかをぐるぐると回った。 
「勤務時間は何時間ぐらいなんですか」お金については恐ろしくてきけなかった。
「1日お客様が、1人と決まっているので。6時間くらいですかね」
「それだけで5万円ですか」つい口にでてしまった。
「そうですよ、業務内容が特殊ですし。お客様も著名な方ばかりですので、口止め料というと悪く聞こえてしまうかもしれませんが。そういう事です」
 俺は口止め料という言葉に怖くなり黙り込んでしまった。そうこうしてるうちにインターホンの音が鳴った。
 赤津は立ちあがり「失礼します」と言い玄関の方へと歩いていった。戻ってくると赤津はスーツを着た背の低い眼鏡をかけた中年の男をつれてきた。赤津が紹介してくれた。
「こちら、あの機械のメンテナンスをやっていただいてる、山中さんです。山中さん、こちらこれから働いてくれる、西村さん」
「いや私はまだ働くとは言ってないのですが」
「西村さん、もうここまで知ってしまったらやめられませんよ」
「さっき、話を聞いてからでも断っていいって言ってたじゃないですか」つい怒鳴ってしまった。どうしよういざとなったら走ってさっきの交番に逃げ込もう。
「あんまり、あなたみたいなひとは来ないんですよ。もう明日お客さん決まってるし山中さんも明日は来れないからね。もう断れないよ、言ってしまうけど逃げたってだめだよ、警察に言っても無駄だからね。こんな建物にあの機械、あの機械のはなしも信じてないかもしれないけど本当の話だから。何億かかってるかわからないでしょう。大きな権力の持った人がここの経営にかかわってるの。君の事ももう調べてあるしもし断ったら、大学は卒業できないしどこにも就職できなくなるよ、親にも心配はかけたくないでしょう、作業内容とお金は本当の話だから。断る理由もないよね。今日は山中さんに教えてもらって明日から、山中さんなしで出来るようにしてね。今日の分もちゃんと給料に入れとくから」言い返す間もなく赤津はさっきまでの丁寧語が嘘のように恐いほどつらつらと話した。
「では、山中さん後はよろしくお願いします」と言い残して違う部屋と消えていった。
 俺は呆然としていた、確かにこんな高級マンションにあの機械が本当に夢を操作できる機械だったら、すごい値段だろうおそらく開発からお金をだしたんだろう。国会議員かそれとも有名企業の社長か、いやもう考えたくない。どうしようもない断れない。だが赤津は作業内容と給料は本当の話だと言っていたし。それなら情報をもらさないという事さえ守れば、大丈夫じゃないか逆においしい話ではないか。そう考えると少し楽になった。

 そうこうしていると山中が。
「大丈夫かい、さっき赤津さんが言った話は本当だけど情報さえ漏らさなければ楽な仕事だよ」
 この山中という男はいい人間なのかな、顔を改めて見るとどこかであった気がする。
 大学でか?いや山中‥名前もきたことがある。思い出した。この人の講義を何回か受けた事がある。うちの大学の教授だ。                                                                   
    
「もしかして、山中教授ですよね。俺何回か講義受けた事があるんですけど」 
「え、うちの大学の生徒か、こんな場所で会うとは思わなかった」山中教授少し焦った様子で答えた。なんでこんなところで機械のメンテナンスなんてしているのだろうか?たしか本とかもだしてる結構有名な教授だった気がしたけど。
「教授こそ、なんでこんなところで働いてるんですか」
「うん、まぁそれは、いろいろあるんだよ、あの機械をつくったのも私だからね。今はそれだけで許してくれ、君も当分ここの仕事もやめられないだろうし、そのうち話してあげるよ。それよりも今日はあの機械の操作を君に覚えてもらわなきゃ、私も帰れないからね。データを入れたりとか、写真を読み込んだりするだけだから。君くらいだったら簡単にできる作業だと思うから。」
