SENSHU RUGBY 2020 ~ 開幕大東戦、24年ぶりの勝利を引き寄せた熱いスクラム


2015年、14期ぶりに1部に昇格したリーグ戦1部の開幕戦は熊谷ラグビー場での大東大戦だった。結果は31-71。5トライを奪ったものの、一度、強力な留学生にボールを持たれるとなすすべもなくゴールへ持ち込まれた。

再びの対戦は2018年の開幕戦、秩父宮ラグビー場。2部落ちした2016年のシーズン終了後から始まった竹内プロストレングスコーチによるトレーニングの成果で、選手たちの身体は格段に大きくなったが、それでもやはり留学生から留学生へ、手渡しでボールを縦につなぐ突進を止めることはできなかった。最終スコアは21-53。点差は40から32に縮まった。

2019年の開幕戦はワールドカップ開催の関係からリーグ戦、対抗戦の全試合が菅平サニアパークで行われた。相手は三たび大東。郡司、山極、石田、夏井、佐藤といった黄金世代が最終学年を迎えたこの年の目標は大学選手権出場。創部90周年という節目でもあり、この目標達成のために総力をこの一戦に賭けたが、前後半とも試合の入りでミスから失点したことが響き26-33で敗戦。1T1G分の7点が届かなかった。

そしてコロナ禍で迎えた2020年のシーズン、前年5位でフィニッシュした専大は同じく勝点16ながら当該校同士の対戦で破れて4位だった大東と開幕戦で四たび顔を合わせた。

(以下はJSPORTSの映像による観戦)

先にピッチに入ってきたのは大東。放送による観戦なのでよくわからないが、選手はとくに勢いをつけるでもなく、バラバラと入ってきた。一方の専大は遅れること数分、密閉されたテントの中で部歌を歌い(思えばこの部歌も村田監督就任直後はここまでの迫力はなかった)、気合満々でピッチに出てくる。

キックオフは専大。この試合の最初のポイントは前半早々に失点しないこと。毎年、春シーズンからチームを見ている筆者も、今季はこれが初めての観戦でどういうチームになっているのかはまったくわからない。

試合開始早々に古里がハイパント。これをキャッチした大東が自陣でつなぐが、ラックになったところで専大は素早くターンオーバしてバックスへつなぐ。全員がキビキビと心地よく動いている。集散が早く友池がラックのボールをテンポ良くさばいていた。
敵陣でプレーを続けての5分、専大の連続攻撃に大東がたまらず反則。専大はPGからラインアウトを選択。小笠原が素早くキャッチするとそのままモールの核になって押し込む。
モールは近年の専大の課題の一つだったが、非常に良い形で形成されており、FWに留学生2人がいる大東はズルズルと下がる。すると最後尾でボールを持った小栗がインゴールへなだれ込んでトライ(5-0)。

11分に同じような形で今度は大東に同点にされる(5-5)。
直後の専大キックオフのボールを大東がキャッチして展開し、最後はライン際を4番の留学生が走ったが、これを平山がタックルしてタッチの外へ平山が押し出す。一試合を通じて平山のディフェンス力は素晴らしく、試合後の監督賞は彼に与えられた(関東協会のMOMはNo8原)。

13分、自陣10Mからのマイボールスクラム。本来、ブラインド側のウイングである花田がオープンサイドのスクラム脇で友池からパスを受けるとタックルを振り払って縦に突進。大きなスライドでゴール前に迫るとラックから友池が森野へとパス、アドバンテージが出ていたこともあり、森野が得意のキックパスをインゴールへ飛ばすと1年生でスタメンを勝ち取った飯塚がドンピシャでキャッチしてトライ。流れるような美しい攻撃で勝ち越した(10-5)。

点を取り合う展開になったこの試合、23分には自陣ゴール前での揉み合いの中、大東13番の留学生にインゴールに押し込まれるとゴールも成功(10-12)。しかし27分には大東のラインアウトミスのボールを素早く獲得するとバックスへ展開、古里が大きく前進し最後は花田がディフェンスに来たトイメンのウイングを引きずりながらインゴールへ飛び込む(15-12)。37分、ゴール前で大東SHが上げたインゴールへのパントがポロリとこぼれたところを2番に押し込まれて再び逆転された(15-19)。

近年の専大の今ひとつの課題は、前半終了間際に失点することが多く、しかもそれが試合の流れに大きく影響することだった。37分の失点はこの課題がいまだ修正されていないことをうかがわせたかにみえた……。が、40分、大東陣22M内側のラインアウトから、最初のトライの録画再生を見るがごとく同じ形で再び小栗がトライして再逆転(22-19)。
前半をうまく終わらせることができなかったのは大東だった。

