アラカンの転職について(総括編)
自分自身の転職活動を通じて思ったこと等について、最後に書き記しておきたい。
「後編」だけを読むと、転職を志して、いわゆる転職エージェントの紹介で、すんなりと転職先が決まったようなイメージを持たれるかもしれないが、実はそんなにヤワな話ではない。
転職を志してから、実際に転職するまで、なんやかんやで2年近くはかかっている。アラカンになってからの転職活動なんて、労働市場が昔よりは流動化してきた昨今であっても、決して簡単なことではない。やらなくても済むのであれば、やらない方が良い。
もっとも、僕の場合、前の会社に籍は置きつつ水面下で静かにこっそりと転職活動をやっていたことに加えて、わりと受け身というか、転職エージェントからお声がかかった企業を中心に他力本願的な活動をしていたので、結果として余計に時間がかかった点は否めないと思う。リストラに遭って失業保険をもらいながら背水の陣で就活をしている人とは比べるのも申し訳ないくらいに、真剣味も熱量も不足していたことは間違いない。
そんなわけで、人さまの参考になるようなことを書ける自信はないが、自分自身の経験に基づく反省点を中心に書いておきたい。
年齢の壁は、自分で想像している以上に大きいこと。
いろいろな資格を持っていても、シニアの場合、実務経験がなければ世間では評価されないこと。
現役時代の収入を基準にして、転職後の処遇を期待しないこと。
転職活動では、こちらも相手企業を選考しているというスタンスを忘れず、決して卑屈にはならないこと。
年齢の壁は想像以上に大きい。エントリーしても、書類で落とされることが多々ある。転職エージェントに理由を訊いても、ゴニョゴニョと口を濁される。最初は意味がわからなかったのだが、日本企業はまだまだ年功的な人事制度が一般的なので、中途入社かつシニアのおっさん人材をどう取り扱えばいいのかに関してのノウハウなどない会社がほとんどなのだと思う。
こちらが、いくら「一兵卒として頑張る覚悟です」と言ったところで、課長よりも部長よりも、下手すると役員よりも年長者の部下を使いこなせる覚悟や度量が相手企業にあるのかどうかである。アットホームでぬるま湯的な体質の中小企業はそこで怖気づく。こういう場合、こちらの経歴が無駄に立派だと却ってマイナスに作用するかもしれない。僕などは単にメガバンク出身者というだけで自分では何の取り柄もない奴だと思っているが、世間ではそうは思ってくれなかったりする。
逆に言えば、書類選考を通過して、面接にまで進めれば、かなり有望ということになる。それでも面接にこぎ着けてからも、何回も落とされたし、こちらからお断りした会社もある。お見合いと同じで、就活も「ご縁」なのである。
セカンドキャリアになってから、いろいろな国家資格、たとえば行政書士、中小企業診断士、社労士、宅建士等の資格取得に取り組む人が少なくない。サラリーマン時代に真面目だった人ほど、そういう方向に走りがちである。だが、シニア人材の転職活動では、いくら難関の国家資格を保有していても実務経験の裏付けがないと、ほぼ評価されないというのは重要なポイントであり、余計な労力を費やす前に気づいておくべきである。
相手は実務経験豊富で「即戦力」となる人材を探している。いまさらシニア人材に育成コストをかけるつもりはない。だから法務部門に法曹資格者を雇うとか、経理財務部門に元監査法人の会計士を雇うというのはもちろんアリだが、資格を取っただけのペーパードライバーには用はない。せいぜい、「真面目で勉強好きな人なんだな」「そこそこ地頭が良いんだな」くらいに思ってもらえる程度である。
取得した資格で本気で食っていく覚悟があるのならば、休日のバイトでもいいから実務経験を積めばいい。たとえば宅建士の資格は取得したものの、実務として不動産業務に携わったことがないのであれば、ハローワークに行くなり、アプリに登録するなりして、どこかの不動産屋で下働きでも何でもやらせてもらうくらいのことは是非やってみればいい。そうすれば、宅建士の資格を活かした転職が可能かもしれないし、転職は無理でも、副業程度の稼ぎくらいならば十分に可能性はある。
現役時代に自分は〇〇万円もらっていたから、同じくらいはもらいたいとか言っている人は、大いなる勘違いをしていると考えるべきである。現役を引退してセカンドキャリア、サードキャリアに入った瞬間に、一旦、それまでの会社での評価はリセットされている。そこからは、自分の現在の市場価値だけで勝負するしかない。中古の家電製品と同じで、年齢を経ている分、経年劣化しているのも忘れてはならない。もちろん実務経験を積んだ分のプレミアがつく場合もあるが、概して過大評価は禁物である。
それにシニア人材の場合、年齢的に既に子育ても終わっているだろうし、住宅ローンも返済して、生活の固定費があまりかからなくなっているであろうから、現役時代ほど収入がなくても生活に困窮するわけではない。給料よりも「やりがい」とか自分自身の「納得感」を重視すべきであろう。
ちなみに僕の場合、銀行員時代のいちばん年収が多かった時に比べたら、今は約半分くらいの年収であるが、特に生活に困っているわけではない。むしろ子どもにおカネがかからない分、可処分所得は前よりも増えているような感じがする。
転職活動をしていて、書類選考でバンバン落とされ、面接までこぎ着けた後も落とされているとなると、だんだんと自分が無価値のように思えてくる。でも、決して卑屈になる必要はない。転職活動も婚活も「ご縁」である。選考する側、選考される側と立場はわかれても、気位は「フィフティ・フィフティ」であるべきである。「草鞋を脱ぐに足る」会社かどうか、こちらだって向こう側を評価するべきだし、雇ってくれるならば、もうどこだって構わないといった了見では、今まで自分が培ったキャリアがもったいないではないか。
あと何年働くにせよ、残り時間はさほど多くはない。どうせならば、毎日、気持良く働けそうな予感がする会社の方が絶対に良いに決まっている。中小企業の場合、最終面接に登場する社長とか経営トップと会話をしてみて、その人物と一緒に働く自分がイメージできなかったり、「これは、ちょっと違うかな」と思うようならば、その会社に勤めるのはやめておくべきである。
以上、コンパクトにまとめようと思っていたが、全然、コンパクトにはまとまらなかった。
でも、シニア人材の転職は難しい。やらなくても済むのであれば、やらない方が良い。
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