「週刊モーニング」について
僕が、「週刊モーニング」を定期購読するようになって久しい。
社長、会長、相談役を経て、今や社外取締役の島耕作が、まだ課長か部長の頃からであるから、ざっと30年ほどになるであろう。
それくらい長いこと定期購読してきた「週刊モーニング」であるが、最近、大いに不満を感じている。
何か、迷走しているとでも言うべきなのか、本来のあるべき姿を見失っているように思われるのだ。
「週刊モーニング」は、元々、小学館の「ビッグコミック」に対抗して、講談社が成人向けの漫画週刊誌として、82年9月に創刊された。最初は隔週誌であったが、86年4月から現在のように週刊誌として毎週木曜日に発売されるようになった。
「ビッグコミック」との違いを明らかにすべく、「週刊モーニング」が特色として力を入れていたのが、さまざまな職業・業界を赤裸々に描いた「職業漫画」「お仕事もの」の漫画作品の連載である。
「島耕作」シリーズもその中に含まれる。他にも、現在、連載中(不定期なものも含める)の作品としては、
「GIANT KILLING」(主人公 / 業界:プロサッカー監督)
「クッキングパパ」(同:料理好きのサラリーマン)
「バトルスタディーズ」(同:高校球児)
「リエゾン -こどものこころ診療所-」(同:児童精神科医)
「票読みのヴィクトリア」(同:選挙コンサルタント)
「よき法律家は悪しき隣人」(同:弁護士)
「アパレルドッグ」(同:アパレル会社)
「宇宙兄弟」(同:宇宙飛行士)
「グラゼニ 〜大リーグ編〜」(同:プロ野球選手)
「箱庭モンスター 〜少女漫画家、ときどき紙袋〜」(同:少女漫画雑誌)
「ひらばのひと」(同:講談師)、といった作品がそうしたジャンルに該当する。
過去に連載されていた作品も、ドラマやアニメになったようなヒット作品だけでも、
「働きマン」(同:雑誌編集者)
「天才柳沢教授の生活」(同:大学教授)
「アンメット-ある脳外科医の日記-」(同:脳外科医)
「イチケイのカラス」(同:裁判官)
「カバチタレ!」(同:行政書士)
「ナニワ金融道」(同:消費者金融)
「神の雫」(同:ソムリエ)
「コウノドリ」(同:産婦人科医)
「この女に賭けろ」(同:銀行員)
「沈黙の艦隊」(同:自衛官)
「Ns'あおい」(同:看護師)
「ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜」(同:女性警察官)
「ブラックジャックによろしく」(同:研修医)
といった具合である。おそらく、他にももっとたくさんありそうである。
先ほど、「迷走している」と書いたのは、最近、こうした「職業漫画」「お仕事もの」から逸脱したジャンルの漫画が増えているのだ。具体的に言えば、「異世界もの」「ファンタジー」といった、成人誌には馴染まない(と断定すると、いろいろな意見をお持ちの方から反論が出そうなので、僕にはまるで興味がないと言い換えるべきか)と思われるようなジャンルの作品群が、散見されるようになったきたのだ。
現在の連載作品で、こうしたジャンルに当てはまるものとしては、以下のような作品がある。
「マタギガンナー」(RPG世界の中での対戦もの)
「8月31日のロングサマー」(タイムループもの)
「二階堂地獄ゴルフ」(プロゴルファーの卵の話なのだが、いつの間にか、タイムループの話になってしまっている)
「サラリーマンZ」(未知のウイルスによるパンデミック、ゾンビもの)
「異世界町工場無双 〜信頼と実績の異世界征服〜」(異世界もの)
「織田ちゃんと明智くん」(輪廻転生もの)
「龍と霊 -DRAGON&APE-」(恐竜の末裔が登場)
「絶滅世界で食パンを」(終末世界もの)
「望郷太郎」(終末世界もの)
「落合博満のオレ流転生」(異世界もの)
こういったテイストの作品が、連載作品の中で、1冊の雑誌の中で、1つか2つくらいであれば、まだ許せるのだが、ここまで増えてくると、はっきり言うが、かなり鼻につく。少なくとも、少年誌ではない成人誌としては、違和感しか感じられないのだ。それに似たような設定の漫画が並ぶと、キャラ被りするし、どれも変わり映えしないように思えてしまうのだ。
雑誌というものは、「幕の内弁当」みたいなものである。いろいろな味わいの作品群のバランス、あるいは取り合わせ具合にこそ、雑誌編集者の腕の見せ所がある。いわば、ポートフォリオの組み合わせの妙こそが、雑誌の価値を決める。
にもかかわらず、少年誌ならばともかくとして、成人誌にもかかわらず、リアリティの感じられないファンタジーものばかりが並ぶようでは、1つ1つの作品には罪がないとしても、編集者のセンスを疑いたくなるのだ。
現在の「週刊モーニング」の編集長がどのような方針でもって、こういう雑誌を作っているのかは知らない。でも、今の世の中のおっさんというか、サラリーマン世代の人たちが、こうしたファンタジーとか異世界ものばかりが散見されるような漫画週刊誌に夢中になると考えているであろうか。まあ、そのように考えているからこそ、こんな具合になってしまっているのだろう。
今の若いサラリーマンは、子どもの頃からゲームをやって育ってきた世代だから、もしかしたら、実世界とは異なるバーチャルな世界の物語に違和感なく没入できるのかもしれない。
そうなると、僕のようなシニア世代は、もはや「週刊モーニング」がメインとして想定している読者層からズレてしまっているのかもしれない。
高齢化社会を迎える今の時代において、僕らのようなシニア世代、老人世代向けの漫画週刊誌を是非とも企画してもらいたいものである。そうなれば、「週刊モーニング」から脱落して、そちらの方に鞍替えすることができよう。そして、その際には、「社外取締役」もリタイヤして、ただのご隠居さんになった島耕作とか、定年退職した荒岩一味(「クッキングパパ」の主人公)も一緒にそちらに引っ越しをしてもらえれば心強いというものである。