SENSHU RUGBY 2018 ~大東戦レビュー、そして法政戦へ

専大がリーグ戦で最後に優勝したのは、村田監督がキャプテンを務めた1989年(平成元年)。以後、の最高順位は4位(91年に一度だけ)。
90年代後半からは下位に沈み続け、世紀が改まった2002年の入替戦でついに2部降格、2015年を1部で戦うまで実に13年間にわたって2部暮らしが続いた。が、その翌年、再び2部降格。
つまり平成という時代は専大ラグビー部の低迷期だったのだ。

それだけに、やっと昨年の入替戦で返り咲いたものの、一般のラグビーファンからすれば、専大はダントツの最下位→入替戦候補。今季の初戦、昨年のリーグ戦優勝校である大東大との対戦は、大東がどれだけ点を取って圧勝するかが注目されたとしても仕方がない。
まして今季からレギュレーションが変更になり、留学生は同時に3人がピッチに立つことができるようになり、その差は開く一方ではないかと思われていただろう。
もちろんその心配はあったが、しかし村田監督が就任して過去6シーズン、とくに昨年の戦いぶりを見れば、そう簡単にゲームは壊れないのではないかという期待は十分にあった。

発表された出場メンバーのうちFBの松浦が直前のトレーニングで打撲をして檜山に交代(軽症とのこと)。
久しぶりに秩父宮で聴く校歌、ゴール裏、スクリーンの下には「S」のビッグフラッグが掲げられた。

12:30試合開始。
チャンスは専大のキックオフ直後に来た。大東はキャッチしたボールをキックしたがこれがノータッチ。このボールをバックスに展開すると郡司がショートパントで相手のディフェンスの頭を超えてキャッチし、大東陣のゴール前へ攻め込んだ。
その後、マイボールラインアウトを山極がキャッチするとモールを作りそのままゴールに入ったかと思われたがグラウンディングができず専大ボールのスクラム。
開始早々のチャンスに、この日、もっとも不安視されていたマイボールスクラムとなる。が、ダイレクトフッキングで石川が素早くボールを出すと、水野が縦に突進してラックを形成。ここで酒井が痛恨のノックオン。最初のチャンスを不意にしてしまった。が、この後もマイボールスクラムはほぼノーミスで試合を終えた(前週のジュニア日大戦でも同様にFWは劣勢だったが、ダイレクトフッキングで乗り切ると、その後は互角に組めるようになった)。

大東はこのピンチを凌ぐと、キックを使わずに身体の大きな選手にボールを持たせてどんどん前へ突進。専大ディフェンスに対して身体を当て、パスというより手渡しのようにボールをつないでいく。またタックルを受けて倒れても、一度ボールを置いて、それを再び拾って突進する。その迫力は流石に昨年のリーグ戦王者だった。

最初のトライは14分、自陣ゴール前での大東ボールスクラムを押されてそのままトライ。しかし時間帯としては試合の入りから15分を凌いだ後で、このスクラムトライは現状の実力差からすれば仕方がない。
その後、19分にもトライを取られ0-14。最初の正念場の時間となる。ここで耐えきれないと試合の流れは怒涛のごとく大東へ流れていってしまう。

しかし22分、大東のラインアウトからのバックスへの攻撃を水野がインターセプト。これは阻まれて結果的にペナルティを取られたが、大東のキックは再びタッチを割らず、水野→酒井→檜山→石原とつなぎ、パスを受けた郡司がラインブレイク。インゴールにゴロパントを蹴り込むと、走り勝った夏井勇大がボールを押さえてトライ。檜山のゴールも決まって7-14となる。