 そのあと機械のある部屋へといき実際に機械を動かして。一から教えてもらった。
 まだなぜそれで夢を操作することが出来るかわからないが、実際に操作は簡単だったし。いったんデータをいれれば後は、脳波が異常にならないか。など客が目がさめるまで機械の画面を見ていればいいだけだった。説明は三時間位で終わり。
 帰りに赤津も出てきて。「もう覚えたのかさすがだね」とほめてくれた。
 
 帰りの電車の中で山中教授に渡された夢を操作できる機械の説明書を読みながら、まだ夢を動かせる機械のことなんて信じられないでいたが。山中教授がいたので少し本当に夢を操作できる機械なのかなと思い始めていた。だが機械が本当に夢を操作できるのならいったいその機械がなぜあんな所にあるんだろう、学会などに発表したら表彰ぐらいでは済まないくらい、すごい発明じゃないか。などと考えていたら駅に着いていた。
 コンビニで缶ビールとウイスキーを買い。缶ビールを飲みながら、月をながめていたら、酔いが回り、来月からお金が入り、生活が楽になる、好きなお酒も飲める、などというような事で事で頭がいっぱいになり鼻歌を歌いながら家へと帰っていった。
 家に着き、安ウイスキーを飲みながら、明日の事を考えていた。
 仕事は明日からだ。実際本当に仕事内容は、べつに危ないものではないし、情報をもらさなければ。こんなおいしい話はない、勤務時間は夜からだ。客がくる前に一時間ほど、データを入れたり写真を読み込んだりする作業は一時間位しかかからない、明日の客の分は、今日、山中教授と済ませてきたし。客が眠ったら機械の画面の前にいれば小説なり、漫画なり読んでていいらしい。食事も明日からはマンションにある冷蔵庫の中のものは好きに食べていいらしいしから食費が浮く。機械を動かすのも少し楽しみだし。そんな事をかんがえているうちに眠ってしまっていた。
 起きると夕方の5時くらいだったお酒ものんで爆睡したつもりが、なんだか眠りが浅い。気持ち悪いと思いながら。
 起き上がり飲みかけのマグカップを水で軽く洗い、それで水を軽く飲み、同じマグカップでインスタントコーヒーを入れた。
 苦いし、美味しくないが眠気をとるために飲んだ。
 今日の仕事は8時からだから、まだ時間があるな、今日はデータを入れる仕事もないし、少しビールを飲んでから行く事にした。                                                          
 家の缶ビールを飲み、パソコンをいじったり。機械の説明書などを読んでいたら6時くらいになったので家を出た。夜でも俺の家に近い駅も、仕事先の駅も学生達やサラリーマ集団が居酒屋の前で待ち合わせでもしているのだろうか。あめ玉に群がる蟻のように、がやがやと群がっていた。
 少し小腹がすいたので。コンビニで、カップラーメンを買い込み、週刊誌などを読んでいた。 7時ぐらいになり、暇だったので仕事場の高級マンションまで着てしまった。
 寒いしもう、いいかと思いインターホンのボタンを押すと「はい」と赤津がでた。
「西村です、早く着いてしまったんですけどいいですか」
「いいよ、今あけるわ。鍵は開けとくからかってに入ってきていいよ」昨日の山中教授が着た、すこしたってから赤津は丁寧語を使わなくなった。最初は恐かったが。俺が帰るときは感じのいいおじさんのような感覚でこわなくなってしまった。逆に話しやすくなったのかもしれない。しかし何度見てもすごいマンションだな。
 自動ドアが開く。エレベータに乗る。この無音のエレベーターは3回目だが、なれなくてなんだか気持ち悪い。 606号室のドアのドアノブを引いた本当に開いていた。中に入ると赤津はソファーに座り新聞を読んでいたがテーブルに新聞を置き。 