この追いつ追われつのシーソーゲームは、後半になると動きがピタッと止まり、スコアがまったく動かなくなる。

そんななか、この試合のハイライトシーンが69分にやって来た。
自陣22Mラインの内側からのマイボールラインアウト。専大はしっかりキャッチしたが、入ったばかりの松尾東一郎がインゴールでノックオン。大東ボールの5Mスクラムになってしまう。この試合の結果はわかっていたので、ここで失点しないことは間違いない。が、これまでの力関係から言えば、大東に強烈に押されてスクラムトライを取られるというイメージが容易に頭に浮かぶ。いったいどうやってこのピンチから脱出したのか?

最初のスクラムでは即座に大東8番の留学生がサイドアタック。専大はペナルティを犯したが、なんとかゴールは割られずにすんだ。そして仕切り直しの2回目のスクラム。ゴールラインを背負っての絶体絶命ピンチ、現場で観戦していれば心臓が高鳴ったであろうこのシーン、しかし専大はここで、この日一番のスクラムを組んだ。低く、しかし崩れることなくしっかりバインドすると、大東SHがボールを入れた瞬間にグッと前へ出る。ズルっと下がった大東はスクラム内のボールをコントロールできなくなりペナルティ。吠えるFW陣に駆け寄るバックス。最大のピンチを脱した瞬間、フィフティーンの一体感は最高潮に達した。

それでも自陣の中での戦いは続いたが、ひたむきなディフェンスを続けると、最後は大東が痛恨のラインオフサイドを犯し、ここからのペナルティで敵陣に入ることに成功した。
とはいえ残り5分以上で3点差。一つミスが出れば相手にボールが渡り逆転されかねないし、それだけの時間は十分にある。だが、専大はラインアウトからの攻撃で大東ゴール前に迫ると、最後はスクラムからNo8原が足元のボールを自分で持ち出しインゴールに飛び込みトライ。緊迫した接戦のゲームにケリをつけた(29-19)。

今季のリーグ戦のレギュレーションは全試合が成立すればボーナスポイントがつく(勝敗に関係なく4トライ以上、7点差以内の敗北で各1ずつ)。現時点で専大は勝点4だが、ボーナス点がつく場合、勝点5となる。一方、3トライ、10点差負けの大東はポイント獲得の権利すら得ることができなかった。

対大東戦勝利は1996年以来24年ぶり。ちなみに最後にリーグ優勝した1989年(村田亙主将)もラトゥがいた大東には負けている。
まさに久々の勝利だが、次節の相手はいまだリーグ戦で勝っていない流経大。
1990年代、専大の力が落ちるのと軌を一にして台頭してきた流経にはこれまでずっと煮え湯を飲まされ続けてきた。村田監督就任以降も、

2015年 13-67
2018年 14-56
2019年 33-57

というスコア。流経の場合、大東以上に強力な留学生がスタメン3人、リザーブに2人控えており(大東はスタメン3人のみ)厳しい相手であることは間違いない。
だが、大東戦で見せたチーム全体に漲る活気と規律、昨年より向上したと思われるディフェンス力を持ってすれば、初勝利を得られる可能性は十分にある。当然、村田監督は勝つことのみに絞ってこの一週間、調整を続けてきているし、大東戦の結果を見ればサポーターも「今年はいけるのではないか」という気持ちを持てるだろう(これは非常に大事なことだ)。
チームを支えた大駒が抜けた次の年ではあるが、昨年以上に「いいチームだな」と思わせるフレッシュな魅力が今季はある。
依然として観戦できないのは残念ではあるが、ラグビー部のtwitter(@senshurugbynow)を注視しつつ勝利の吉報を待とう。

【関東大学リーグ戦 1部 第2節 vs流通経済大学】
10月11日(日) 流通経済大G 13:00KO(無観客)

1.檀野 友多郎
2.小栗 冬雅
3.栗山 塁
4.小笠原 颯
5.久次米 航希
6.折居 慎斗
7.春口 陽
8.原 健将
9.友池 瞭汰
10.森野 幹太
11.飯塚 稜介
12.夏井 大樹(C)
13.平山 壮太
14.花田 悠太朗
15.古里 樹希
16.山口 和明
17.米沢 豪真
18.松尾 龍之介
19.西尾 開登
20.山下 拓真
21.酒井 亮輔
22.松尾 東一郎
23.水野 晋輔


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