専大は大型選手の揃う大東に対して低いタックルで応戦、36分にラインアウト→モールからトライを奪われるものの40分の時点で7-19となる。
しかしロスタイムがあり、ペナルティをもらってタッチに蹴り出したものの前半が終わらない。このラインアウトで大東が反則を犯してさらにフリーキックを得る。
残り時間は少ないが、まだ次のプレーをする時間はある。ここでタッチに蹴り出すと今度は大東ボールのラインアウトになる。ペナルティの位置は自陣から数メーター入ったところ。ここで専大はハイパントを選択。これを大東がキャッチしてラックとなり、ここから8番の留学生に真ん中を割られてそのまま走りきられてしまった。前半終了間際の失点で7-24。
これが残念だった。もしこのシーンをやり直すことができるのならば、チョン蹴りからFWにボールを持たせ、安全な時間になるのを見計らって(それはものの1分ほどのはず)蹴り出するのが正解だったろう。
が、専大にはこういうシーンになった場合の対策がなく、瞬間的なゲームコントロールに課題を残した(これは今後のゲームで修正していけばいい)。
キックは相手ボールになる可能性が高い。そうなるとたとえ相手陣の深くまで蹴り込んだとしても、とくに留学生にボールを持たれた場合、一気に走りきられるリスクが急激に高まるということは、今後の試合でも肝に銘じておかなければならない。

後半。先に点を取りたかったが45分に失点。ゲームが壊れるかどうかの瀬戸際になる。が、ここで石原を下げて郡司をSOに上げたことが功を奏し、流れを押し止めることに成功すると、さらに片岡を投入。大東陣22Mのラインアウトから志賀、檜山が突進、最後は片岡が縦に入ってきた光吉にボールを渡すとゴール下にトライ。この日、両チームを通じて一番美しいトライが生まれた。

結局、ファイナルスコアは21-53。勝機のある試合だったかというと、そうではなかった。しかし壊れたゲームでもなかった(ただし大東のゴールキックが外れまくっていたことを考えると、これが入っていればもう少し失点は多かった)。
後半、ロスタイムにはFWのラッシュから原がトライ。大東側からすれば、ゴール前の防御ラインを割られてしまったことは相当な反省材料だろう。
一方、専大からすれば、昨年のリーグ戦での大東の一試合あたり最大の失点は14点だったことを考えると価値あるトライだった。
試合をトータルで見れば、一部昇格直後の、専大にとって厳しいと見られていたはずのゲームで、十分に戦っていけることがわかった。

ディフェンスでは低いタックルでピンチを凌ぎ、アタックでも個々の選手が大東相手にゲインすることができていた。大黒柱の郡司は1部でも十分以上に通用し、松浦の代役で入った檜山も活躍。高橋キャプテン不在のSHは抜擢された酒井、さらに片岡のタイプの異なる選手がそれぞれに役割を果たし、片岡は流れを変える力がある。
これらは村田監督就任とともに積み上げてきた蓄積の厚みが増し、一部レベルに到達しつつあることの証明だろう。

何も知らない一般のラグビーファンは、単純にメンバー表に書かれた戦力から順位を予想する。
しかし専大の場合、「監督力」は大学ラグビーでもトップクラス。高いレベルの指導者が自ら畑を耕し、種を蒔き、水をやって育ててきた、その結果、芽吹いたのが昨季だとすれば、今季はさらにその芽が成長する過程に入ったといえる。
優れた指導者の下で厳しいトレーニングをしてきた若者たちのラグビーは、もはやそう簡単には崩れない。

次節は法政戦。
2015年には秩父宮で13-14と惜敗した相手だが、さらにさかのぼると1989年に勝って以来、28シーズン勝ちがない。が、29シーズンぶりに勝利を掴めば、平成の初めと終わりが白星だったことになる。
低迷の時代を終わらせて新たな時代へ。法政戦はその試金石となる。
選手たちは必ずやってくれるだろう。

【関東大学リーグ戦 1部 第2節 vs法政大学】
9月24日(月) 12:30KO(上柚木陸上競技場)
1. 石田 楽人
2.宮本 詩音
3.栗山 塁
4.山極 大貴
5.殿元 政仁
6.坂本 洋道
7.佐藤 匠
8.石川 恵韻(C)
9.酒井 亮輔
10.石原 武
11. 夏井 勇大
12.郡司 健吾
13.夏井 大樹
14.水野 景介
15.檜山 成希
16.網谷 龍太
17.原 健将
18.森重 慶司
19.小野 悠太
20.志賀 亮太
21.片岡 領
22.光吉 謙太郎
23.水野 晋輔

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