「仕事熱心だな昨日は、最初嫌がってたのにどうした?早く来過ぎても給料は、増えないぞ」と笑いながら言ってきた。
「時間まで、小腹がすいたのでカップラーメンでも、食べてようかなと。お湯ありますか」特に理由もないのでそう答えた。
「お湯はあるよ、別に買ってこなくても冷蔵庫にあるの勝手に食べていいって昨日言っただろう。冷凍食品しかないけどな。じゃ飲み物でも飲めよビールもあるぞ」
「ビールのんでいいんですか」
「仕事に差し支えなければいいよ。山中さんもよく飲んでたし」
「じゃ仕事が始まってから暇になったら飲みますありがとうございます」
 カップラーメンを食べながら、赤津に気になったていた事を聞いた。
「聞きたい事があるんですけど。いいですか」
「答えられる範囲内ならいいよ」
「メールを最初送った時に、風俗店勤務と書いてあったのを見たんですけど。よくわからないけど。読み込ませた写真も男の子でしたし、場所も遊園地のデータでした。勝手な推測ですけど、亡くしたお子さん、いや、もうあえない自分子供と遊びたいという内容ですよね、今日のお客さんは。それのどこが風俗なんですか」赤津は、ううんと唸りながら答えた。
「俺はお客さんの対応だけだから、よくわからないけど。まぁ今日くるお客さんのほうがめずらしいよな。ここに来るお客はみな大金持ちだ、だから今日のお客さんみたいに健全なお客さんの方がすくないんだよ。だいたい昔に戻って、あの女とやりたいだとか。あの時の夜に戻りたいだとか。すごいお客もいたらしいぞ。メスライオンとやりたいって言ってきたお客なついた事もある。あれだな大金持ちは、もう普通の行為では、ものたりないんだろうな。大金持ちの考えは、俺ら凡人にはわからないってことだよ。まぁそういう事で風俗店なんだよここは特殊な…な」と教えてくれた。                                        
 そのあと客が着た。高そうなスーツをきた五十代の白髪が混じった、目のおおきな男だった。説明をして特殊な睡眠薬を飲んでもらい、腕、こめかみに吸盤の下に極小の針がついている電極と脳波計をつけてもらい、タコの吸盤のような物がたくさんついた青く光るヘルメットのような機械をかぶってもらい、日焼けマシーンみたいなベットに寝てもらいベットの蓋を閉めた。                                 
 俺は画面のある部屋に移り三十分ほど待たされ脳波が睡眠に入ったことを確認すると。教えられた通りに昨日、作ったデータを確認して。startボタンをクリックし画面を見つめた。
 客の脳波や、ストレスや心拍数などが時系列のグラフで画面に映っている開始ボタンを押すと一気にすべてのグラフの数値が高くなるが、少し経つと正常値にもどる、こうなれば後は客の起きる時間にアラームをセットし、時間になったら起こすだけだ。
 ソファーの部屋にもどり赤津に客が睡眠に入ったことを報告した。
「おつかれさま、俺は少しでてくるから。ビールを飲むなり眠るなり好きにしててくれ。もしもなんかあったら電話しろ。お客さんが起きる頃には戻ってくるから」といい赤津の電話の番号をかいたメモ用紙を渡してきた。
「なんかあったらて、大丈夫なんですか」
「山中さんからきいてないか、いままでに二回くらいお客の見たい夢の内容が細かすぎて、送るデータが多すぎたらしくて。起こそうとしてベットをあけたら、鼻血が出てたらしいぞ。でも意識はもどったけどな。ちょっと後遺症が残ったらしいぞ。もう一人のお客さんは途中でむりやり、起こして、何にも問題なかったけどな。まぁそうなりそうなお客さんは上がもう断ってるみたいだから大丈夫だろ」そう言い赤津は出て行った。
 たしか昨日、山中教授が、途中で眠っている客の数値が高くなったら無理矢理にでも起こすようにといわれたのはその事だったのか。まぁでも、もし、そうなりそうな客は、断っていると言っているし、大丈夫だろう。
 冷蔵庫に入っていたビールとハムを持って機械のある部屋へと戻り持ってきた漫画を読みながらビールを飲んだり、携帯電話をいじったりしていた。暇だったのでいろんな部屋を回ってみたくなり見たが何もなかった。仮眠室なのか普通のベットだけが置いてある部屋が一室だけあった。
 この仕事は暇をつぶすのが一番大変だな。酔いがさめてきたので友達にかりた小説を読んでいると眠くなり、うとうとしていると、客を起こす時間となりアラームがなった。はっとなり画面をみるとグラフは、安定していた、安心した。
 ベットをあけ客を起こそうとすると、笑いながら涙をながして眠っていた。ソファーのある部屋に赤津を呼びにいったら、赤津はソファーで眠っていた。客でもないのにと腹立たしく思いながらも赤津を、ゆすり起こした。終わった事を報告して、赤津と客のいる部屋へともどり客を赤津がゆすり起こし、客を玄関へと送っていった。玄関で客に。
「いい夢だった、ありがとう」とさみしそうな笑顔でいわれた。
 ここは現実なんだもんな、ここにはもう自分の子供がいないと改めて再確認されたのだろうか、辛くなるのをわかっていても逢いたかったんだろう。なんだか客の後ろ姿をみるとまだ酔っているのか泣きそうになってしまった。
 その日は赤津に家まで車で送ってもらった。車中で気になり、赤津に客の支払いはどうしているのかと聞くと。                                   
「現金で持って来れる額じゃないからな、上が管理してるよ、前払いだろうたぶん。」どんな金額だよと思った聞きたくないので聞かなかった。
 その後、週に三日ほど働いた。初日の客以外は、ほとんど学生時代にもどりそのとき憧れだった女の子の写真を読み込んだり。昔の映画の女優だとかほとんど、くだらないものだった。               仕事にもなれてきて。赤津が車で送れない日は。普通のベットだけ置いてあった仮眠室で寝ていいと言われ、マンションの合鍵を渡され、帰るときは鍵を締めて帰るようにいわれた。
 ある日仕事が終わり、今日もビールを飲んで、今日も泊まっていこう、と考えていると赤津がニコニコしながら。
「明日の客は難しそうだからその客の分は倍払うから今日は残ってデータをいれてくれ」と言われた。
 なんだか怖いなとおもい。「どんな夢なんですか」と聞いた。
「なんか、アニメのキャラクターとやりたいらしいんだよ」と親密な顔で言ってきたので。不意をつかれてふきだしてしまった。赤津がどうしたと、聞いてきたので。
「いや、みんなお客さんは何かしろどっかのお偉いさん、なのに。今の秋葉原にいるような若者のようなことをいうもので」
「お偉いさんは、変人が多いからな、俺にもわからんよ」赤津は髪の毛のない頭をかくフリをしながら言った。
 本当に変な客だな、昔の憧れの人とやりたいってだけで、大金を出すだけでも変人と思っていたのに。アニメのキャラクターとやりたいなんて。でもそんな事出来るのだろうか二次元と、いう事だろう。人間は三次元だし。無理な話なんじゃないか自分の存在も二次元にしなければそんな事出来ないだろうし。そんな無理な話を上は断らなかったのだろうか。
「笑ってすいません、でも難しいんじゃないですか。そんな無理な話、上は断らなかったんですか」
「いや、俺も知識はないがそうおもって上に聞いたんだけど。どうしても断れないらしいんだよ、ここを作った人間に関わりが深い人らしくて上ももめたくないらしいからがんばってやってほしいっていわれちゃって」
「いや俺は無理だと思いますよ。よくわからないですが。山中教授に聞いてみたほうがいいんじゃないですか」俺はあの機械で客がどういう夢をどういう構造で見ているか、わからないしまだ信じた訳じゃないただ客が毎回満足してかえるから本当なのかなと半信半疑だった。
「山中さんは出来るだけもう呼ばないようにと上に言われてるんだよ。だから君を雇ってるんだろう。でもしょうがないか。今回は、上も認めてくれるだろう。ちょっと電話してくる」といい普通のベットたけ置いてある部屋に赤津は消えていった。
 ソファーに座り待っていると、赤い顔をして赤津が戻ってきた。
「話はついたよ、今から山中さんが来るみたいだから、俺はちょっと上に呼ばれたから行ってくるよ」
「赤津さん、上に怒られたんですか」
「違うよ、ほかにもっと問題のお客さんが出来ちゃって、今回とは、違う件でだよ。
                                        これアニメのお客さんの資料ね。山中さん来たら見せてといて」といって出て行ってしまった。
少しするとインターホンのチャイムがなり山中教授だったので一階の自動ドアをあけた。そしてノックがしたので玄関のドアを開けた。疲れた顔で山中教授が立っていたのでなかへと入れた。山中教授はソファーに座ってもらいお茶をだした。
「君に言うのもなんだけど、この時間に呼ばれるのはきついな。私も忙しい身だからね。でも君にはまだ難しい作業だからね。今度、言おうと思っていたんだけれども、ちょうどいいや君に話があるんだ」
「何がですか」
「私は最近、本当に忙しいんだ。だから定期的にやってる機械の整備もきみにやってもらおうとおもって。でも私もあの機械の事を口外したくないからね。だから君の事調べたら、君二年くらい留年してるみたいだね。私がいろいろかけあって卒業できるようにしてあげるから。そしたら院にも入れるように、しておくから私の研究室に入って。一緒に研究すればお互い口外できないここの秘密も知ってる仲だし、私もたすかるんだ。後一年くらいかかるかもしれないが、その間は、ここにある機械で勉強していてくれればいい」
 悪い話でもない、このままでは俺も就職出来るのかわからなかったし。それ以前に卒業も出来るのか、わからなかったし。未来に対しておおきな希望もなかったし。ありがたい話かもしれない。
「本当に、卒業させてくれるんですか」
「ああ。最低大学には来てもらわなきゃならないが、助手にそのうちなれるように席を空けとくよ、信用してもらいたいから、私がここにいる理由も話しておこうか。私はね、私の研究がこんな風俗じみた事に、使われてるのが本当は許せないんだ。少ない研究費でやっとここにあるシステムを開発したんだけど。私はそのときは、大学での立場がすごい小さいもので、学会で発表する機会さえももらえなかった。だが、あるときこの機械を売らないかという話があったんだが、この機械は、まだ未完成なんだよ、私の目的は夢の中から情報を得られるような、犯罪などを抑止できるような、正しいことに使うには、まだまだ遠かった。売ってくれたら莫大な研究費と地位を約束してくれると言われたんだ。一年間この機械を整備して、簡単に扱えるように改良するという条件付きだったけど。でも、研究したかったから承諾したんだ。で一年間がたって。やっと研究が出来ると思ったんだけど。まぁここの人あまり私を呼ばないように気を使ってくれているみたいだけど。さぁ、ここまで私のことを、話したんだ、私が裏切るわけないだろう」
 山中教授も大変だったんだな、俺もここにいるうち夢を操作できる機械に、少し興味もでできたし考えたらすごいありがたい話だ。
「おねがいします」
「西村くん、ありがとう。じゃあ今日、呼ばれた件の作業を、君に説明しながら、やって行こう、あとあの機械についてのレポートを、まとめたものを持ってきたから。後で読んでおいて」
 その後、機械のある部屋へといって説明を受けた。
「この機械はね一回繋がれた人間のデータを読み取るんだ。それで写真のデータやその年代の背景のデータをいれAIが解析してくれる、そして眠っている間に、その人の意識を刺激して繋がっている人に高い確率で、指定された夢をみるようにするものなんだ。そのデータが量が多すぎたり自分の知らない記憶だと一生、目が覚めない事もある、だから。今回のケースだとこの人はこのアニメを何回も見ているだろうし、おそらくだけどいつもと同じようにやっても大丈夫かもしれない。
「できるんですか、良かった赤津さんかなり焦ってましたよ」

 説明を受けていると顔を真っ赤にさせて赤津が男をかついで入ってきた。その男は最近よくテレビに出ている河岡という政治家だった。河岡という政治家は眠っているようだった。
「山中さん、こいつの記憶を消してほしいんだけど」
入ってくると早々に赤津は言った、いったいどうしたのだろう。
「どういう事ですか」山中教授はびっくりしていた。
「わけは話せないんだ、この件を優先にしてやれっていわれた。とにかく記憶は消せるのか」赤津の声は大きくなっていた。
「そんな事、この人が望んだんですか」山中教授も怒っていた。
「きくな。とにかく上が記憶を消せと言ってる。断れない事ぐらいわかってるだろ」
 山中教授は黙ってしまった。
「山中さんできるんですか?どうなんですか」
 それでも山中教授は黙っていた。
「西村おまえできるか」ふざけるな、そんなこと出来てもやるか。完璧に犯罪じゃないか。
「黙ってるんだな、そうかいいぞ、おまえら2人ともそしてこいつも。一生起きられない体にしてやろうか。まぁ明日まで時間やる。俺が来てそいつの記憶があったら。わかるな」と言葉を吐き捨て、赤津はその男を機械のベットに置き部屋を出て行った。どうしたらいいんだ、やらなかった俺たちもどうなるかわからないしこの人を置いてどこかに逃げるか。
「教授逃げましょう!人生、終わっても死ぬよりはましです」
「西村君無理だよ。わたしは、ここの人間を知ってる私たちが逃げても犯罪歴をでっちあげて指名手配にだってできる権力を持った人間たちがやってるんですよ」
「じゃあ、やれって言うんですか。人の記憶を全部消すってこの人はこれからどうやって生きていくんですか」
「この機械では記憶を消すことはできないよ」
「えっ?じゃあどっちにしろ無理じゃないですか」
「いや長時間眠ってもらう事は出来る。今までにここで夢を見た人たち記憶を全部入れれば数十年は起きないだろう。君と私とこの人三人で死ぬか。この人に数十年眠ってもうか」
 どうしたものだろう後悔の念しかない、あのとき酔っていなかったらここで仕事もしてなかったしこんな目にも合わなかった。もう遅いのか、俺は最低だな、でもこんな所で人生終わりにしたくない。
「教授、やりましょう死にたくないです。俺はこの機械で記憶をこの人に送る操作はできません。教授にぜんぶ押し付ける事になってしまいますだから、この人が起きた時に何が起きたのかわかるようにこの人に俺の記憶を入れてください。今からでも間に合うでしょ、せめてもの罪ほろぼしです。こんな事で俺らの罪は変わりませんが、そのくらの事していいでしょ教授」
「そうですね」教授はうつむきながら答えた。
 教授と一緒に河岡という男を機械のベットからソファーに移した、そして俺は教授に手伝ってもらい脳波計はもういいと断りヘルメットだけを被り睡眠薬を飲み込み、ベットに寝転がるり機械の中に横になる教授は、悲しい顔をしながら機械のフタを閉じた。青白い光が広がりガンガンガンと音がなり俺の意識は上に持ち上げられた様に青い光に吸い込まれ遠のいていく。意識が遠のいていく‥とおのいて。

 目が覚めるとそこは病室だっ検診をしていた医者ががビックリとした表情をしてあせりながら小走りで近寄って来た。
「目が覚めたんですか河岡さん」とおおきな声で言った。
何年間眠っていたのだろう教授は無事逃げられたのだろうか、あの政治家どうなったのだろう。


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